2016年01月11日

アトラクションは映画か?(SW7批評)

ネタバレにつき。




僕は、ラストシーンで、
振り向いたルークがこういうのだと予測して身構えていた。
「よくここまで来た、レイ。
いや、レイ・スカイウォーカー。
私がお前の父だ」

そうでもない限り、
ただのジャンク屋があそこまで腕っぷしが強く、
ブラスターが当たり、
ルークのライトセイバーを使える理由が分からない。
幼少の頃はアナキンそっくりだし、
おそらくあの切り返しにはルークがいたはずだ。

そして彼女はその血筋を知っていた。
だから多くを語らなかった。
故郷の星に迎えに来ると信じた人こそ、
父ルークのはずである。

そうであれば、
あの詰まらないご都合主義の脚本にも耐えられたというものだ。

ラスト、ルークがフードを脱ぐ様は、
アレックスギネス演じる、オビワンケノービそのものだった。
(おそらく意識しただろう)
だからこそ、そのフォースの物語が続くことを高らかに宣言する、
スカイウォーカー一族の主人公、 という出落ちだと、
僕は身構えていた。
だから姓のない、レイという名なのだろうと。


ところが、何もなく「つづく」。

はあ?なにこれ?



映画はアトラクションではない。
人間ドラマである。

スターウォーズ789が存在する、と言われたとき、
それはルークの子供「たち」の物語になる、
と言われた筈だ。
だからハンソロの子供=カイロレンと、
ルークの子供の、
暗黒面と光の面との二項対立が、
今回のモチーフ(テーマではない)だと、
予想していた。

フォースの暗黒面とはなにか、
について、123を見ても結局さっぱり分からない。
残虐さなのか自分勝手なのか、
性格が悪くなることなのか。
力を制御しきれないことでもないようだ。

暗黒面に落ちることが、黒いフードを着る以外の何か分からないから、
いつまでたってもスターウォーズのテーマが分からない。

暗黒面=悪と言いたいのだろうけど、
いつまでたっても悪いことしないんだよねあいつら。
キックアスの敵のほうがよっぽど悪だぜ?

悪と正義の話にしては、
カイロレンが悪に落ちた様が描かれていない。
不良息子が父親に突っ張る話でもなかった。

人間ドラマがない映画は映画か?



ディズニーは、
毎度毎度異世界SFを大金をかけて作り、派手にこけてきた。
ジョンカーター、トゥモローランド、トロンレガシー。
その怨念がようやく果たされたのか?
どの異世界にもあるビジュアルの中の、
ポリゴンモデルが、ミレニアムファルコンやXウィングやタイファイターに、
置換されただけのものでしかなかった。
映像的には興奮するよ。
しかしそれで終わりだ。

僕はSWリアルタイム世代だし、
Ep1のときはチャイニーズシアターまで行ったよ。
だから、
ミレニアムファルコンが出てきたときは涙が出たし、
あの銃座だけで号泣だ。
ハンソロにもチューバッカにも会えたし、
レイアオルガナにも会えた。
ルークがフードを取った瞬間の号泣は、
俺ホントにスターウォーズを愛してるんだなあ、
と寒くなったぐらいだ。

だけどそれだけだ。

オリジナルモデルを使ったアトラクションでしかなかった。

デジタルの幽霊だよあれは。


ディズニーは、実写大作SFがなぜこけたのか、
反省会をしていないのではないだろうか?
金をかけた凄いアトラクション映像をつくるだけでは、
客は喜ばないことを、何故学習しないのか?

今回のポリゴンモデルをスターウォーズという既存のものにしたお陰で、
こけなかったと考えているのだとしたら、
その浅さに、空恐ろしくなる。

何か凄い映像体験(それはストーリーではなく戦闘シーンのこと)をさせて、
そこに出てきたキャラクターグッズを売り、
市場を作ること。
ついでにランドにライドを作ること。
つまり、キャラクタービジネス。

そのキャラクター違いで、
パイレーツオブカリビアンが、
スターウォーズになっただけだぜこれ。

つまり、スターウォーズは、
ディズニーというキャラクター屋に買われたのさ。



橋本治が昔スターウォーズ(オリジナル1、現Ep4)
についての文章で、彼が最も好きなカットは、
ルークが大学進学をダメだと言われ、
二つの太陽が沈む所で落ち込むカットだと書いていた。

それは、ルークが唯一人間だったところだ。
年頃の高校生が、現実の壁にぶち当たり悶々としている、
青春映画並の鬱屈。

つまり内的問題である。
この内的問題(何者かになりたいこと)こそ、スターウォーズ1がアトラクションではない、
映画たるゆえんだ。

そんなもの、エピソード123にはひとつもなく、多分56にもない。
そして、7にはなかったし、89もないだろう。

ストームトルーパーが裏切るとか、
ビームがフォースで止まるとか、
太陽からエネルギーを貰うとか、
なかなか面白い趣向はあったよ。
あったけど、それは全部アトラクションだ。

中身のない、ただのガワだ。



アトラクションは映画か?

断固否定する。
俺はこれを映画とは認めない。

俺が命を賭けて追求している、ストーリーは、
こういうことではない。

全否定。しね。
posted by おおおかとしひこ at 00:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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