嘆いてもしょうがない。
ここは脚本を論じる場だ。
何故SW7のストーリーは詰まらないのか?
を分析しておこう。
係り結びがないからだ。
とりあえず2ちゃんやヤフーレビューはざっと見た。
カイロレン弱すぎ
レイの覚醒意味不(イヤボーンの法則)
の二つが、最大の不満であり、
脚本的問題だと思う。
ハンソロが死ぬのは必要だ。
カイロレンの悪を正当化するにはね。
フィンとポーのバディムービーを冒頭から期待したのだが、
今回はこの二人がC3-POとR2-D2の役割
(つまり伝説の人々を語る一般人の目線)
になるのだと考えると、まあ順当な配置かも知れない。
さて、係り結びの話をしよう。
古文をやった人なら分かってるよね。
係りがあれば、結びがある、ということ。
つまり、伏線を張るなら回収がある、ということ。
前ふりがあれば落ちがある、ということ。
気になる何かは、必ずあとで明かされるということ。
逆に、
唐突な展開は、前ふりか後付けが必要なこと。
前ふりや後付けなき唐突は、「唐突(つまり、おかしい)」なこと。
結びだけ存在するのは、おかしい。
係りだけ存在するのも、おかしい。
何故か?
映画とは何かをきちんと考えればわかる。
良くできた物語を、何故人は好むのか?
現実世界が訳が分からないことが多く、理不尽だからである。
だから、首尾一貫して、すべてが「理解できる」ことを求めるのだ。
それが物語である。
現実で、「普段はあんなに大人しそうな子が、
どうしてあんな残虐な殺人をしたのか分からない」はよくあることだが、
そこに、
「実は幼少の頃から親に虐待されていて、
その恨みが爆発したのである」という「理由付け」をすれば、
途端に理解できる「物語」になる。
つまり、「あの子が他の人に向ける笑顔は、
親に虐待されたときにもうやめてと言うための笑顔だったのだ」
とかいう「解釈」が出来るようになるのである。
つまりストーリーの正体とは、
「現実に起きたことの、因果関係の理解」だ。
それは、係り結びによって理解される。
「他人に向けた笑顔」が係り、
「それは親に虐待されないための仮面」が結びである。
「あれ」は「ああいうことだったのか」だ。
物語とは、このように俯瞰される。
ただ、すぐばれちゃ面白くないので、
ばれにくい係りを用意して、
あとで結ぶと意外性があって面白い。
それがみんなの大好きな「伏線」だ。
(厳密には伏線は回収とペアだけど、伏線ばかり言われるよね)
あるいは、係りという前ふりがあり、
こうなるだろうなという結びを想像させて、
実はこういうことでした、という結びを用意するのが、
「どんでん返し」だ。
(厳密にはミスリードとペアだけど、どんでん返しばかり言われるよね)
伏線やどんでん返しは、係り結びの中で特に目立つテクニックだが、
係り結びはもう少し緩く広い、
因果関係の糸のようなものだと定義しておこう。
さて、二大問題。
カイロレン弱すぎ、レイ強すぎ。
カイロレンは、覆面をつけていたときは超強い。
だってブラスターの光線止めたんだぜ?カッケーじゃん。
部下の失敗に十字剣で配電盤ズタズタにするんだぜ?
次はお前がこうなる番だろ?残忍で新しい敵。
最高の登場だったじゃん。
いい係りだよ。
これが、途中で忘れたかのようになる。
レイを捕らえて拷問しようとしたが、
逃げられたあとのリアクション、
係りが無視されたかのような小物臭。
マスクを取ったら急に小物になったのは何故?
マスクをつけてるときは、中の人が違う(スーツアクター)ってこと?
レイの拷問台を十字剣でズタズタにして、
ストームトルーパーをギッタギタにしないと、
おかしくね?(係りにたいして結びがない)
雪の林の中のラストバトルも同様だ。
これまでの経緯から、
ハンソロの息子であり、ルークに鍛えられたが、
反旗を翻して暗黒面に堕ちたという、
最重要人物の一人であることが分かった。
ということは、
その剣術やフォースは、制御できないアナキン並だ、
と我々は期待する。
それが、あの弱さはどういうことやねん。
チューイに撃たれていた
(胸をドンドンやるのはパッション屋良とネットで言われてて爆笑)
のはあったとしても、
何故ブラスターを止めるフォースをもう一回使わない(結び)のか?
ブラスターをフィンが撃ち、
フォースで止めた所を背後からレイが斬る、
なんて連携でも良かったのではないか?
(その為にフォースでブラスターを止める場面をレイがどこかで目撃させておく)
そうすれば、新しい闘い方も見せることが出来たのに。
カイロレンは、覆面をしているときの係りが、
覆面をはずしたあとにひとつも結ばれていない。
覆面をはずしたあとの係りは、
今作では結ばれていない。
それは今後89で描かれるだろうから、
まあみんな我慢する。
だが、黒騎士として出てきたときの係りが、
ひとつも結ばれていないから、
「カイロレンって何?」
ということを、我々は「理解した」気にならないのである。
さて、レイ。
わけわからん。
なんでフォースに目覚めるの?
まあ脳内を弄られたから、というのはいいとしよう。
何故ルークの剣を見たらあんなビジョン?
ルークの剣が呼んだ声は何?
なんでブラスターの才能もあるの?
なんでルークの剣を使えたの?
なんでR2は起動したの?
なんでレイだけで姓がないの?
(フィンも姓がないのは、レイが姓がないことを疑問に思わせないための煙幕だよね?)
それは、「ルークの娘だから」以外に納得のいく理由はないよね?
だから僕は前記事に書いたラストで締めるのだろう、
とずっと我慢していたのだ。
これだけの係りを、「スカイウォーカー」一発で結べるからである。
つまり。
カイロレンも、レイも、
係りだらけで、結びがひとつもなかったのである。
これは、ストーリーではない。
だから僕は全否定する。
勿論、これは三部作であり、
7で伏線を張って89で回収なのだ、
という言い訳は出来る。
だからと言って、
この7が一本のストーリーになっていない、
ということを擁護することは出来ない。
伏線しかない作品を、映画とは言わない。
それはエピソード1でも感じたことだが、
それは我々が「この子がダースベイダーになる」という結びを知っているから、
係りを楽しむ、という、ちょっと変わった楽しみ方だったのだ。
(出落ち落ち。この言葉で過去記事検索のこと)
それってさ、
「俺すげえ話思いついたんだよ」
「どんなの?」
「係り。係り。係り」
「で、それがどうなる(結びを期待)の?」
「終わり」
「え?」
っていう、中二の創作ノートレベルじゃね?
なんでそんなもんに金払わなきゃいけないんだ?
さて、2ちゃんで興味深かった感想を引用。
>これってやっぱ一本の映画というよりは
30分モノの連作活劇、4〜5話のミニシリーズを一挙放映されてる感覚に近いんだよ。
そのぐらい(20〜30分間隔ぐらい)でクライマックスが来て片付いて次の話が始まる。
(数え方にもよるが1話がフィンとポーの脱出まで、2話がレイとフィンのミレニアムファルコンチェイス、
3話がソロとチューイと借金取りどものバトル、4話がマズカナタの城編、そして5話がスターキラー。)
だからなんだかんだで「チケット代のモトが取れる」ド派手なクライマックスシーンが複数回出てくるし、
劇中での時間の流れ方もおそらく「けっこう日数経ってる」かんじになってる。
なかなかいい直感だ。
ブロックごとに作っている、という作り方はまさにそうだろう。
しかし、普通脚本というものは、
前のブロックの係りが、どこかのブロックで結ばれるものである。
そうやって各ブロックを結びつけ、
因果関係を作り出していく。
なるほどあのブロックのあれが、
ここに関係していたのか、という風に。
ところがこのストーリー(ストーリーになっていないが)は、
ブロックとブロックを結ぶ係り結びが、
ひとつもないのだ。
だからブロック終わったら次のブロック、
という、ぶつぎれ感が残るのである。
じゃあさ、各ブロックでテレビでやればいいじゃんね。
いやいやいや、ドラマ風魔ですら、
各話は独立せず、あのときの伏線があとで生きてくる、
なんて結構あったよな?
そこが良かったんだよな?
我々は、カオスで理不尽な現実に、
もっともらしい、理解できる首尾一貫した説明を欲する生き物だ。
神話は、何故あの山が欠けているのかとか、
何故汐の満ち引きがあるのかとか、
人は死んだらどこへいくのかとかの、
大自然や神を説明するために生まれた。
それらを科学が長い時間かかって(一部)解き明かした。
(科学は、検証可能な物語で、自然を理解する手段である)
ニュースでは、殺人事件があれば「どうやって」殺したか(結び)と、
「何故」殺したか(係り)を解明していく。
誰と誰が何故付き合って、何故別れたかを、噂話をする。
因果関係をつけて納得する、という我々の習性が、
物語という娯楽を作ったと、僕は考えている。
架空の因果関係を楽しむ、という娯楽を。
それを時間軸上でうまく仕込むテクニックが、
係りと結びである。
いや、テクニックどころか、根本かも知れないね。
つまり、ディズニーの誰もが、
あるいはJJ以下のスタッフの誰もが、
このことを知らないのではないかな?
ディズニーはアトラクションは作れるけど、
それ以上の「物語」の作り方を知らない。
だとすると戦犯は、監督になってくるよね。
もともとJJエイブラムスという監督は、
絵づくりは面白いけど、ストーリーが面白かった試しがない。
スーパー8を見ればわかるだろ。
Mi:3もなんも覚えてない。
(僕はトレッキーではないので、リブートシリーズは見ていない)
監督論になりそうなので、
係りと結びについての話はとりあえずここでおしまい。
2016年01月11日
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