2016年01月12日

キン肉マン二世、Zガンダムは何故失敗したか?(SW7批評4)

ハンソロ、レイア、チューイ、ルークの再登場で思ったのは、
Zガンダムでアムロが出てきたような感覚だった。

僕は、キン肉マン二世も、Zガンダムも失敗したと考えている。
続編に出る旧キャラの扱い。


物語とは、感情移入である。
そして映画とは、主人公に感情移入するものを言う。

主人公への感情移入のメカニズムは過去記事に詳しいが、
殆どの場合、その人の事情に注目させ、
克服すべき逆境(外的な問題、内的な問題)を示し、
その積極的行動を追うことで、
次第に「この人は私ではないが、この人の気持ちはわかる」という態度を観客の中につくり、
「この人はまるで私の分身だ」というところまで、
その人の内部に一体化してもらうことだ。


Zガンダムの失敗の原因のひとつは、
カミーユビダンに感情移入する以前に、
もっと感情移入していた過去の主人公、アムロを登場させてしまったことだ。
カミーユの物語が立ち上がってからなら、
アムロが出たとしても、カミーユのほうが感情移入が強かっただろう。
ところが、カミーユに感情移入する前にアムロを出されたら、
我々は、カミーユより、感情移入の絆が強い、
アムロに引っ張られてしまうに決まっている。

物語というものは、
物語全体で感情移入を獲得する。
つまり、我々のアムロへの感情移入は、
たかだか数話で形成されたものではなく、
ファーストガンダム全体で形成されたものだ。

だから数話程度の感情移入では、
一年ぶん(プラス映画三作プラス再放送)の感情移入に、
勝てるわけがないのである。


前作の人気キャラを使って、
評価も未確定な新作をブーストしよう、
という製作サイドの見積りも、分からないではない。
しかしこれは、
物語における感情移入を無視している。

旧キャラの登場は、主人公への感情移入がある程度進んだ所で良かったのではないか?
カミーユへの感情移入は、しかし序盤全くうまく行かなかった。
これは完全に敗北だ。
カミーユへの感情移入がうまく行き始めるのは、
フォウ登場後だ。
彼のオリジナルの物語がつむぎはじめてからだ。
つまり、アムロ登場は、
フォウの死後であるべきだった。


キン肉マン二世は、結局万太郎への感情移入も、
息子世代キャラへの感情移入も、
全然うまく行かなかった。
だから時間超人で、過去の主人公たちと会わせざるを得なかったのだ。


うまく行かない(感情移入がうまく行かない)続編は、
底上げのために、旧キャラを投入される。
大失敗するなら、小成功を取れという考え方だ。

キン肉マン二世は、旧キャラ投入のタイミングは遅かった。
Zガンダムは、旧キャラ投入のタイミングは早すぎた。



さてSW7。
ルーク投入のタイミングは、
ぎりぎりまで粘った感じだ。
下手するとヨーダ登場タイミング、8なのかなと思わせておいての、
ラストとはファンサービスもいいところだろう。

問題は、今回の主人公、レイにもカイロレンにも、
我々はこれっぽっちも感情移入していないことだ。

フィンにはちょっと感情移入したが、
彼が裏切るきっかけとなった、
殺された仲間とのなんらかのエピソードがあれば、
(たとえば二人ともあの村の出身で、
二人とも脱走計画を立てていた、とかね)
きちんと感情移入出来ただろう。
まあその場合、比較で、主人公並の感情移入になるけどね。


主人公はレイだとしよう。
彼女の内的問題も、外的問題も、実は示されていない。
BB8に巻き込まれただけで、
いつでもBB8を託して去れた筈だ。
何故なら、BB8を助けることに、彼女の内的問題との関連がないからだ。
たとえば、最初のほうに、
「彼女は捨てられた」という内的問題があれば、
「私は捨てることはしない」とキャラが立ち、
BB8もフィンも見捨てない、行動する主人公になれた筈だ。

このような感情移入が作られていなかった為、
SW7は単なるアトラクションなのである。

だから我々はビジュアル以外、
レイという人間を一向に好きになれないまま、
アトラクションだけが進んでいく。
つまり、感情移入がないまま、置いてきぼりにされる。


さて、感情移入と好きは、区別のしにくい感情だ。
(これについても過去に書いた)
レイが好きになれないので、
既に好きなハンソロやチューイ、レイアが出てくる方が、
我々の「好きっ!」という感情は満たされる。

で、出してしまうと、ハンソロよりレイやカイロレンを、
好きになれなくなる。

こうして、旧キャラ祭りになってしまう。

我々が何故旧キャラが好きか、
誰も分析していない。
我々は旧三部作を経た感情移入の結果、彼らを好きなのだ。
その蓄積なしに、ハンソロが好きな訳がない。



ということで、Zガンダムの旧キャラの使い方の失敗より、
SW7の旧キャラの使い方は酷い。

感情移入と好きを混同し、
内的問題や外的問題といった、
脚本の基礎について無知な人々がストーリーを作ったのだろう。
(否、ストーリーになってないけど)
posted by おおおかとしひこ at 13:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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