ハンソロ、レイア、チューイ、ルークの再登場で思ったのは、
Zガンダムでアムロが出てきたような感覚だった。
僕は、キン肉マン二世も、Zガンダムも失敗したと考えている。
続編に出る旧キャラの扱い。
物語とは、感情移入である。
そして映画とは、主人公に感情移入するものを言う。
主人公への感情移入のメカニズムは過去記事に詳しいが、
殆どの場合、その人の事情に注目させ、
克服すべき逆境(外的な問題、内的な問題)を示し、
その積極的行動を追うことで、
次第に「この人は私ではないが、この人の気持ちはわかる」という態度を観客の中につくり、
「この人はまるで私の分身だ」というところまで、
その人の内部に一体化してもらうことだ。
Zガンダムの失敗の原因のひとつは、
カミーユビダンに感情移入する以前に、
もっと感情移入していた過去の主人公、アムロを登場させてしまったことだ。
カミーユの物語が立ち上がってからなら、
アムロが出たとしても、カミーユのほうが感情移入が強かっただろう。
ところが、カミーユに感情移入する前にアムロを出されたら、
我々は、カミーユより、感情移入の絆が強い、
アムロに引っ張られてしまうに決まっている。
物語というものは、
物語全体で感情移入を獲得する。
つまり、我々のアムロへの感情移入は、
たかだか数話で形成されたものではなく、
ファーストガンダム全体で形成されたものだ。
だから数話程度の感情移入では、
一年ぶん(プラス映画三作プラス再放送)の感情移入に、
勝てるわけがないのである。
前作の人気キャラを使って、
評価も未確定な新作をブーストしよう、
という製作サイドの見積りも、分からないではない。
しかしこれは、
物語における感情移入を無視している。
旧キャラの登場は、主人公への感情移入がある程度進んだ所で良かったのではないか?
カミーユへの感情移入は、しかし序盤全くうまく行かなかった。
これは完全に敗北だ。
カミーユへの感情移入がうまく行き始めるのは、
フォウ登場後だ。
彼のオリジナルの物語がつむぎはじめてからだ。
つまり、アムロ登場は、
フォウの死後であるべきだった。
キン肉マン二世は、結局万太郎への感情移入も、
息子世代キャラへの感情移入も、
全然うまく行かなかった。
だから時間超人で、過去の主人公たちと会わせざるを得なかったのだ。
うまく行かない(感情移入がうまく行かない)続編は、
底上げのために、旧キャラを投入される。
大失敗するなら、小成功を取れという考え方だ。
キン肉マン二世は、旧キャラ投入のタイミングは遅かった。
Zガンダムは、旧キャラ投入のタイミングは早すぎた。
さてSW7。
ルーク投入のタイミングは、
ぎりぎりまで粘った感じだ。
下手するとヨーダ登場タイミング、8なのかなと思わせておいての、
ラストとはファンサービスもいいところだろう。
問題は、今回の主人公、レイにもカイロレンにも、
我々はこれっぽっちも感情移入していないことだ。
フィンにはちょっと感情移入したが、
彼が裏切るきっかけとなった、
殺された仲間とのなんらかのエピソードがあれば、
(たとえば二人ともあの村の出身で、
二人とも脱走計画を立てていた、とかね)
きちんと感情移入出来ただろう。
まあその場合、比較で、主人公並の感情移入になるけどね。
主人公はレイだとしよう。
彼女の内的問題も、外的問題も、実は示されていない。
BB8に巻き込まれただけで、
いつでもBB8を託して去れた筈だ。
何故なら、BB8を助けることに、彼女の内的問題との関連がないからだ。
たとえば、最初のほうに、
「彼女は捨てられた」という内的問題があれば、
「私は捨てることはしない」とキャラが立ち、
BB8もフィンも見捨てない、行動する主人公になれた筈だ。
このような感情移入が作られていなかった為、
SW7は単なるアトラクションなのである。
だから我々はビジュアル以外、
レイという人間を一向に好きになれないまま、
アトラクションだけが進んでいく。
つまり、感情移入がないまま、置いてきぼりにされる。
さて、感情移入と好きは、区別のしにくい感情だ。
(これについても過去に書いた)
レイが好きになれないので、
既に好きなハンソロやチューイ、レイアが出てくる方が、
我々の「好きっ!」という感情は満たされる。
で、出してしまうと、ハンソロよりレイやカイロレンを、
好きになれなくなる。
こうして、旧キャラ祭りになってしまう。
我々が何故旧キャラが好きか、
誰も分析していない。
我々は旧三部作を経た感情移入の結果、彼らを好きなのだ。
その蓄積なしに、ハンソロが好きな訳がない。
ということで、Zガンダムの旧キャラの使い方の失敗より、
SW7の旧キャラの使い方は酷い。
感情移入と好きを混同し、
内的問題や外的問題といった、
脚本の基礎について無知な人々がストーリーを作ったのだろう。
(否、ストーリーになってないけど)
2016年01月12日
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