2016年01月20日

人は、予測が合ってるか確かめたくて、続きを見る

予測が出来ない展開!
というのはよく言われる。
だからついつい、次どうなるんだ!
という「つづく」を用意しようと、
僕らは頭を捻るのである。

しかし、それだけではない、ということも知ろう。
何故人は続きを、興味をもって見るのか?


実は、我々は無意識に、
この先どうなるか(興味があれば)、
予測しているものである。
展開や結末や、今は伏せられている真実の理由や、
謎についてだ。

それが、自分の予測通りか、確かめたいのである。

たとえば、
恋人のすれ違いものやラブストーリーは、
最後に結ばれることは、理性では分かっている筈だ。
わかっているのに、我々はその行く末にハラハラするのだ。
何故か?
色々あったとしても、
やっぱりヒロインとヒーローは結ばれて欲しいからだ。
ハラハラするすれ違いだけれど、
この恋は成就する、と無意識に予測していて、
その予想を確かめたいからである。

「な? 二人は結ばれただろ? 最初からそうなると思ってたのさ」とか、
「な? 主人公は生きてただろ?」とか、
本当は誰かに言いたい。
「そうなると思ってたんだ!」
と、予測が当たることは、ある種の快感なのである。

それは、現実では予想が滅多に当たらないことの、
裏返しかも知れない。
現実は理不尽でノイズが多く、
法則が発動しても上手く行かないこともある。

だから、フィクションでは、
法則がある秩序ある世界で、
正しいことは正しいと評価されて欲しいし、
法則に従えば愛が成就するさまを見たいのである。

物語は、現実をある程度整理したものだ。
どう整理しているかというと、
因果関係がしっかりしている、モデル世界、という風にだ。

その近似の仕方が嘘臭いと、
現実のモデリングが甘い、作り物くせえ、と、信頼されなくなる。
そのモデリングは、
現実に瓜二つに近づけていくリアリズムと、
突飛な世界なのだがそれ以外はわりとリアルな世界の、
二種類がある。
(ドラマ風魔は後者だ。小次郎は、漫画だが現実っぽくも造形されている。
漫画だけど、この世界にほんとに生きてるとしたら、
ほんとに生きてるみたい、と思わせることに成功している。
これが、フィクションである)


で、その世界の法則を、確認したくて、
人は続きを見たがるのである。

切ない恋は成就する、ということを予測したり(半分願望)、
正義は報われなくても勝利する、とか、
死にそうになっても生き残る、とか。

あるいはもっと細かい精度で、落ちを予測したりする。
この話はこういう落ちなのではないか、みたいな。
その通りになれば、
「な? 俺はこうなると思ってたんだ」と言いたい。
「だって、世界はこうできているのだから」
という言葉がその裏にいるのだが、
なかなかそこまで人は言語化出来ないが。



あなたの物語が、
落ちが読めることは、
ひょっとすると利点かも知れないし、欠点かも知れない。

落ちが読めるくせに、そこに至るまでが平坦だから、
詰まらないだけかも知れない。
その場合、落ちが読めることは、欠点になる。

ところが、
落ちが読めているのに、
そこに至るルートが読めず、
予想もつかない展開になり、
これ○○って落ちになるよな?
と心配するぐらいのものが、
落ちはこうなって欲しい、と、
観客の心を引き付け続けるのである。

またドラマ風魔を例に出すけど、
風魔サイドの勝利は確定でしょ。
原作の大まかな展開も準じてるから、
対戦相手も予測出来るでしょ。

にも関わらず我々が引き付けられるのは、
小次郎がリアル(「本当に、人が死んでいくんだ」)で、
なおかつ、壬生と陽炎という分裂劇が、
先を読まなくさせるからである。


逆に海街ダイアリーが詰まらないのは、
どうせ四姉妹が一緒に仲良く暮らしました、
か、分裂しました、しか落ちがないくせに、
全く予想を確かめたくならず、
その予想を裏切るルートもないからだ。


これどう落ちをつけるんだろう?
と思いながら、
我々は、こう落とすんだろ?という予測を、
同時に確かめたい。

面白い物語は、この両方を満足させる。


予測のつかないバッドエンド?
そんなもんただの中二病で、
物語がどういうものかを、
なにも知らない奴が書く無知さ。

我々は、物語というルールの中で、
新しい発明をするのである。
posted by おおおかとしひこ at 14:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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