2016年01月21日

モチーフとテーマの違い

いまだに検索ワードでよくこれがあるので。
過去でも沢山論じているので、
過去記事は検索してください。

ここで書いているモチーフとテーマの違いは、
あくまで僕の、
シナリオ執筆において書き手が意識して分けておくこと、
という意味でだ。


という前置きで、違いを書いてみよう。


モチーフは名詞で示せる。
テーマは動詞で示されたこと。

モチーフは変化しない数カット。
テーマは複数のカットで示す変化。

モチーフは動いても動作レベルで可逆。
テーマは不可逆な変化で、終わったあとに分かること。

モチーフは一語、または修飾した名詞。
テーマはテーゼ。最も短いのは「AはBである」。

モチーフは視覚。(聴覚のこともある)
テーマは体感したのちに知る、まとまった知覚。


「タイムスリップ現象をするカップル」をモチーフに、
「愛は一時ではなく、永遠に続く」というテーマを描いたのが、
「きみが僕を見つけた日」である。



テーマをモチーフだと誤解すると、
「テーマは差別」「彼女のフレッシュさをテーマに」
「メカがテーマ」などと、
何も変化しない話を書きはじめて、挫折する。
差別がなくなる、とか、フレッシュさが失われる、とか、
メカが壊れる、とかの不可逆な変化をつくり、
その変化が、一体どんなテーゼを示しているのか、
というテーマが見つけられれば、
ストーリーになる。
(大抵は、そんなテーマが書きたいんじゃなくて、
その絵が好きなだけだったりする。
それはカメラマンやデザイナーや絵描きの才能であり、
ライターの才能ではない。
ライターは、ブツよりも、人生に興味がないと出来ない)


逆に、テーマだけでモチーフがないと、
イコンのない、地味な話になる。
転校生をいじめたがいなくなって後悔した、
という話で、
人間は醜いというテーマを描こうとしたとしても、
見た目が地味だから印象に残らない。
そこでその転校生を、
風の又三郎みたいな妖精にしたり、
カッパにしてみたり、
幽霊が見える子にしたり(てんぐ探偵第八集「見える友達」に収録した、
結城礼一、あだ名がユーレイの話)して、
絵面で何かをモチーフにしておくと、
その絵で話を記憶する。
それをイコンという。

ただの動詞や連鎖は、記憶に残りにくい。
記憶に残るのは、静止画である。(これは僕の仮説)


モチーフとテーマは、混同しやすい。
そして双方を分離して、また融合しないと作品にならない。

モチーフは視覚的なにか、
テーマは意味的ななにかだ。

ソシュール的に言うと、
モチーフはシニフィアン(指し示す記号そのもの)で、
テーマはシニフィエ(シニフィアンによって意味された内容)だ。
posted by おおおかとしひこ at 09:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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