リライトがどうしても継ぎ接ぎっぽくなったり、
唐突感が拭えなかったり、
無理があったり矛盾したりするのは、
あとあとの都合で、
その前を変えてしまうことが殆どの原因のような気がする。
それをシミュレーションしてみよう。
文章には、表と裏がある。
表は、文字面上の意味で、
裏は、隠された真意だが言外の意味として明らかなもの。
嫌なおっさんが、女に酒を勧める。
おっさん「飲み物は?」
女「(微笑んで)ありがとう。でも結構よ」
言外の意味で、「おっさん死ね、帰りたい」
というのがあったとする。
これを、後々の都合で、
飲み物を受けとることに変えるとしよう。
(例えば飲み物に睡眠薬が入っていて、
後々の段取り上、ここで飲まなくてはならないとしよう)
おっさん「飲み物は?」
女「(受け取り)頂くわ」
この時、もとの言外にあった嫌悪感が、
うっかり失われてしまうのである。
だから、
おっさん「飲み物は?」
女「(受け取るが飲まない)ありがとう」
おっさん「乾杯」
女「(目をあわせず乾杯し、一口だけ飲む)」
みたいに、
言外の意味を保存しつつ、
なおかつ段取り上のことを、クリアしなければならないのである。
これは簡単な例だが、
長いリライトでは、
簡単に言外の意味が消失してしまう。
最初の原稿が、
韻を踏んだり、
前の台詞の言外の意味を言外の意味で返していたりすると、
物理的に表を変えてしまうと、
裏の文脈が破壊されてしまうのだ。
文字だけ見てリライトすると、
こういうことが起こりがちだ。
特にバカなプロデューサーほど、
言外の意味を無視したリライトを要求してくる。
表面上の文字しか追ってないからだろう。
で、表の文字面だけでリライトしてしまい、
段取りは合ってるけど、
なんだか浅い話になってしまうのだ。
裏が抜け落ちたからである。
文字面だけの意味しか話さないのは、
小学生ぐらいまでだろう。
大人になればなるほど、
言外の意味をちゃんと使うものだ。
うちの業界では、
「なるほど〜(全然良くないけど、反対すると怒るから、
納得したふりをして受け入れてから、反論するか)」
という業界用語がある。
()に入れたのが本音、裏だ。
文字面だけを追うリライトが危険なのは、
このような、表と裏の落差を含んだ会話を、
表だけの小学生レベルの会話にしてしまうのである。
リライトしまくったものほど、
深味がなくて詰まらないのは、
こういう理由が大きいような気がする。
あるいは、流れのなかでの深さじゃなくて、
単発的な、その場だけの深さだけのものになりがち。
たとえば海街ダイアリーの中でのリリー・フランキーは、
意味ありげな言い方ばかりで、
一見深そうだけれどなくていい役だった。
で、僕は、
前の原稿を、一旦身体のなかに入れて、
白紙から書き直すことを勧めている。
白紙から書けば、
新たな表を、以前の裏を含ませながら、
書けるからである。
文字面だけ直す奴は、
言葉が表だけからしか出来ていないと考える、
小学生レベルの作文しか出来ていないのである。
(CMでは、これを逆手に取ることがある。
クライアントが下らない理由で文字面の直しを要求してきたら、
文字面の表だけ直して、
本当の意味、裏を変えないように作ったりする。
で、直したふりだけして、我々は舌を出すのである)
裏の真意を、リライトするのか?
表の文字面を、リライトするのか?
裏は変えずに表だけリライトするのか?
表を変えずに裏だけリライトするのか?
表と裏を両方リライトするのか?
下手に手を入れる前に、
自分は何をしようとしているかを、
把握しよう。
2016年01月22日
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