ネットというのは面白い。
「キムタクが何度もタイムリープして、
SMAPの解散を阻止した」という都市伝説が生まれたと思ったら、
その実写映画の予告編までMADで出来上がった。
(面白いので検索してください)
さて、これは、面白い映画になるか?
脚本家として考えてみよう。
出落ち落ち、とタイトルにあるように、
これは映画にならない。
タイムリープする出落ち、
そして会見で「今日は2016年の1月18日です」と、
何度目かの世界線の確認をする場面が、
出落ち(その、どうなっちゃうんだ?という瞬間の期待値がピークで、
そのあとはたいして面白くない)に過ぎず、
実際のところは、
そこしか面白いネタがないからである。
もし映画にするとしたら、
SMAPのメンバーに感情移入してしまう場面を、
上手く描かなくてはならない。
(現実には好きすぎて、知らない人が感情移入するかどうかを、
冷静に観察出来なくなるだろう)
それは、状態ではなく、エピソードで描くのであった。
メンバー5人にそれぞれ感情移入できる、
ファーストエピソードを描くのが難しいだろう。
そしてそれは、解散に至る世界線で、
上手く伏線として機能しなければならない。
たとえば中居のファーストエピソードのせいで、
中居が解散を譲らない、みたいな世界線があり、
キムタクはそこを覆す必要がある、などだ。
それはメンバーそれぞれに強いエピソードがあり、
それらは、それぞれの世界線で強く伏線として機能しなければならない。
「バタフライエフェクト」は、そういうキャラクターのエピソードを利用して、
世界線を上手く提示していることに注意されたい。
さて、それだけだと、中盤に問題が出る。
各4人の所へそれぞれいくと、単なるスプレッドに落ち込む。
同じ体を4回は繰り返せないからだ。
何度やっても何度やっても、解散を阻止できない、
は、3回程度しか描けないだろう。
そこに4人のファーストエピソードを上手く利用するべきだ。
そして、この話は、何と闘うのか、
という重要なものが抜け落ちている。
何故解散しなければならないか、
という理由が不明示だ。
気持ちが離れるだけでなく、
実は物理的、金銭的、表に出ていない人間関係的理由が必要だ。
その時点で、純粋な5人の話ではなくなってしまうだろう。
ということで、
ぱっと考えた面白そうな話(設定による出落ち)を、
構造化された脚本にするには、
多くの困難が伴う。
まあ、SMAPファンの女性脚本家が、
今頃自主的に書いてるかも知れないが。
僕はSMAPファンじゃないので、
そこまで暇ではないけれど。
設定のアイデア、パーツを並べて面白そうな感じを作ることは、
実は誰にでもできる。
それを、首尾一貫した、ひとつのお話にすることだけが、
とても特殊な能力がいる。
そのことを、皆はあまり考えていない。
ここまでは考えたから、あとはプロが考えて、
と無茶ぶりしているだけだ。
おそらく、1に対して99ぐらいは構築しないと、
まともな話にならないだろう。
「映画化決定」と2ちゃんのスレでは良く見る。
しかしそれはあくまでネタである。
時々本当に映画化可能か、映画にするには何が足りないか、
を考える、
つまりこのネタは、映画の面白さのどの部分だけか、
という判断を鍛えるのに、いいかも知れないね。
(そしてそれは大抵出落ち落ちなんだよね)
2016年01月23日
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