2016年02月21日

構成とストーリーの違い

という検索ワードで来た方がいるようで。
考えてみよう。

昔話の桃太郎を例に。


桃太郎のストーリーは、
桃から生まれた桃太郎が、
人々に迷惑をかける鬼を倒しに鬼ヶ島へ行く途中、
犬猿雉を吉備団子で仲間につけ、
本拠地鬼ヶ島へ乗り込み、見事退治、
奪われた金銀財宝を奪還してきた、
という大筋だ。

この大筋がストーリーである。

犬猿雉が、ゴリラ猫蛇に変わったとしても、
桃太郎のストーリーは変わらない。
(何故なら犬猿雉ならではのストーリーがないから)
巨大な桃から生まれたのが、
巨大なミカンから生まれたとしても、
ストーリーは変わらない。
(川に浮き、切ったら中から出てきそうなら何でもよい。
ただし「果実」という暗示から外れないほうがいいだろう)

何度か書いているが僕は、
鬼=大陸からの異民族で、鉱脈を独占していた一族
(リーダーは温羅(ウラ)と、岡山の吉備王子伝説はいう)
犬猿雉=付近の身分の低い一族、
吉備団子=団子程度の小さな土地(島?)の支配権、
金銀財宝=鉱脈、直接的には女かも
という読み方で、侵略せんそうとしての桃太郎のストーリーを読む。
実際にあったことを、お伽噺風にして生っぽさを取っただけであると。

まあそんなことはどうでもいい。


このストーリーはいくらでも構成を変えられる。

主人公を、鬼にすることが出来る。
あるいは、犬、猿、雉のどれかまたは三人にすることも出来る。
あるいは、じいさんばあさんを主人公にしてもよい。

「最も活躍し事態を解決する者が主人公」
という定義を僕はするが、
たとえば鬼を主人公にするならば、
リーダー温羅から見た、異民族に侵略される悲劇として描くことが出来る。
たとえば温羅は自分の身を彼らに差し出して、
一族をこの地から逃がす決断をした、
などとしてだ。
そうなれば、これは悲劇の主人公の英雄物語だ。

その主人公が最も活躍するように、
起きている事態のフォーカスするポイントを、
変えることが出来る。
これが構成の妙というやつだ。

起きている事態が同一でも、
我々がその「何を見るか」は変えることが出来るのである。
構成によって。


また、構成では、
あることを取り上げるか取り上げないかを、
選択することが出来る。

たとえば、
もとの桃太郎では、
「桃太郎は力をかさにかけ、
とんでもない悪党に成長したので、
村から追放された」
という設定が省略されていた、
と考えてみよう。

本来、単なる力自慢の悪党が、
勢力を広げ、暴力集団を壊滅させて村に帰還し、
その村ごと金銭的にも支配した、という物語が、
その設定を省略することで、
単なる英雄物語に改変されていたかも知れない。

逆に、ストーリーは同じでも、
設定を足すことで、
物語の本質すら変えることが出来る。
これが構成のふたつめだ。


三つ目は、時系列をいじることが出来る。

鬼退治に出発、全滅させた
→20年前にさかのぼる
→桃太郎の出生の秘密、桃太郎は鬼と人間の合の子で、
鬼に殺されそうになったので、母親が命をかけて桃に隠し、
川へ流した
→それをおばあさんが拾って、エンド

などのようにだ。

省略と足すことと、時系列をいじることで、
いかようにもストーリーを操ることが可能になるのである。


また、同じストーリーでも、
分かりやすくすることと分かりにくくすることを、
構成でコントロール出来る。

もとの桃太郎は分かりやすい構成になっているが、
これを、時系列をバラバラに進行させて、
分かりにくくすることは可能だろう。

逆に、分かりにくいストーリーは、
構成を素直にスッキリさせることで、
分かりやすい話にすることが可能だ。
大抵は、構成の工夫で分かりやすくすることに注力することになる。
(逆に、ミスリードやどんでん返しを仕込むときは、
構成を複雑にして分かりにくくするとよい。
勿論、分かりやすい構成なのにどんでん返しが効いているのが、
理想ではある)

たとえば「メメント」は、10分おきに時間が逆行しているから、
面白い構成なのだが、
これを頭から順に見ても、何も面白くないストーリーだったりする。
構成でストーリーを面白く出来る例である。



同じストーリーでも、
構成を変えることで、
面白くなったりならなかったりする。

それが構成の妙というやつだ。

また、構成の妙にこだわらないことだ。
面白いストーリーありきなら、
構成は素直なのが一番いい。
料理にたとえれば、ストーリーは素材で、
構成は調理法だ。
刺身が一番うまいなら、そうすればいい。
どうにもこうにもなら、スパイスや煮込みで、ある種誤魔化してゆく。
posted by おおおかとしひこ at 16:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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