物語の中の人間が魅力的に見えるのは、
この瞬間があるからではないかと思う。
どんな美人や美男の写真や絵より、
どんな服やメイクより、
どんな光の中やシチュエーションより、
どんな仕草やポーズや表情より、
どんな冗談や会話より、
どんなアクションや歌や仮装などの余興より、
物語の中だけにしかない瞬間こそが、
物語の中の人物にしかない、
魅力の瞬間である。
それは決断である。
「時間を先に進めること」である。
裏を返すと「もう元に戻れないことを、引き受けること」である。
自分を決めることである。
今後周囲や事態がどうなったとしても、
これはこうだと決めることである。
決定は覆らない。
それが人生で、社会で、世界である。
その連鎖を作ることが、物語を書くことである。
あなたの主人公は、その物語の中で、
何度決断をするのか。
最低二回。第一ターニングポイントと第二ターニングポイント。
おそらく15分に一回。あるいはもっと。
覆らない台詞を言うこと、
覆らない行動をすること、
これらを含めれば、もっともっともっとだろう。
主人公はこの問題に参与するまでは、
覆すことが可能な世界、つまり日常にいた。
しかし事件に関わることを選んだのだ。
好むと好まざるとに関わらず。
冒頭7、8分までに最低一度ある決断(事件への参与)以降、
主人公は、覆らないことの怒濤の中に入る。
それは問題解決の瞬間、ラストシーンまで。
物語の中の人物の魅力が、
決断という覆らない時間の魅力だとしたら、
主人公は何度も何度も何度も、
しょっちゅう魅力的になっていくのである。
そうじゃないとすると、
あなたの主人公はあんまり決断をしてないんじゃないか。
他キャラのほうが魅力があるのは、
主人公があんまり決断をしてないんじゃないか。
劇的ということは、
土砂降りとか桜吹雪とか、大声で叫ぶとかカメラワークとかではなく、
決断(覆らないこと)の、
大きさで決まるような気がする。
(死とか選択とかが劇的なものの代表なのは、
おそらくそういうことだ)
たとえばニートはカッコ悪い。
それは決断を先伸ばしに永遠にしているからだ。
ところが自宅警備員と「規定」した瞬間にちょっとかっこよくなる。
それは決断だからだ。
2016年02月25日
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