2016年02月26日

恥ずかしさと向き合う

さらにつづき。

つまり、物語を書くという行為は、
半脱ぎという恥ずかしさを、
クリアしなければならない。


良く言われることに、
「作家は自分のちんこを晒すより恥ずかしいことをしている。
自分の内面を晒すからだ。自分のヌード以上だ」
というのがある。

これは勿論誤解である。
自分の内面を晒すのは、ダメなメアリースー作家に過ぎない。

優れた作家は、他人という登場人物を描く。
他人の内面を晒すことはするが、
自分の内面とは関係がない。
それは創られたヌードなのである。


その区別は厳然とあるとして、
登場人物は、つまり恥ずかしがるのである。

服だろうと心だろうと半脱ぎすることが、
物語という非日常だからである。
実際に脱ぐこともあるだろう。扇情的作品では。

ネットスラングの「////」
(ほっぺを赤く染める記号を使い、
恥ずかしがっている様を表す)
は、そういう意味で本質的な発明のひとつだろう。
登場人物の、半脱ぎの瞬間を記号化したものだからだ。
(これを使わずにその気持ちを表現できるのがプロなのだが、
書き手はアマチュアなのでここでは不問だ)

つまり、物語とは、恥ずかしがる瞬間がハイライトだ。

そんなこと言わなくたって、
「見ないで…」なんて瞬間は、
我々の大好物である。
ここでようやく下ネタに一周して帰ってくる。
下ネタは、人間の本質と関係があるのだ。


登場人物にとって、その恥ずかしさは、
乗り越えるべき内的障害である。
内面を晒さなければならない、
事情があるからこそ、
その人物は内面を晒す。
その目的に対して、恥ずかしいという感情は、
内的障害である。
それをどう乗り越えるかが、
物語になるのである。

下ネタで言えば、服を脱ぐときに、
「見ちゃダメ」とか「電気消して」とかである。
それでも内心はセックスがしたい、というところに、
我々のボルテージが上がるのである。



物語とは、障害をどう乗り越えるかを描く。
つまり、人は心を晒すとき、
ただ晒すのでなく、恥ずかしいという感情が障害になる。
その障害の乗り越え方こそが、創作の面白いところだ。

風魔10話「告白」の、姫子はどうだったか。
「せっかくなんだから、デートっぽいことしようよ」だ。
これまで自分の社会的立場としての本音、
つまり、夜叉姫と話し合うべきか、
小次郎は死ぬのかを確かめたこと、
祖父の志を継ぎたいが自信がないこと、
などを晒した上で、
ようやく一人の女の子としての本音を晒す。
でもストレートに小次郎に好きって言えないから、
茶化して言うのである。
この恥ずかしがり方が、可愛い。

小次郎だってストレートに言えないから、
「えっ、100個あるのに、10個に絞る?」とか、
「可愛いとこ可愛いとこ可愛いとこ」と、
茶化してみせる。
その恥ずかしがり方が、いい。
(だからそのあととのギャップが効く)

あるいは、応援団副団長は、
敢えて恥ずかしい応援をしたことで、
好きな女、蘭子の恥ずかしいのハードルを下げた。
漢だ。

冷めた目で見れば、みんな恥ずかしいことをやっている。
にもかかわらず、
我々の中で10話は、心の中に大切にとっておきたい、
珠玉の物語である。
それは、恥ずかしいという障害を乗り越えて、
心を晒す瞬間を、描いたからではないだろうか。



人は、どう恥ずかしがるだろう。
他人がどう恥ずかしがるといいだろう。
その人がその恥ずかしさを、どうやって乗り越えるだろう。
それが創作の醍醐味だ。

つまり、脱げよ。(もういい)


女優さんは何故ヌードになれるのか。
「作品のために脱ぐ」とよく言われるが、
金のために脱ぐと誤解されがちだ。
女優さんが脱げるのは、
それが登場人物の内面を晒す瞬間として、
もっとも適切な表現だと判断したからだ。
つまりその役がそうなら、
綺麗な裸だろうが陥没乳首だろうが、晒すのが女優だ。



さて。

で、結局その恥ずかしがり方や乗り越え方は、
全く他人のことではなく、
半ば作家本人の経験を混ぜたりもするものだ。
ということで、
「作家は自分のちんこを晒すより恥ずかしいことをしている。
自分の内面を晒すからだ。自分のヌード以上だ」
というよくある指摘は、
「誤解だけど、当たらずとも遠からずだね」
とお茶を濁すようになるのである。

10話?知らないっ。////
posted by おおおかとしひこ at 15:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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