2016年02月27日

プロの現場から1

この二ヶ月ぐらいで、なかなかの良作を作ったので、
ドキュメンタリー的に解説をして、
後進の役に立てようと思います。

30秒60秒の、短編映画的なCM。
昔はこういうのがよくあって、
こういうのを作りたくて業界に入ったのに、
最近全然なくなってしまった。
暗いと不平を言うよりも、進んで灯りをつけましょう。

ということではじまりはじまり。


まずはプレ情報。

プロの仕事は「依頼」からはじまる。
金を出して広告を打ちたい、広告主と呼ばれる会社からだ。
今回の広告主は、NHK。
ここの担当の方とは長い付き合いで、
十年以上で5本ほどそういうものを作ってきた。
(「割れたせんべい」もその一本)

広告主は問題を抱えている。
広告をしたいのだが、うまくいかないと。

今回伝えたいことは、
「受信料を払ってください」である。

わはは。難しいね。
みんなやだよ、ということを、
「しょうがねえな、払ってやるよ」と思わせなければならない。
中には「是非払わせて下さい!」と号泣する人が出なければならない。
(全員そうなったら最高だけど)
勿論地上波、全国。

その大きな枠内で、更に小問題がある。
「NHKの受信料の家族割引は、半額である」というニュースを伝えることだ。
(学生さん、一人暮らし限定)

むしろこれが上手く伝われば、受信料を払うことに抵抗が半減されるだろう、
とNHKサイドは考えていた。

たとえば、大学進学を期に、
田舎から上京するシチュエーションなどで、
半額というニュースを出せば、
そうなんだ、と受信料を払うラストへ持っていきやすいだろう、
という読みだ。

また、家族割引を適用すると、
一人暮らしをはじめた若者が払ってもいいし、
親が払ってもいい。
金のない若者が払うより、田舎の親が払うなら負担も少ないよね、
とNHKサイドは考えている。

なかなか考えられたサービスである。
二世帯分払うより、1.5世帯分払えばいいというわけだ。

子供側が無理して払うより、親側が自然に払うような、
ラストへ持ってこれないだろうか、
というのが相談内容だ。

冷静に考えれば、親のすねかじりである。
それをそう思わせないような、
「いい話」で感動させて下さい、
というのが依頼の芯である。
自然に人の心を誘導すること。
それは、物語にしか出来ないことだ。

オリエン(広告主の条件)をまとめてみよう。

広告主:NHK
商品:受信料の家族割引(学生さんの一人暮らし)
ニュース: 一人暮らしをしたら、家族割引が半額。
ターゲット:払う主体。若者というより親。

若者が払う、というより、親に払わせる、
というのが今回の難しいポイントだ。

ちなみにこれは、
一年前も同じオリエン内容で別チームが作った。
小松菜奈が駅で母親と別れて上京し、
なんて内容だった。覚えてる人もいるかもだ。
雰囲気は良かったが、半額も伝わってないし、
親が払うというのも伝わっていない。
その反省のもとに、僕に依頼が来たというわけだ。

さらに今回は、
予算:極貧。
という条件がつく。

若者向けの広告を別予算でつくるので、
そちらに取られるためだ。
前年度の半分ぐらいと見積り、僕はNHKをあとにした。



さあ、ここで問題。

これらを解決する、
30秒の、いい話CMを作ってくれたまえ。

脚本形式でよい。コンテ形式でもよい。
あと僕的には、同スタンバイで撮れる60秒バージョンも作りたい。



以下、担当の方のヒント。

上京前のシチュエーションで、
娘のふとした言動から、
母親が「もう子供じゃなくて、しっかりしてるんだ」と発見する。
しっかりした娘というモチーフを使って、
そんな子に、ちょっとは脛をかじらせてあげようと思う、
のような親の心の動きを描いてはどうか?

というもの。
これはひとつ、ストーリーのパターンとしてあり得ると思う。
(逆に広告主がこういう時は、これで具体を作ってきてくれ、
という無言の依頼である。
このパターンのいい話と、自分なりに考えたいい話と、
何パターンか作る必要が出てきた)



はい、問題。

最低三本。出来れば五本。
僕は二日で五本作った。

明後日、3/1からOAだ。それまでに考えよ。
その2につづく。
posted by おおおかとしひこ at 20:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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