この二ヶ月ぐらいで、なかなかの良作を作ったので、
ドキュメンタリー的に解説をして、
後進の役に立てようと思います。
30秒60秒の、短編映画的なCM。
昔はこういうのがよくあって、
こういうのを作りたくて業界に入ったのに、
最近全然なくなってしまった。
暗いと不平を言うよりも、進んで灯りをつけましょう。
ということではじまりはじまり。
まずはプレ情報。
プロの仕事は「依頼」からはじまる。
金を出して広告を打ちたい、広告主と呼ばれる会社からだ。
今回の広告主は、NHK。
ここの担当の方とは長い付き合いで、
十年以上で5本ほどそういうものを作ってきた。
(「割れたせんべい」もその一本)
広告主は問題を抱えている。
広告をしたいのだが、うまくいかないと。
今回伝えたいことは、
「受信料を払ってください」である。
わはは。難しいね。
みんなやだよ、ということを、
「しょうがねえな、払ってやるよ」と思わせなければならない。
中には「是非払わせて下さい!」と号泣する人が出なければならない。
(全員そうなったら最高だけど)
勿論地上波、全国。
その大きな枠内で、更に小問題がある。
「NHKの受信料の家族割引は、半額である」というニュースを伝えることだ。
(学生さん、一人暮らし限定)
むしろこれが上手く伝われば、受信料を払うことに抵抗が半減されるだろう、
とNHKサイドは考えていた。
たとえば、大学進学を期に、
田舎から上京するシチュエーションなどで、
半額というニュースを出せば、
そうなんだ、と受信料を払うラストへ持っていきやすいだろう、
という読みだ。
また、家族割引を適用すると、
一人暮らしをはじめた若者が払ってもいいし、
親が払ってもいい。
金のない若者が払うより、田舎の親が払うなら負担も少ないよね、
とNHKサイドは考えている。
なかなか考えられたサービスである。
二世帯分払うより、1.5世帯分払えばいいというわけだ。
子供側が無理して払うより、親側が自然に払うような、
ラストへ持ってこれないだろうか、
というのが相談内容だ。
冷静に考えれば、親のすねかじりである。
それをそう思わせないような、
「いい話」で感動させて下さい、
というのが依頼の芯である。
自然に人の心を誘導すること。
それは、物語にしか出来ないことだ。
オリエン(広告主の条件)をまとめてみよう。
広告主:NHK
商品:受信料の家族割引(学生さんの一人暮らし)
ニュース: 一人暮らしをしたら、家族割引が半額。
ターゲット:払う主体。若者というより親。
若者が払う、というより、親に払わせる、
というのが今回の難しいポイントだ。
ちなみにこれは、
一年前も同じオリエン内容で別チームが作った。
小松菜奈が駅で母親と別れて上京し、
なんて内容だった。覚えてる人もいるかもだ。
雰囲気は良かったが、半額も伝わってないし、
親が払うというのも伝わっていない。
その反省のもとに、僕に依頼が来たというわけだ。
さらに今回は、
予算:極貧。
という条件がつく。
若者向けの広告を別予算でつくるので、
そちらに取られるためだ。
前年度の半分ぐらいと見積り、僕はNHKをあとにした。
さあ、ここで問題。
これらを解決する、
30秒の、いい話CMを作ってくれたまえ。
脚本形式でよい。コンテ形式でもよい。
あと僕的には、同スタンバイで撮れる60秒バージョンも作りたい。
以下、担当の方のヒント。
上京前のシチュエーションで、
娘のふとした言動から、
母親が「もう子供じゃなくて、しっかりしてるんだ」と発見する。
しっかりした娘というモチーフを使って、
そんな子に、ちょっとは脛をかじらせてあげようと思う、
のような親の心の動きを描いてはどうか?
というもの。
これはひとつ、ストーリーのパターンとしてあり得ると思う。
(逆に広告主がこういう時は、これで具体を作ってきてくれ、
という無言の依頼である。
このパターンのいい話と、自分なりに考えたいい話と、
何パターンか作る必要が出てきた)
はい、問題。
最低三本。出来れば五本。
僕は二日で五本作った。
明後日、3/1からOAだ。それまでに考えよ。
その2につづく。
2016年02月27日
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