とかくプロの世界は共同作業だ。
「こういう感じのものを作ってくれ」というのは、
大抵イメージのかけらもない曖昧な注文であり、
いざ作ってみると「イメージと違う」と言われて、
組み上げたパズルを全解体しなければならない羽目に陥る。
それは、間に入る人の問題ではない。
注文する側の問題を、注文主自身や、
チームが分かっていないことに起因する。
そう断言する。
ということで、出来うるなら、
注文の場で、大まかな構成を示して、
その時点でOKを取っておくのが賢いやり方である。
某後輩が、とある劇団ユニットに請われて、
舞台脚本を書いた。
まずまずの出来で、デビュー作にありがちな気負いと空回りが散見される。
構成はしっかりしていてストーリーの体をなしてはいるが、
オリジナルな感動はない。
ところで、その劇団ユニットには、
ダンサーとシンガーソングライターが、
女優として参加していた。
そのユニットの売りだから、
ダンスシーンと歌シーンは、必須だと言えよう。
ところがだ。
出来上がったストーリーにダンスシーンは僅かであり、
歌もメインではなかったのだ。
脚本家が、ストーリーとしての出来を優先したのだろう。
これは、依頼したユニット側からすれば、
話が違う、ということになる。
しかし公演はすぐそこに迫り、大抵修正している時間はない。
どんな修正も、ストーリーを台無しにするように思えるからである。
で、実際の公演は、
お芝居が終わったあと暗転、
明転後、ダンサーが二曲ほど踊り、
暗転、明転後、シンガーソングライターが三曲歌う、
という、演劇のあとにレビュウがつく、
二部制の公演となっていた。
客である俺は、そんなこと聞いてもいない。
ということで、
芝居が終わったあと、
死神役だったはずの女の子が、
何故だか陽気な表情でタップを踏む様や、
オーディションに受かるため姉の呪縛を振り切る女の子が、
急にメロディアスなピアノを弾き始めるのに、
戸惑いながら苦笑いせざるを得なかった。
時間にして10分ぐらい?
芝居そのものより長く感じたレビュウであった。
このちぐはぐな構成は、
芝居の脚本に、ダンスで見せるシーンや、
歌で見せるシーンがなかったゆえの、
恐らく苦肉の策であろう。
しかし、芝居を求めてきた人は、次のレビュウでぽかんとなり、
歌と踊りを求めてきた来た人は、芝居の物足りなさにぽかんとなる、
誰も幸せにしないショウであることは明らかだった。
幕の内弁当はおいしくない。
提供は「ひとつ」であるべきだ。
二部制とかオムニバスとかは、記憶に何も残さない。
ということで、
最初の注文の場に、既に間違いが潜んでいたはずだ。
このユニットは、
芝居と、ダンスと、歌のコラボレーション劇団である、
というきちんとした説明と、
それらが等分に混ざったステージをやりたい、
と、依頼主は注文しなければならない。
依頼を受けた脚本家は、その場で、
ダンスシーンは何分ぐらいのイメージか、
歌シーンは何分何曲ぐらいのイメージかを聞かなければならない。
二曲踊り、三曲歌う、と依頼主がイメージしているとしよう。
だとすると、
オープニングアクトで一曲踊る。
中間で二曲歌う。
クライマックスで、歌と踊りのコラボ。
こういう構成で話を考えてくればよいですか?
と、「その場で」、全体のイメージを共有しなければならない。
当然、ダンスや曲のジャンル、
彼女たちの普段の動画の資料はあってしかるべきだし、
それらをやるのか、新しいものに挑戦するかを、
選ばなければならない。
たとえば、タップがマストなら、
タップを必ず踊らなければならないストーリーは、
とても狭いジャンルに限られてしまうだろう。
それらを、「その場で」、つまり、
まだストーリーを作る前に、確認して共有すべきだ。
依頼主は、依頼のプロではない。
ストーリーを作る、作り方も分かっていない。
分かっていないから頼んでくるんだけど。
そして、「何でもいいから書いてくれ」という依頼など滅多になく、
大抵はあるイメージを持って話し合いの場に来ている。
それをまず相手に出し切らせない限り、
どんなに苦労して作った傑作を出しても、
イメージと違うと言われて、パズルの組み損である。
その場で大まかな条件と、
大まかな構成を示して確認しなかった、
脚本家サイドが悪い。
出来上がったものを、いくら弄ってもキメラになるだけだ。
そんな生命を誕生させてはならぬのだ。
出来てからでは遅い。作る前に確認すること。
それは、子供を作るときと同じかもね。
(今回のNHKに関しては、
そのファーストコンタクトが凄く上手くいったので、
全くぶれない5案をプレゼンすることが出来た。
そのうち一案が採択され、実制作に進むことになるが、
それは追々話して行く。3/1OAを待て)
ということで、
このちぐはぐな構成のステージ、
funnyB「フィナーレは劇場で」
本日千秋楽、18:00板橋区役所前サブテレニアンにて。
2500円払って、失敗作を勉強したければ来るがよい。
2016年02月28日
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