2016年02月28日

大雑把な構成を共有しよう

とかくプロの世界は共同作業だ。
「こういう感じのものを作ってくれ」というのは、
大抵イメージのかけらもない曖昧な注文であり、
いざ作ってみると「イメージと違う」と言われて、
組み上げたパズルを全解体しなければならない羽目に陥る。

それは、間に入る人の問題ではない。
注文する側の問題を、注文主自身や、
チームが分かっていないことに起因する。
そう断言する。

ということで、出来うるなら、
注文の場で、大まかな構成を示して、
その時点でOKを取っておくのが賢いやり方である。


某後輩が、とある劇団ユニットに請われて、
舞台脚本を書いた。
まずまずの出来で、デビュー作にありがちな気負いと空回りが散見される。
構成はしっかりしていてストーリーの体をなしてはいるが、
オリジナルな感動はない。

ところで、その劇団ユニットには、
ダンサーとシンガーソングライターが、
女優として参加していた。

そのユニットの売りだから、
ダンスシーンと歌シーンは、必須だと言えよう。

ところがだ。
出来上がったストーリーにダンスシーンは僅かであり、
歌もメインではなかったのだ。
脚本家が、ストーリーとしての出来を優先したのだろう。

これは、依頼したユニット側からすれば、
話が違う、ということになる。
しかし公演はすぐそこに迫り、大抵修正している時間はない。
どんな修正も、ストーリーを台無しにするように思えるからである。


で、実際の公演は、
お芝居が終わったあと暗転、
明転後、ダンサーが二曲ほど踊り、
暗転、明転後、シンガーソングライターが三曲歌う、
という、演劇のあとにレビュウがつく、
二部制の公演となっていた。

客である俺は、そんなこと聞いてもいない。
ということで、
芝居が終わったあと、
死神役だったはずの女の子が、
何故だか陽気な表情でタップを踏む様や、
オーディションに受かるため姉の呪縛を振り切る女の子が、
急にメロディアスなピアノを弾き始めるのに、
戸惑いながら苦笑いせざるを得なかった。
時間にして10分ぐらい?
芝居そのものより長く感じたレビュウであった。



このちぐはぐな構成は、
芝居の脚本に、ダンスで見せるシーンや、
歌で見せるシーンがなかったゆえの、
恐らく苦肉の策であろう。
しかし、芝居を求めてきた人は、次のレビュウでぽかんとなり、
歌と踊りを求めてきた来た人は、芝居の物足りなさにぽかんとなる、
誰も幸せにしないショウであることは明らかだった。

幕の内弁当はおいしくない。
提供は「ひとつ」であるべきだ。
二部制とかオムニバスとかは、記憶に何も残さない。


ということで、
最初の注文の場に、既に間違いが潜んでいたはずだ。

このユニットは、
芝居と、ダンスと、歌のコラボレーション劇団である、
というきちんとした説明と、
それらが等分に混ざったステージをやりたい、
と、依頼主は注文しなければならない。

依頼を受けた脚本家は、その場で、
ダンスシーンは何分ぐらいのイメージか、
歌シーンは何分何曲ぐらいのイメージかを聞かなければならない。
二曲踊り、三曲歌う、と依頼主がイメージしているとしよう。

だとすると、
オープニングアクトで一曲踊る。
中間で二曲歌う。
クライマックスで、歌と踊りのコラボ。

こういう構成で話を考えてくればよいですか?
と、「その場で」、全体のイメージを共有しなければならない。
当然、ダンスや曲のジャンル、
彼女たちの普段の動画の資料はあってしかるべきだし、
それらをやるのか、新しいものに挑戦するかを、
選ばなければならない。

たとえば、タップがマストなら、
タップを必ず踊らなければならないストーリーは、
とても狭いジャンルに限られてしまうだろう。

それらを、「その場で」、つまり、
まだストーリーを作る前に、確認して共有すべきだ。



依頼主は、依頼のプロではない。
ストーリーを作る、作り方も分かっていない。
分かっていないから頼んでくるんだけど。

そして、「何でもいいから書いてくれ」という依頼など滅多になく、
大抵はあるイメージを持って話し合いの場に来ている。

それをまず相手に出し切らせない限り、
どんなに苦労して作った傑作を出しても、
イメージと違うと言われて、パズルの組み損である。


その場で大まかな条件と、
大まかな構成を示して確認しなかった、
脚本家サイドが悪い。

出来上がったものを、いくら弄ってもキメラになるだけだ。
そんな生命を誕生させてはならぬのだ。

出来てからでは遅い。作る前に確認すること。
それは、子供を作るときと同じかもね。



(今回のNHKに関しては、
そのファーストコンタクトが凄く上手くいったので、
全くぶれない5案をプレゼンすることが出来た。
そのうち一案が採択され、実制作に進むことになるが、
それは追々話して行く。3/1OAを待て)


ということで、
このちぐはぐな構成のステージ、
funnyB「フィナーレは劇場で」
本日千秋楽、18:00板橋区役所前サブテレニアンにて。
2500円払って、失敗作を勉強したければ来るがよい。
posted by おおおかとしひこ at 16:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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