2016年03月04日

大岡版Zガンダム「空を見たことのない子ら」

kykyさんの質問のことを考えていたら、
とりあえずいくつかの点のアイデアが出て、
第一話の骨が出来たので書いてみる。


人類がスペースコロニーを作り、
宇宙に移民して○年。
スペースコロニーのひとつサイド7は、
老朽化のため、破棄の必要性が出てきた。

サイド7側は地球への帰還を希望したが、
時の連邦政府ティターンズは拒否。
サイド7の住人は、サイド8建設までの期間(二十年後)、
遠くのスペースコロニー、サイド3への移民をしなければならない。
主人公カミーユ・ビダンはその中の一人である。

ティターンズの地球選民思想に反発し、
各地でゲリラ戦が行われている。
我々は人類であり、地球人と宇宙民で争うことはない、
という表向きのティターンズの論を、皆は嘘臭いと思っている。

ゲリラ組織のひとつエウーゴは、
ティターンズの新型MS開発の知らせを聞き、
奪取を試みる。
新型MSの試験場所は、廃棄の決定したサイド7。
新型とは、ガンダムマーク2。
エウーゴの現場指揮官ブライトは、因縁めいたものを感じる。

戦闘は、予定よりはやまった。
戦闘区域には、移民の為住居を追われ、
避難生活をしているカミーユがいた。

ということでガンダムの1話と同じ状況になり、
たまたまカミーユが黒いガンダムを動かすという話。
(俺は女じゃねえ、という反発は、
黒いガンダムを動かす動機になる)


戦闘後、ブライトとカミーユが話す。
ブライト「宇宙生活もそろそろ飽きた。青い空をそろそろ見たい
(目的地は地球に幽閉されているアムロ、の意味で言う)」
カミーユ「空ってなんですか?」
ブライト「空って、青かったり曇ったりする、我々の上にあるものさ」
カミーユ「上って言う感覚が分からない(とコロニーの上方の地面をさす)」
ブライト「きみは、宇宙民第一世代か」
カミーユ「はい」
ブライト「きみは、辛いことかあったら見上げる空や、
何か希望を託す未来の空や、天気が荒れてもいつか覗く青空を、
知らないのか」
カミーユ「ビデオでは見ましたが、我々には空という概念はありません」
ブライト「クワトロ。我々にはない感覚だ。上下という感覚もないのかも知れん。
これが人類の変革か」

空を見たことない子ら。
彼らが人類の進化の先である。



みたいな第一話はどうでしょうかね。
第一話は、テーマを暗示するべき。
つまり、前作のテーマをうけて、
続編の今回はさらなる「人類の進化」に肉薄しようとする、
という宣言で終わるべきかと。

元のサブタイ「黒いガンダム」は、
謎めいたワードでひきつけるやり方だけど、
ひきつけたあと、本編のテーマがなんだったか、
全くあやふやなまま進んでしまった。
だったら、きちんと第一話でテーマを示すべきだ、
というのが僕の考え。


以降、アムロ奪還を目的に、エウーゴは地球へ侵攻。
サイド7の移民を一部乗せて、
カミーユは空を見るために地球へ行く、という話に。

地球民選民思想のティターンズがアンチテーゼに、
人に上も下もない、と考える宇宙民たちが、
地球連邦を離れ宇宙連邦をつくるという、政治的戦争に、
巻き込まれてゆくことになる、という大河で。

この大枠なら、登場人物のエピソードはあまり崩さずに、
行けそうな気がする。
クワトロは途中でシャアを名乗るべきだね。
アムロは登場してもいいけど、
もはやMSに乗れる体ではなかった(ティターンズに人体実験を受けて)、
として、Zガンダム開発のメカニックに回ると面白いのではないかな。

ラストは、もはや宇宙民のほうが地球民より多い、
という大同団結で終戦か。
カミーユはシロッコと精神世界で対決したのち、
廃人になるけど、フォウの精神体にでも導かれて、
テレパシーならば意識を示せる車椅子の人になる、
というラストで、まあなんとか。
(普通に大勝利でもよい)

シャアはジオニズムの後継者として、
宇宙民は地球民より優秀である、という逆選民思想者として、
次の悪になるということで。
新たな恋人がハマーンになるのか?でZZへ続くと。


まあざっくりこんな感じ。

テーマがない、軸が通っていないのが、
Zガンダムの弱点。
Zガンダムってどんな話?の問いに答えられない。

しかも続編として、正編の議論の続きになっていないこと。
人が革新したのだとしたら、
次はそれに人類がなにがしかのリアクションをしないとね。
ということで、
「ニュータイプ差別と人権を勝ち取る戦争」
という大枠をつくってみた。

富野御大がどう考えていたかはおいといて、
僕はこういう「続き」が見たかったなあ。

(あとZのデザインがいまだに嫌い。顔が虫みたいなんだよなあ。
その違和感がZに馴染めない感じなのかも。
ザボーガーのストロングザボーガーも違和感あったなあ)
posted by おおおかとしひこ at 11:15| Comment(6) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメント返信のみならず、こちらの記事でも自分の問いに答えて頂きありがとうございます。



なるほど新人類側vs旧人類側という点を明確にすることで、ジェリドやシロッコといった選民思想の敵役との対立をより明確にすることができそうですね。

これならカミーユが強力なニュータイプ=人類の進化の先である必要性もできますね。

名前に対するコンプレックスの昇華も、人類の進化というテーマに寄り添ったものにつながりそう。

「空を見たい」という動機も、新人類と旧人類の価値観の違いによる対立、宇宙育ちのカミーユが地球の素晴らしさを知るきっかけ、その地球を汚そうとしている敵への怒り、というようにテーマにうまく繋がる様に広げることができますね。



前作のガンダム乗りが新型のガンダムを開発しているというアイデアもいいですね!

フォウのサイコガンダムとmkUが相打ちになり、恋人を助けられず乗機も失い落ち込むカミーユに、過去に同じく大切な人を失ったアムロが「俺のようにはなるな」と新型のZを託す・・・というような燃えるターニングポイントになりそうですし。




>テーマがない、軸が通っていないのが、
Zガンダムの弱点。
Zガンダムってどんな話?の問いに答えられない。


非常に共感しました。
面白い話とするためにはテーマをうまく伝えることの大切さを再認識できました。


実際にプロットまで書いて教えて頂き、大変勉強になりました。どうもありがとうございます。
Posted by kyky at 2016年03月04日 17:04
僕もリアタイ視聴以来見てないので、
サイコガンダムとマーク2が闘ったんだっけ、
とかいまいち覚えてないのであれですが。
(生粋の、ファースト、Z、ZZ、逆シャアしか見てなくて、
0083もGもターンAも種も、なんにも見てない。
ユニコーンも見ようとしたけどキャラデザで拒否反応)

実は冒頭が感情移入(陥ったシチュエーションに興味をもつ)になっています。
「サイド7老朽化により廃棄決定、
地球への移民を断られ、サイド3で二十年暮らさなきゃいけない」
という随分「嫌な」シチュエーションで。

連邦政府が嫌になることを、一発で実現出来ています。
この流れなら、その当事者に感情移入するのは当然。
「女みたいな名前」なんて中二的設定より、
感情移入が出来るでしょう。

また、空を見たことない子が、
地球の空を見たとして、「うわあ素晴らしい、感動」と思わない、
というのが僕の読みです。
ブライト達は「どうだ美しいだろ」と言うけど、
「空気抵抗が発生するし、つまんない」という現代っ子ぽいかんじがいいかと。
地球を覆う胎盤のような空を否定する世代、みたいな感じにすると、地球民との差が際立つと思います。
(それを更に際立たせるため、フォウを地球育ちにして、夕焼けや虹を一緒に見させるといいかもね)

このバージョンのカミーユは、
ガンダムの最終回、カツレツキッカが、
アムロとテレパシーで繋がり、
人類覚醒の未来を予感させたことと、直結させるつもりのキャラクターです。
元Zが、そうなってなかったのが、僕の一番の不満。
Posted by 大岡俊彦 at 2016年03月04日 18:02
追記です。

テーマが「人類の進化」
モチーフが「ニュータイプ差別と人権を勝ち取る戦争」です。
これだと大枠の世間の流れは出来るものの、
個人との関係が弱いので、
更に主人公には、
「宇宙移民を拒否して地球を見に行く」
というモチーフが加わっている構造です。

戦争ものは、どうして戦争が起きているかということと、
それに個人が何故参戦するするか、を上手く描かないと感情移入が出来ないのです。
なんでブライトはエウーゴにいるんだっけ。忘れちゃったよ。
このバージョンでは、ニュータイプの人権を取り戻すため、と構造から明らかですが。
Posted by 大岡俊彦 at 2016年03月04日 18:19
劇場版Zが、大岡さんのお考えになる弱点を網羅しているように思えます。
良かったら是非ご覧になってください。

UCのアニメは途中から酷くなるので観なくていいですが、ターンAを観てないのは勿体ないですよ。
ストーリーを語る大岡さんには是非感想を伺いたいです。
Posted by どら at 2016年03月04日 19:19
どら様コメントありがとうございます。

ターンAはリアタイでバイク型が出てきたあたりで脱落。
見慣れたMSを「発掘」というのに全然馴染めず。
だったら機甲界ガリアンという傑作があるし、
エルガイムでもオリジナルやレプリカとかやってたし。
僕はファーストが好きだったので、ガンダムと名がつかず、ホワイトドールというアニメならちゃんと見れたかも。
それをガンダム商売にしなければならない、
対スポンサーの感じが見えすぎてもういいやと思った記憶があります。
スポンサーは内容に干渉すべきでない(どうせ素人なんだから)、
という現在の僕の考えは、このあたりで培われたような。

今更全話見る気力もないので、
暇なら劇場版、新訳Zに手を出すかも。
Posted by 大岡俊彦 at 2016年03月05日 16:17
ご返信ありがとうございました。
そうですか、残念です。

ターンAという記号を用いているところにこの作品の面白さがあるのですが…

もし機会があれば、いつかご覧になってみて下さい。

ちなみにバイク型というのは、恐らくVガンダムだと思います。

新訳Zの感想、楽しみにしております。
Posted by どら at 2016年03月06日 23:51
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