2016年03月05日

連作短編と長編3

連作短編は、書きながらキャラを作っていく側面がある。
一方、長編は、全部作ってから書きはじめる。


連作短編は、エピソード単位で物事をつくる。
だから、登場人物の、そのエピソード上必要な部分だけを最低限作ればいい。

だが、シリーズを重ねていくうちに、
徐々にキャラクターが形作られていくものである。

実際のところ、人物の変化は結果的だ。
初期設定だけしたキャラが、
エピソードを重ねているうちに、
大抵は「勝手に」成長変化してゆく。

つまり、連作短編は、キャラを作りながら書いてゆく。
(だから後半になって勝手にキャラが動くのは、
よく経験する現象である)
この場合、キャラの変化は予測できない。
思いもしなかった方向に伸びていくような感じだ。
それが面白いから、
書く前に多くを決めない作家も多い。

がそれは、完結させ慣れている人に限ると思う。
この形式では、作者の制御力や構成力は鍛えられないからである。


一方、長編は、
最初から最後まで計画する。

登場人物の変化は、すべて予測済みで計画的である。
連作短編の後半に訪れる生き生きとした登場人物を、
最初から登場させ、
計画的に欠落を描き、
計画的に内的問題を描き、
計画的に解決させて、
計画的にカタルシスを通過させて変化成長させる。
それを、
最初からプロットやシノプシスに組み込み、
そもそもそれがテーマであるような構造を、
計画的に最初から作る。

連作短編は、なんとなくテーマを決めておいて、
その周りをぐるぐる巡る感じだ。
そのうち肉薄出来る入り口を、書きながら見つける感じ。
だから終わるまでに、見つからないこともある。
(これが完結しないことの原因になる)


つまり、テーマとの距離感が違うのだ。

勿論、両極端なやり方を述べているので、
両者はどこかで融合することもある。
連作短編形式だが、長編のように予め計画してあるとか、
長編構造だけ作っておいて、一部は連作短編のようにアドリブでやっていくとか。



登場人物の作り方、話の構造すら、
両者は異なる。
あなたは、連作短編を書こうとしているのか?
それとも長編一本を、書こうとしているのか?
混同していては、中身もぶれまくると思うよ。

たとえば連作短編を書いてるうちに長編になった、
というパターンはよくあるけど、
その場合序盤がぬるく感じると思うよ。
ラストの為の一幕に、効率的な構造をしてないことが多い。
(自分の例で言えば、「いけちゃんとぼく」の一幕は、
連作短編形式の原作を、上手く変換しきれなかった部分だ)

自分はどちらを書いているのか?
その意識を持てば、
完結できないという悩みを客観視出来るのではないか?
posted by おおおかとしひこ at 22:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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