中学生でも分かる、基本的単語ばかりがよい。
なぜか。
難しい単語は、
とても狭い範囲を深く指す言葉である。
つまり、カバーする範囲は狭い。
難しい単語を使う台詞は、
意味を深く正確に捉えられるが、
「その意味」しか伝えることが出来ない。
一方、決め台詞になるものは、
これまでの状況を全て包括するような、
一言でなければならない。
これまでの状況を、深く狭い言葉で、
正確に、複雑に描写し終えたら、
それが一体どういうことなのかを、
包括的に言葉にする必要がある。
つまり、短い言葉で、広い意味を言えなければならないわけだ。
そういうわけで、
決め台詞は簡単な言葉の組み合わせになるのである。
ついでにいうと、色んな場面で使い回しが効くと便利だ。
つまりその話の別の場面でも使えるかということだ。
それは、ダブルミーニングやトリプルミーニングであるような複雑な構造よりも、
単純で使い回しが効く表現の方が、取り回しがきくのだ。
あるいは、現実場面でも真似がしやすい。
ドラマ風魔で言えば、
「その脚力は一日数千里を走り…」よりも、
「ああもう、めんどくさいめんどくさい!」
のほうが使い勝手がいいように。
基本的な単語だけで名台詞が書けるのは、
中学生には出来ない。
我々大人が、簡単でない複雑な状況を創作し、
それをなんとか包括的に表現しようと工夫するとき、
待ちの広い基本的な単語で、
どうにか表現しようとするとき、
中学生単語だけで決め台詞が、
結果的に書かれるのだ。
決め台詞は基本的な単語だけで書かれているからといって、
それはその文字通りの意味ではなく、
これまでの話が全部含まれているから、
意味があるのである。
最近の例だとNHK(「プロの現場から」の一連の記事参照)の、
「…そうね」かな。
ただの返事以上の意味があるから、
決め台詞たりえるのである。
わりとてんぐ探偵のラストは、そういうのを意識していて、
妖怪横文字のラスト「合点承知」、
妖怪任せられないのラスト「お任せで」あたりは、
うまく行った例だと思う。
2016年03月06日
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