2016年03月06日

決め台詞は、簡単な言葉

中学生でも分かる、基本的単語ばかりがよい。

なぜか。


難しい単語は、
とても狭い範囲を深く指す言葉である。
つまり、カバーする範囲は狭い。

難しい単語を使う台詞は、
意味を深く正確に捉えられるが、
「その意味」しか伝えることが出来ない。

一方、決め台詞になるものは、
これまでの状況を全て包括するような、
一言でなければならない。

これまでの状況を、深く狭い言葉で、
正確に、複雑に描写し終えたら、
それが一体どういうことなのかを、
包括的に言葉にする必要がある。

つまり、短い言葉で、広い意味を言えなければならないわけだ。

そういうわけで、
決め台詞は簡単な言葉の組み合わせになるのである。


ついでにいうと、色んな場面で使い回しが効くと便利だ。
つまりその話の別の場面でも使えるかということだ。
それは、ダブルミーニングやトリプルミーニングであるような複雑な構造よりも、
単純で使い回しが効く表現の方が、取り回しがきくのだ。

あるいは、現実場面でも真似がしやすい。
ドラマ風魔で言えば、
「その脚力は一日数千里を走り…」よりも、
「ああもう、めんどくさいめんどくさい!」
のほうが使い勝手がいいように。


基本的な単語だけで名台詞が書けるのは、
中学生には出来ない。
我々大人が、簡単でない複雑な状況を創作し、
それをなんとか包括的に表現しようと工夫するとき、
待ちの広い基本的な単語で、
どうにか表現しようとするとき、
中学生単語だけで決め台詞が、
結果的に書かれるのだ。

決め台詞は基本的な単語だけで書かれているからといって、
それはその文字通りの意味ではなく、
これまでの話が全部含まれているから、
意味があるのである。

最近の例だとNHK(「プロの現場から」の一連の記事参照)の、
「…そうね」かな。
ただの返事以上の意味があるから、
決め台詞たりえるのである。


わりとてんぐ探偵のラストは、そういうのを意識していて、
妖怪横文字のラスト「合点承知」、
妖怪任せられないのラスト「お任せで」あたりは、
うまく行った例だと思う。
posted by おおおかとしひこ at 15:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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