変化を描くためである。
映画というのは、大きく「ひとつの変化」を描く。
「変化せずもとに戻った」では、
そのお話がたいした意味がなかったということだ。
なにかものすごい価値のある経験をしたからこそ、
人は変わる。
その価値(テーマ)を、変化(モチーフ)で示すのである。
ダメでクズだった俺でも、
勇気を出して必死でやれば、
いっぱしの男になれる。
そういう話はよくある。
ロッキーなどが典型だ。
テーマは「頑張れば、変われる」であり、
それを「成功した男」で示す。
(大抵はビフォーアフター形式で示す。
前半がひどい暮らしぶりと惨めな表情、
ラストは輝かしい栄光、というペアにする)
「成功した男」を見ることで、
「頑張れば、変われる」という意味を読み取るのだ。
「成功した男」単品にそこまでの意味はないことに注意。
その写真を見て我々が「頑張れば変われるぞ、うおおお」と思うのは、
ロッキーという価値ある物語を見たからである。
難しい言葉でいうと、
テーマをモチーフで表象する、という。
モチーフ represents テーマ、だ。
さて、復習はこのへんにして、本題。
物凄く価値のあるテーマを、
変化で表現するならば、
それは物凄い変化でなければならない。
バーベルが30キロ挙げられたのを、
31キロ挙げられるようになった、
なんて微細な変化で、大きな価値を表現するのは困難だ。
従って、分かりやすく、大きな変化で示す必要がある。
人生で大きな変化はなんだろう。
誕生、死。
学校入学卒業、手術や大病。
結婚、離婚。出産、子育て。
物凄いざっくりだとこんな感じだろう。
あとは麻薬で大きく変化するとかか。
ということで、
結婚という、物凄い大きな変化を、
キス一発で示せる。
結婚までいかなくてもカップル誕生でもいい。
人生の大きな変化を、ワンショットで示せ、
ポジティブで、物凄い価値をそこに乗っけられ、
しかもうっとりする、
という点で、
キスシーンで示すことは、
大変コスパがよいのである。
これが理由だ。
勿論、ハッピーエンドに限る。
別れで終わる名画も沢山ある。
「第三の男」を代表としてあげておこう。
ビターエンドこそ人生だ、という考え方もあるけど、
みんなハッピーエンドが大好きだ。
そういうわけで、
ハリウッド映画はラストがキスで終わる。
あなたの映画を、
キスシーンで終わらせてみよう。
男女がメインじゃないなら、ホモやレズという設定で構わない。
(「天国の入り口、終わりの楽園」や「テルマ&ルイーズ」は、
友達だった同性がキスして終わる、不思議な映画だ)
そんな大きな変化を、登場人物はしているか?
そこまで物凄い価値を、テーマに持ってきているか?
そのチェックに使える。
もし、
大袈裟なラストだなあ、と、とってつけたようになるのなら、
あなたの映画はたいしたテーマを扱っていない、
浅い話である可能性がある。
2016年03月10日
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