2016年03月20日

コンフリクトベースの作劇

コンフリクトはこの場合、
「ぶつかり合い」と考える。

二人の登場人物を設定する。
それぞれの目的を、400字程度で書く。
それが矛盾しているようにだ。
つまり、この二人が出会えば、
ぶつかり合うことになる。


正義と悪とか、優勝を争うライバルなどは、
基本的なコンフリクトだけど、
もう少しリアリティーがあってもいい。

たとえば、
「文化祭の成功には、クラス全員の団結が不可欠で、
サボるやつがいてはならない。サボるやつを説得しなければ」
と、
「文化祭の成功には、能力のあるやつだけが参加すればいい。
サボるやつはサボらせとけばいい。やれるやつでやったほうが効率もいいし、
情熱の純度が違う」
という二人がいれば、
必ずケンカが起こるはずである。

さらにリアリティーを増せば、
仕事のスタイルや哲学、
同棲カップルの価値観の差異、
民族の宗教的考え方、
人間と人工知能の考え方の差異、
などをネタに、コンフリクトを仕込むことも可能だろう。


さて、とにかくコンフリクトを作ったら、
それをベースに作劇をするのだ。

まず主人公をどちらかに決める。
最終的に勝利するほうである。
世間的に正解とされている方でもいいし、
逆でもいい。
(逆が勝つことで、世間の先入観を覆すという作品は多い。
道徳話がなぜ詰まらないかといえば、当然の価値観が勝つからだ)

さて、どちらが主人公かを決めたら、
まずその主人公の目的や価値観を一発で示すエピソードをつくる。
それに感情移入させるレベルのエピソードにすること。
ただの説明では詰まらない。
その主人公に感情移入するからこそ、心から成功を応援できる。
感情移入のメカニズムについては、過去記事参照。

で、二人が出会う印象的なエピソードを作ること。
ダラダラ会うのではなく、物語的であること。
いわば運命の出会い、会うべくして会うように、
コントロールすること。


あとは、出会った二人が、
徐々に矛盾を感じ、
相手の真意を探らせ、
どうしても説得できないと分かり、
どちらかを排除しなければならないと判明し、
戦う様を書いていく。

戦うのは、物理的バトルでもいいし、
とんでもない戦い方でもいい。
(そのとんでもなさが、その作品のコンセプトになることも多い。
たとえば「ストレイトストーリー」という映画では、
旅の手段が、物凄く遅いトラクターというコンセプトだ)

発想が奇抜なほど、「面白い」と言われるはずだ。

第一ラウンドは、相手の全貌が見える程度だろうか。
何ラウンドやるかによるので、
何ラウンドか決めよう。

さて、何ラウンド目かには、協力者が現れるかも知れない。
全体の長さを見て、長編なら第三者第四者を入れて、
コンフリクトを複雑にしよう。
短編なら、1ラウンドで二人きりで決着かも知れないね。


あとは、最終ラウンドだ。
その前に、二人の主張(目的が示す意味)を、
観客と共有して整理できるシーンを書く。
独り言を言ったり、誰か親しい人に打ち明けるシーンかも知れないね。

さあ最終ラウンド。
そのバトルでの勝利が印象的になる、
劇的なシーンを書こう。
核爆発だろうが花火だろうがなんでもいい。
クライマックスの勝利は、いつもオリジナリティーのある絵でなければならない。
それがその話の顔になるだろう。

そのシーンによって、
主人公の目的は果たされ、
主人公の主張が正しいことが、象徴されることになる。

あとはエンドだ。
敗北者がその後どうなったか、勝利者がどうなったを書けば、
この話の意味(主人公の主張が正しいこと)を示せるだろう。



これは、概ねハリウッド映画の方法論である。
「敵を倒す」ストーリーだ。
敵をアンタゴニスト、主人公をプロタゴニストと言う。
物語は、プロタゴニストがアンタゴニストを論破する、
一種のディベートである。

ディベートだから、アンタゴニストとプロタゴニストを逆にした、
真逆の物語も仮に作ることが可能である。
反論に対して、妥当な反論を用意すればいい。
もしあなたが法学部なら、そういう訓練をしたかも知れないね。

物語における、どちらをプロタゴニストにするかは、
「受ける方」でいいと思う。
「この価値観の勝利が気持ちがいい方」だ。
当然の価値観が勝利してもいいし、
意外な結論になることで現状にノーと言って喝采を浴びてもいい。
「笑ゥせえるすまん」は、ブラックにそれをやる。

たとえば上の文化祭の例では、
前者が勝つなら、前者は熱血キャラで後者は冷めてるキャラで、
みんなで文化祭を成功させ、目立たないやつにも価値がある、
みたいな感動ストーリーになるだろうし、
後者が勝つなら、前者が原理主義の級長で、後者は情熱家で、
好きなやつが魂を燃焼させる、静かで熱い話になるだろう。
どちらが正義でもない。
面白い話と、面白い主張になるほうが、正解。


勿論、相手を倒さなくてもいい。
互いに異なる主張を互いが理解し、
第三の選択肢を思いつく、という流れにしてもよい。
日本人はこちらが好みで、大岡裁きなんて言ったりするよね。
(俺じゃなくて、大岡越前の話)
最近ネットで「やさしい世界」と形容されがちなこれは、
ハリウッド的な敵を倒す話より、大岡裁き的な、
誰もが幸せになる方法の模索が人気であることを示している。


いずれにせよ、ラストが、プロタゴニストの主張に価値があることを、
無言で示す。つまりテーマとはこれである。




物凄く乱暴に構造をみてみた。
要するにこういう構造で、
面白い主張のぶつかり合いと、
面白い場面があり、
感情移入が上手くいけば(自分と同じ人にではなく、
違う人に感情移入するのが面白い感情移入であった)、
面白い物語に、なるだろう。

あとはガワ。
魅力的なキャラクターだったり、
セリフで笑いをとったり、泣かせたり出来れば完璧だね。
posted by おおおかとしひこ at 13:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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