2016年03月22日

無計画に書くとよくやること

書きながら考えようとか、あまり計画せずに書くと、
よくある現象。


1. 最初は主人公からはじめるが、尽きてきて別の人にフォーカスしてしまい、
その人が尽きたらまた別の人にフォーカスしてしまう

2. 最初は凄いことが起こるのに、それが尽きたら急に何していいか分からなくなる

3. 主人公は最初は何事か考えているように見えるが、
そのうち反応してるだけになる

4. 意味ありげな伏線を張るが、あとで全く使わない
5. あとで使うつもりで伏線を仕込むが、あとで全く使わない
6. 伏線を張ってない

7. その場面にたどり着いてから設定しはじめて、
物語の焦点を見失う


まあ、初心者あるあるだよね。
書き始めたはいいが思ったより上手く行かず、
想像してたより詰まらなくなって、挫折してしまうのは、
なんとなくこれら全てが発生する気がする。

で、プロットを書いて計画的に、と言われて、
自分なりに計画して書き始めるのだが、
書きはじめのやり方が前と同じだから、
同じように挫折してしまったりする。

あるいは偶然これらを避けて最後まで無事書け、
自信がそれなりについてきた時でも、
これらを克服したわけではなく偶然避けただけなので、
別の作品を書き始めたらこの罠にはまり、
書けなくなってしまうかも知れない。

序盤のブラックホール、とでも名付けよう。
これに捕まらない為にはどうすればよいのか?


1. 主人公を追い続けること。

主人公が登場するファーストブロックが終わったら、
次のブロックも主人公を中心に書くこと。
意図的に、最初の数ブロックは主人公にフォーカスせよ。
あなたが第二ブロックで主人公を無意識に避けて、
つい別の人にフォーカスするには理由がある。

a. 主人公に飽きた: これから二時間付き合う人間ではなかった、
ということ。二時間付き合うに値する人物に作り直せ。
もっと立体的で、多面的で、深いものを持つ人物にせよ。
b. 主人公が何してよいか分からず、それに耐えられなかった:
3の論点へ。
要するに主人公の準備不足だ。

aが足りないと言われたら、人間的魅力だから分かりやすい。
(たとえば実写糞ガッチャマンは、健に魅力がない。
彼と飯食ったり、電車の相席になったとして、一緒に楽しめそうにない)
bは何だ?時間軸上の人物造形、というのがヒント。


2. 面白いことが次々あるように準備せよ。

一発目に面白いことが起こることは、誰でも出来る。
面白いことを思いついた!という衝動だけで書けるからだ。
それが終わったら、一波来て終わったサーフィンでしかない。
波が次々と来るのが、面白いサーフィンである。
つまり、複数の面白いことを、準備しなければならない。

また、「向こうから来る面白さ」だけではない。
「こちらから行く面白さ」というのも世の中にはある。
あなたの面白さがすぐに尽きるのは、
引きこもりで、口を開けて待ってるだけだからだ。
扉をあけ外に出て、他人に働きかける面白さを書ける必要がある。
それには、普段の人生経験が必要だ。
(たとえば実写糞ガッチャマンは、
オープニングバトルが終わった直後から、急に眠くなる。
オープニングは、敵襲来からの撃退という、向こうから来る面白さだ。
次のミッションは、「仮面舞踏会に潜入し、重要人物に接触」である。
オープニングからの繋がりが全くなく、話が別物になっていて、
しかもまた「向こうから来る面白さ」だ。向こうから来てばかりで、
最初の波より小波だから、眠くなるのである)

面白いサーフィンとは、波と自分のやることの相互作用のことである。
世界からの影響と、世界への影響のループが発展していく面白さが、
ストーリーの面白さだ。



3. 主人公には、ストーリー開始時点より前に、やろうとしていたことがある。

つまりはバックストーリー。
バックストーリーは、主人公の背景説明ではなく、
ストーリーの為のプロの道具である。

最初はAをしようとしていたのだが、
ストーリー開始のBに阻まれ、
Aを諦めるか、AB同時に出来ないか、などを迷い、
決めなければならない。
このABの時間軸の異なる事象の狭間に立たされることで、
主人公が点ではなく線で存在できる。

簡単な例:「遅刻遅刻うー!」と走っていたら転校生にぶつかる。
遅刻がバックストーリーAで、転校生との出会いがストーリーB。

転校生と出会うことで遅刻してしまい、
補習が言い渡され、転校生のせいよ!プンプン!と、
補習に出たら転校生もそれに出席させられていて…
などのように、ABの話が同時に進むと話が転がり始める。

これが転校生との出会いBだけだと、
出会ったあとに何していいか分からなくなり、
話が停滞するはずだ。

つまり、一本のストーリーラインは、持たない。
話Bを前進させるために、バックストーリーAを利用するのである。
0からの加速Bは難しいので、既に勢いをつけておいたAの力を借りるのだ。

簡単な例:

国際会議に向かう飛行機がハイジャックされ…
辞表を持っていったら、大事件が起きそれどころでは…
明日はプレゼンなのに、デートのお誘いが…
病気なのに無理して仕事して…

(実写糞ガッチャマンは、主人公の健だけでなく、
どの人物もバックストーリーを持っていない。
石の使い手という背景説明はあるが、
それは現在の目的や行動に関係していない。
つまり点の人物であり線をなさない。
健はジョーと同じ女を取り合った過去が設定されるが、
それは開始時点と関係ないのでバックストーリーではない)

むしろ、バックストーリーという呼び方がよくないね。
「ストーリー以前目的を持て」とでも纏めておくか。

この目的は、大げさじゃなくていい。
「今日は早目に帰って女房の機嫌を取らなきゃいけない」でも、
「コーヒーを飲むためお湯を沸かした」でも利用できるよ。
勿論、
家に帰れないことが起こっているうちに女房から電話がかかり、
ケトルが爆発するまでお湯に戻れないことが起こるだろう。


4.5.6. 伏線は適切にしこめ。

そんなの分かってるんだけどね。
伏線の上手な仕込みかたは、
「あとでの明確な使い方が分かっている時に限る」である。
最後までストーリーが出来てないのに、
どうして上手に仕込めようか。
むしろ、伏線など気にせずに最後まで書いて、
リライトで上手に仕込み直してはどうか。
使いもしない伏線を仕込んで、序盤がたるくなることを防げるぞ。
どうせ二稿で、第一幕は8割以上直すんだし。


7. その場所に来る前に前振れ。

「仮面舞踏会に潜入せよ」という指令を言われ、
仮面舞踏会に来てから、
「ここは政府の要人が沢山いて、
暗殺するためにギャラクターも潜入しているかも知れない」と設定するのはおかしい。
今分かったのかよそれ。
仮面舞踏会の前のシーンでそれを前振っておいて、
いざ潜入シーンになったら、
「誰がギャラクターで誰が人間なんだ」とドキドキするところから始めるべきだ。

「京都六波羅蜜寺に修学旅行に行く」とき、
「口から念仏を吐く空也上人像があり、
それは鎌倉幕府より前の平安末期作」と事前に言われていれば、
実際の像を見てほうううとなるが、
目の前に木造を見てから「これは平安末期作で…」と説明されても、
鼻をほじる詰まらなさなのと、同様である。

会う前に写真を見たり、妄想の時間があるほうがいい。

未来を設定してから、
実際にその未来に連れていけ。
説明なく楽しめるだろう。





以上の議論は、
この先ストーリーがどのように展開し、
どのような結末を迎え、
このストーリーは何をテーマとして結論づけるか、
つまり、全プロットが出来ていれば、
余裕を持ってコントロール出来ることばかりである。

つまり、書きながら考えるわ、とか、
アドリブでやる、とか、
臨場感で書く、とか言う奴は、
「準備して書くことが出来ない」
「何を準備して書けばいいか分からない」
「準備の仕方もその利用の仕方も分からない」
という奴に過ぎないのである。


まあ、一度失敗して痛い目を見ないと、
こういうことは染みないと思うので、
皆さんバンバンこけて下さい。
実戦でこけるより、練習でこけましょう。
実戦では立ち直るまで待ってくれません。
練習では、立ち直る時間が取れます。
posted by おおおかとしひこ at 04:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック