2016年03月28日

ストーリー構造

という、とらえどころのない難しい検索ワードで来た方がいた。

ストーリーには構造がある。
それは直感的には分かるのだが、
自分で作ろうとすると、どういう構造を作ればいいか分からない。

以下の6つの構造を作らないと、
ストーリーの構造を作ったことにならないと、
僕は考えている。

人物関係、世界の構造、事件の構造、
目的の構造、時間上の構成、テーマの構造。


人物関係:

各キャラクターの、
現在の立場(職業、年齢、家族構成、過去や性格など。
全部作る必要はなく、話に必要な分だけにする。
使うより多目に設定してしまうと、消化不良になる)。
そして各キャラクター同士の、人物関係。
(これもN人いれば、NxN通りの設定が必要だが、
実際には会わない人もいるので、物語に使う分の関係設定を、
綿密に作っておくとよい。最初は多すぎか少なすぎになるが)


これらは、ストーリーを通じて変化する。
固定された人間関係は詰まらない。
人間関係や、その人そのものが内面的に変化することが、
ストーリーの面白さだ。
具体的にどう変わって行くかはストーリー次第なので、
人間関係だけ、キャラクターだけ、
人間関係や内面の変化だけ独立して存在するわけではない。
(すでに出来上がったものから、パーツを抽出することは可能)



世界の構造:

物語内の世界の構造。
注意すべきは、物語に出てこない所まで作る必要はないことだ。
スターウォーズでタトゥーインの政治構造まで作る必要はない。
ついつい多目に作っちゃって、裏設定とか言い出すけど。

人物関係や世界の構造を作ることは、
一種の箱庭療法ではないかと僕は疑っている。
それをコツコツ作るだけで面白いんだよね。
設定厨と呼ばれる人は、ひたすらそれだけに興味があるみたい。
「ファイブスターストーリーズ」は、
公式でそれをやっちまった稀有な例だ。
しかし、この作品のストーリーが糞みたいに面白くないのと同様、
どれだけキャラと世界だけを作っても、
ストーリーを作ったことにはならない。
以下のものが必要で、
以下のもの次第で、設定は沢山変更されうる。



事件の構造:

ストーリーとは、事件が起こって解決するまでを扱う。
その事件がどういう構造をしているか、が、
事件の構造だ。

ミステリーが分かりやすい。
一見密室殺人事件に見えたが、実はこうだったのだ、とか、
一見無関係殺人だったが、過去の人間関係
(たとえば全員が赤軍だったとか)が影響していて、などだ。

事件がどういう構造かを、真相まで突き詰めることが、
ストーリーの本筋になるだろう。
それは予めどういう解き方をするかを考える、
パズルを作ることに似ている。

恋愛ものなら一目惚れが事件であり、
人間関係などが事件の構造になるはずだ。
勿論、それも解決(両思い)への解決法が作られていなければ、
ストーリーの構造を作ったとは言えない。


目的の構造:

目的を持たない人間は、劇にはいない。
現実には沢山いるけどね。

劇に出る人は、何らかの目的を持っている。
目的が複数あると、ぶつかり合うことになる。
これをコンフリクトといい、
ストーリーの中盤はそのぶつかり合いがメインとなる。
事件の解決をしていくと、どうしてもぶつかり合いが発生する。
その解決はそもそも必要なのかと言う人もいるし、
妨害してくる敵もいるものだ。
それらは、ただ文句を言ってくるのではなく、
目的が異なるからぶつかり合うことにしておくと、
よりぶつかり合いが面白くなる。

一回文句を言って終わりなのはストーリーではなく、
ぶつかり合った結果、もうぶつからなくなるまでを描くのがストーリーだ。
喧嘩や殺し合いや潰し合いや話し合いや、妥協や昇華が起こるだろう。

誰がそもそもどういう目的で登場し、
誰の目的とどう矛盾してぶつかり合うのか。
そしてその過程や結末も。


時間上の構成:

ものすごくざっくり言うと、
ファーストシーンは事件の発生であり、
ラストシーンは事件の解決だ。
その複雑な過程が、
どういう順番でどういう分量比で見せられるかを決定することが、
構成である。
伝統的に三幕構造にするとスッキリするので、
これをベースとするやり方が一般的だ。


テーマの構造:

結局この話は何の意味があったのか、それがテーマである。
意味のない話はない。
少なくとも、お金を取るプロの話においては。
意味のない話は、何の価値もない話と同じだ。

全てのストーリーは価値があり、意味がある。
それは崇高なテーマから卑近で下らないテーマまで、
様々である。

テーマとは、一種のテーゼ(命題、○○は△△だ)で示される。
しかしそれは直接言われず、間接的に示される。

最も多いのが、テーゼの反対(アンチテーゼ)を敵にし、
敵の敗北でテーゼの正しさを示す構造だ。
アンチテーゼが悪の時、それを勧善懲悪という。

そうでなくとも、こういう構造の話なら、
何も言わなくても自然とその言おうとしてることは伝わるよね、
という構造が、テーマの構造だ。
つまり、ストーリーの前提や展開や結論こそが、
テーマを暗示する構造になっていなければならない。





これらの6つの構造は、重なりあう。

たとえば、
主人公の内面の変化は、
大抵欠落を埋めることでなされ、
それがテーマの構造になる。

主人公の目的は事件の解決だが、
それは表面上の目的であり、
その解決は何か別のことを求める代償行為だったりする。

人間関係の変化が、テーマを示す構造になることもある。

事件の構造は、世界の構造に依存したりする。
人物関係が、事件の構造に関係したりもする。

時間上の構成で、トリックを作ったりどんでん返しを作れる。
それは世界の構造や事件の構造と関係する。


などなどだ。



単独でそれらは存在せず、有機的に絡み合う。
勿論、既存作品からそれらを単体で抽出するのは可能で、
勉強するにはそういうことが不可欠だ。

だが実際にその複雑な構造を作ろうと思うと、
どこから作っていいか分からないものだ。

とりあえずどこかから作れ、
足りない所は作りながら足していけ、
何が足りないかはバランスを見て判断しろ、
あとは練り込んでいけ、
としか、
言いようがなかったりするけど。



ストーリーには構造がある。
そういうとき、これらのどれを指しているかで、
話が変わってくるよね。
posted by おおおかとしひこ at 03:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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