一幕は大変難しいパートである。
なんなら一番実力が必要な幕かも知れない。
それを最初に書かなきゃいけないから、
シナリオ作りはハードルが高いのだ。
一幕で上手くやらなければならない、
「説明」の役割とは。
これまでの議論から明らかだが、
感情移入の為なのだ。
いつの話か、だとか、
ここがどこなのか冒頭で分かりやすく示せとか、
説明には昔から継がれてきた鉄則のようなものがある。
主人公を追い続けろとかね。
それは、観客に「説明」するためにあるのではない。
観客と私たち語り手の頭の中に、
「同じものを共有する」ためにある。
一緒に、頭の中で、
あなたと遠い主人公や世界を構築しましょうということだ。
それは本当には何のためか。
共感(同じ人にしか起きない)ではなく、
感情移入(違う人にも起こる)を作る為なのだ。
前記事では、
技の前に作りが必要なことを実際に示して見せた。
つまりただの説明では人は聞かないから、
説明を聞きたくなるように誘導し、
心を浮かせればよかったのだった。
(唯一の方法ではなく、色々ある気がする)
このように工夫された説明は、
思わずちゃんと聞く気になる。
まあ、映画を見慣れた人なら、
一幕は設定部分だからと、
ちょっと面白くなくても我慢して説明を頭に入れてくれるだろうけど。
にしても、シネフィルがあなたの観客ではないだろう。
さらに一幕では、
非日常の冒険世界の真逆の日常世界、
序盤の人間関係、
内的目的、
テーマの暗示、
あとあと使う伏線などを仕込みながら、
第一印象を強烈に印象づけるべきものは、そうしなければならない。
それらの要素を全部こなす30枚を、
初心者がいきなり始めに書かなきゃいけないのは、
脚本家を育成する気がないのか、
と言っても過言でない。
初心者が一幕で出来ることは知れている。
せめて主人公に感情移入が起こるように、
だけを考えて集中すればいいかも知れない。
そもそも「説明」という名前がわるい。
「説明」は、感情移入の助走部分、
前提提示部なのである。
2016年03月25日
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