2016年03月27日

新キャラと新事情を放り込む

煮詰まったら新キャラ登場、
というのはひとつの経験則だ。

今いる登場人物たちだけで、
やること全部やってもどうにもいかないと分かると、
何をしていいか分からなくなる。
過去のことがヒントになり、打開策を思いつく、
(過去の伏線)というのもあるけれど、
そう毎度うまくいかない。
ということで、新キャラを借りるという手段もある。

どうしても小説が書けないから、
「電話が鳴った」「ノックの音がした」から書き出してみよ、
という格言があるぐらいだ。
電話の先、ドアの向こうには、
これまでの人生では会わなかった新キャラがいるのである。


さて、新キャラがただ出ればいい訳ではない。
それでは転校生みたいに、
そのキャラが把握できるまでは面白いが、
馴染んだら旧キャラ扱いになってしまう。

新キャラいじりをするために、新キャラを出すのではない。

新キャラが持っている「事情」が、
現在の煮詰まりの打開に役立つために、
「新事情を新キャラに運ばせる」のである。


こういう役割のキャラクターを、使者(ヘラルド)と呼ぶことがある。

マトリックスを例に取れば、
肩に白い兎のタトゥーの女、クラブで会ったトリニティは、
使者である。
日常で煮詰まったネオに、新展開をもたらしたのだ。
使者は、自分が主体でなく、誰かのお使いである可能性が高い。
この場合、モーフィアスがネオに接触する為に、
お使いを出したのである。
(そしてそういう使者は美女と相場が決まっている。
授与式のプレゼンターが綺麗なお姉さんなように。
まあ、一種の美人局ですな)

勿論、モーフィアス自身も、ネオにとってのヘラルドだ。
煮詰まった日常から、
真の世界(ウェルカムトゥザリアルワールド)へ、
目覚める橋渡しの役である。

注意すべきは、のび太症候群のように、
使者に全権を渡すと、
簡単に主人公がメアリースーになってしまうことだ。

新キャラは、あくまで人間であり全能ではない。
旧キャラより能力が勝る部分が目立つが、
劣る部分もある。人間だからである。
その新キャラとのあれやこれやをやるうちに、
事態の打開が進むようにすればよいだけだ。


僕がこういうときイメージしているのは、
ガンダムのスレッガー・ロウだ。
子供たちばかりのホワイトベースに現れた大人臭い男で、
ミライさんをさらっていく。
人間臭く欠点もある。
リュウ・ホセイ、ミハル、マチルダさんを失い、
煮詰まったホワイトベースに新風を吹き込みつつ、
余ったGパーツを請け負って(映画版ではコアブースター)、
戦争とはどういうことかを示し、
乗組員の焦点を、戦争勝利へと導いてゆく役目だ。

つまり、ボトムポイントから回復するために、
スレッガーという新キャラを利用したのだね。
さらにこの先、シャリア・ブルとララァによって、
本題のニュータイプの話になってゆくのだけど。
(つまり、ララァは、ニュータイプという新事情の使者である)

そういえばその前に、シャア退場を受けて、
ランバ・ラルとグフが新キャラとして登場したのだった。
「ザクとは違う」新キャラによって、
煮詰まった所に新風が吹き込まれ、新たな展開になる。
ついでに、アムロに「戦争の実態」を焦点にする
(脱走して砂漠の町で会い、のちに一騎討ちのときにコクピットを切り裂かれて、
あの時の、と互いに目を合わせることになる。
これはガンダムの中でも僕の最も好きなエピソードだ)、
ヘラルドの役目をしているのだね。


新キャラは、
新事情や、新コンフリクトや、新焦点を、
煮詰まった所に持ち込み、新たな展開になってゆく。
つまり、新キャラ登場はターニングポイントになる。


注意すべきことは、
颯爽と新キャラを出すと、出落ちになる可能性があるということ。
その後の役割を作ってから、
それに相応しい登場にしたほうがいい。

変化球としては、
新事情が発覚するずっと以前に登場していてもいい。
その場合「抱えた事情が明らかになる」というパターンで、
新事情を吹き込むことになるだろう。
その極端な例は、「正体が明かされる」である。



さらに注意しておくと、
煮詰まった打開のため、場当たりで新キャラを出して、
後付けで色々やっていくのはやめた方がいい。
その新キャラでも煮詰まり、更に新キャラを出さざるを得なくなり、
事態は収拾がつかなくなるだろう。

原作風魔の聖剣戦争は、その体をなしている。
伊達総司が、聖剣戦争のヘラルドとして現れ、
カオスたち(雷光剣や紫煌剣)が敵のヘラルドとして現れたまでは良いが、
死牙馬の登場、竜魔までも聖剣戦士であったこと、
などに新キャラのインフレが起こり、
聖剣戦争の収拾がつかなくなり、
なんとデウスエクスマキナによって、うやむやにされてしまうのである。
(デウスエクスマキナに関しては過去記事参照。
やっちゃいかんことのひとつだね)
個人的にはこの破綻を繕いたいのだが、
そのチャンスが訪れるかどうかは、神頼みだなあ。


新キャラは、「仲間が増える」がメインではない。
「その持ち込んだ新事情により、事態の打開の展開が進む」が、
重要だ。

(女漫画家が新キャラを出すと前者に偏りがちだ。
家が固定されていて、その家を切り盛りする感覚なのだろう。
その人と仲良くなったり喧嘩したりがメインになってしまう。
男の漫画家の場合、
家から離れて狩りをしている最中の感覚だから、
新キャラは新しい狩り方を知ってるとか、新しい狩り場を知ってるとかになる。
ストーリーを進めるのは、後者だ)
posted by おおおかとしひこ at 12:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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