2016年03月31日

なぜ、そういうことをしようとするのか

目的の理由。

登場人物には目的が必要だが、
実際のところもっと必要なのは、
何故その目的があるのかだ。


「そういう人だから」で片付けないこと。
それは、感情移入を遠ざけてしまう。


感情移入をするには、
どうしてその人はその目的に至ったかという「理解」が必要だ。
事情を知るというやつだ。
説明が下手だと事情の説明に時間がかかるけど、
上手な人なら一発のエピソードで行うことが出来る。

さて、事情を理解することは、即感情移入とは限らない。

よく国や政党が「我々の意思をご理解いただいて…」なんて言ってるが、
理解したからといっても、賛成とは限らない。



その事情を理解し、賛成でなければならない。
感情移入の肝は、これかも知れない。


たとえば好きな人に片思いしていて、
ストーカー行為をしたとしよう。

これは社会的にはアウトだけど、
その人がものすごく好きで、
それしか手段のない、狂おしいくらいの思い、
という事情があるのなら、
しょうがないよね、と賛成されるはずである。
(反対するのはかわいそうだ、という同情も含まれるし、
俺もそういうことしたことある、という共感もあるかもだ)



なぜそういう目的を持つのか。
その事情を理解すること。
そしてそれに、賛成すること。
(たとえば他のアレをすればいいのに、とか、
我慢すればいいのに、などを突っ込まれるのは、
賛成されていないのだ)

それが、感情移入の中心になるのではないだろうか?

そこに共感(自分の経験と同じ)はいらない。
同情(哀れむ心)もいらない。
投影(俺みたいだ)もいらない。

あればあっただけ、有利なクラスタもいて、
そのクラスタには響き、そのクラスタが多数派ならば、
感情移入のメカニズムなしに支持される可能性は高いが、
それがなくとも感情移入は実現できる。


その目的の理由に、賛成させることで。



多くの詰まらない物語では、
「何故それをしようとするか、分からない」
(裏を返せば「何故それをしないのか、分からない」)
が頻繁に起こる。
つまり、理解も出来ないし、賛成も出来ない、
ということだ。


映画に説明が不可欠であることは、これが理由だ。
じゃああとは、
きちんと賛成の事情の構造を作ることと、
うまく説明することだ。
(最もうまい説明は、説明せずに分かること)
posted by おおおかとしひこ at 13:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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