2016年03月30日

実写化とは、何をすればよいのか

書道の練習法の話を知ったので、
前記事と合わせてタイムリーだなと思ったので議論しよう。


(ここから引用)
書道では、古典から字形や筆使いを真似て学ぶ「臨書」と呼ばれる練習法があります。
臨書には3つの方法があり、

形臨
字形を真似することに重点を置く練習。
意臨
筆意を汲みとることに重点を置く練習。
背臨
手本を見ずに記憶を頼りに書く練習。

(ここまで引用)


殆どの実写化は、形臨止まりなんだよな。

変なアレンジをしたり、勝手な解釈をすると、
意臨が失敗してるんだ。
形臨が間違ってても、意臨があってればいいんだよ。
(ちなみに僕は、パチンコ風魔は、
形臨も意臨も間違ってると思います)

ドラマ風魔の成功は、背臨が成功したことなんだ。


原作にはないことを作ることが、
原作が含んでいた空気や、世代の空気や、
原作がやろうとして出来なかったことや、
その辺を補完して含んでいるようになったからこそ、
とても上手くいったと僕は考える。

僕は原作を殆ど見ずに脚本を書いた話はしたと思う。
それは、背臨だったんだな。
自分の血肉になっている大切な原作を、
自分の体で受肉させたんだ。
背臨と意臨さえあってれば、
それは実写化として正しいんだ。

コスプレが合ってるかどうかとか、
役者のビジュアルが合ってるかどうかとかは、
形臨のレベルでしかないんだね。

そういえば形態模写は、
形よりも動きらしい。
コスプレ写真一枚が原作をいかに再現してても、
動いたらメタメタになるのはよくあるよね。

「動いた感じが原作をうまく再現している」形臨、
「原作の伝える本質的意味をうまく伝えていて、しかもノイズや濁りがない」意臨、
「原作と全く違うのに、思い出せばまるで原作と同じ感触の話」背臨、
という分類をすれば、
ドラマ風魔は、予算の関係で形臨は一部しか上手く行っていないが
(1話で脱落した人は、B級であることやホストっぽいとか言う。
形臨の話しかしてないんだよね)、
意臨や背臨が、成功しているから成功なんだよ。



翻って。

映画「キャシャーン」はどうか。
形臨:全く新しい意欲的ビジュアル。
意臨:ロボットと人間を描いて人間とは何かを問うことは、未実現。
背臨:何一つ一致しない。

映画「進撃の巨人」はどうか。
形臨:新橋の巨人と、ちゃちな合成とCG。
意臨:巨人の謎解きをしないので骨格が違う。
背臨:原作の中二病が、小二病ぐらいに後退。

映画「ガッチャマン」はどうか。
形臨:オープニング5分はキャシャーン並に頑張ったがそれまで。
意臨:はあ?
背臨:はあ?

映画「デビルマン」はどうか。
形臨:静止画までは良かったが動いたらメタメタ。
ていうか、ボブサップは何?双子は何?ごり押しキャストは何?
意臨:人間の悪魔性になにひとつ触れていない。
背臨:人間の悪魔性への絶望のラストを何故変えたのか?

まあこれぐらいにしておこう。


形臨が上手く行くかどうかは、
ぶっちゃけ予算がないとダメだ。
風魔は深夜枠予算(当時の仮面ライダー比で半分、大河ドラマ比で1/6)。
予算を決めるのは監督ではなくプロデューサーだ。
プロデューサーがいかにスポンサーを捕まえ、
現場に資金提供してビジネスとして回収できるかだ。
監督や脚本家は、その枠内でしかベストを尽くせない。

お金がなくても出来ることは、
実は意臨や背臨なのだ。

しかしそれには、実力がいるということだ。


ここは脚本を議論する場所だ。
脚本とは、まさに意臨や背臨が出来るか、ということなのである。

たとえばキャシャーンのビジュアルには、
4億かかっている。

脚本にも同じ金をかけてはどうだい。

僕は風魔の脚本監督料は、全部で300万ぐらいだったよ。
DVDが4巻売れても僕には缶コーヒー一本ぶんしか入らない。

脚本にも同じ金をかけてはどうだい。

僕は、心意気だけで、実際のギャラ以上のことをしたと思う。
普通はそれに答えて、次の仕事へステップアップが待つから、
低いギャラでも耐える。
割引は希望と引き換えだ。

脚本にも同じ金をかけてはどうだい。


たとえば「氷の微笑」の脚本料は、300万ドルだそうだ。
ハリウッドの予算規模(ちなみに4900万ドルだそうです。
脚本料は約6%。風魔は1億3000万で、俺の監督脚本料含めて2%)
と比較してもしょうがないが、
目に見えにくいものの価値を、日本人は認めたがらないよね。

それは、形臨しか分からなくて、
意臨や背臨を理解してないからじゃないかな。
posted by おおおかとしひこ at 11:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック