他の作品も赤を入れてみました。
でも、入れながら、結局この話ってなんなんだっけ?と思い、
筆が止まることの繰り返し。
でも脚本記法上の誤り、初歩的な間違いなどもあるので、一応晒します。
応募者本人が自分のを見るだけが、勉強でありません。
他の人がどう直されてるかも勉強です。
書いてない人も勉強です。(今この添削スペシャルは90人ぐらいが見ています)
あるいは、自分ならどう直すだろうか、と考える事すら勉強です。
僕の直しがベストの保証はないです。
会えるまで_赤.pdf
比較的直しやすい構造だったので、最初に手をつけた感じです。
こういうものはネタバレ具合が肝心。
どんでん返しものなどで研究して下さい。
(どんでん返し、という時点でネタバレになっちゃうけど)
ロボットアウェイ_赤.pdf
主人公ロボット・ノキオの台詞、世界観はとても良いのですが、
肝心の感情移入が出来ない。
それは全て落ちの「ノキオの自殺(アウェイ)」の理由がイマイチ不明な点。
これがテーマになるはず。
「不器用な男と純真な少女の恋」は鉄板ですが、
とても難しい、実力の必要なモチーフです。
僕は「レオン」ですら不満ですもの。
ログライン上は「生きる喜びを見いだし」となってるけど、
どこらへんで生きる喜びを見いだした?
省略されてる所でしょ。ここが肝なのですね。
無敵ママゴルビウス_赤.pdf
コメディなのかシリアスなのか、どっちつかずのまま設定だけが続く。
これはどういう訳だろうと考えていたら、
真実はゴルビウスにではなく、「子を思う母の気持ち」のほうにあると気づいた次第。
じゃあそこを芯にすればいいのに、ということで、
母子家庭ならうまくいくでしょう。
さくらさん_赤.pdf
要素が多すぎて、整理がしきれません。
どれを捨ててどれを残すかの判断は、テーマ次第なのですが、
それが最後まで見えませんでした。
「物語はすばらしい」ということを言おうとして失敗した作品に、
「落下の王国」があります。ビジュアルは大変美しいのですが、
何も残らない。
ラストの落ちは「ニューシネマパラダイス」のパクリで、
そのすばらしい感動がなにひとつ伝わってこない。
これは両者の物語の構造が、
テーマを言う為の構造になっているかなっていないかの違いです。
ということで、赤入れも切れが悪い。
説明があまり上手じゃない気がしました。
カードゲーマー葉子_赤.pdf
一番分からないのは、カードゲームである必要性があるかどうかです。
サッカーで最強を願う小学生の所に悪魔が現れ、
金の靴と銀の靴があるが、どちらが欲しいか、
金は最強だがオススメではないし魂と交換だ、
銀がオススメだぞ、魂もいらないと。
小学生は銀を選ぶけど、ちょいちょい負けるのが悔しくて、
金を望み、魂は抜かれるわ、誰もサッカーしてくれないわ、
というブラック話のほうが、
「みんなが分かる話」になっていると思いますが。
これらはデスゲームものの系譜に連なるのでしょうが、
既存の枠組みで語れないものだけ、オリジナルの枠組み
(カードゲームだろうが、キューブのような立体迷路だろうが)
を用意するべきです。
たとえば「ハスラー(オリジナルの1です)」は、
ビリヤードが分からない人にも、「そういうゲーム」だと分かる仕組みになっています。
ビリヤードのゲーム性ではなく、
「死にそうなふりをして掛け金をつり上げ、ラストでかっぱぐ」という、
ビリヤードとは関係ない、「人間の本質」を描くからです。
(ちなみに「ハスラー2」も同様の物語です)
ここで描こうとした人間の本質、
すなわち、「最強になると相手が負けるのをいやがり、孤独になる」というテーマに、
カードゲームとデッキというモチーフが最適だったでしょうか?
たとえば人間の将棋を破った「ディープパープル」や、
囲碁の決勝戦で急に1敗して「接待プレイ」と言われた「アルファGO」を、
モチーフに描いた方がよほど今日的な視点だと思いますが。
つまり、カードゲームは人間を描く為の小道具にすぎません。
カードゲームを描く事がメインではないのです。
僕が遊戯王を糞だと思うのは、ゲームを描いていて、人間を描いていないからです。
ゲームを描きたいのなら、それは物語ではありません。
花曇_赤.pdf
「花曇」をとっぱらったら、急にしょぼい話になるのが目に見える。
メッキの下はこんなものですわ。
メッキでごまかせる相手だけを相手にするか、
メッキがなくとも勝負出来る話を持ってきて下さい。
ざっと俯瞰してみると、「まだ書き慣れていない人」が多いということです。
はじめて数本から10以内ぐらいのレベルです。
「完結した話」を、100本ぐらい書いて下さい。
そうすればメアリースーとの距離の取り方も分かってくるし、
他人の書いたものと自分の書いたものとを相対化したり、
俯瞰して書き直すことが出来たりするようになります。
要は慣れ。
その為に僕は、5分でもいいから数を書け、と普段から主張しています。
初心者の頃は、
「昔感動した、面白かったもの」を、つい再現したくなるものです。
あの、あれを、自分でも書いてみたいと。
それが書くモチベーションになるのは否定しません。
それでプロっぽくなった自分に悦に入るでしょう。
だけどそれは憧れを形にしただけです。
自分の中の再現というか。
それは劣化コピーにしか過ぎないことは、あとあと振り返れば分かるでしょう。
黒歴史とはそんなものですわ。
しかし数を書いていると、それらの憧れを消費し尽くす日が来ます。
「何かを再現すること」の終わりです。
そこからがようやく「創作」の本番です。
数を書くということは、憧れを全部吐き出すまでやれ、という意味でもあります。
「何かを書きたい」という気持ちが、
何かを再現したい(真似したい)でなくなったとき、
ようやく、あなたは何者か?ということが問われはじめます。
あなたにしか書けない、この世にまだ似たものがないものは、何か?
ということが問われます。
僕は二次創作を創作に認めないのは、そういう訳です。
そこまで、あなたたちはたどり着けるでしょうか。
全員は無理で、脱落者は数多いでしょう。
たどり着いても、オリジナルの何かを作る才能がないことに気づいて絶望するかもしれません。
その時はその時で、引退を考えなくてはならない。
才能一本でやっていくとはそういうことです。
僕は脚本を書く為の手助けは出来ますが、人生の保証は出来ません。
それでもやるのか?
それはあなたが決める事です。
そこまで数を書けるか、そうまでしてやっていきたいかを、自分に問いながら。
でも、名作を書く人は、そういうことを一人でやってきた人だけなのは、
間違いないですね。
ほらさんは、少なくとも三年で成長したような気がします。
そこまで歯をくいしばって努力したのでしょう。
これからさらに成長して名作をものにするのかは彼次第ですが、
とりあえずここから有段者の、防具なしの殴り合いに入ります。
次回、
第二部「石焼き芋ラリークロス」添削編を待て。
2016年04月04日
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大変勉強になりました。
テーマにたいしてもっとモチーフを吟味する
考えが足りませんでした、反省してます。
これを糧に今後も精進して行きたいと思います。
どうもありがとうございました。
今回大岡監督に見てもらい、
非常に勉強になったのは
自分では描写してるつもりなのに
それが読む側には全然伝わっていない
という、己の客観性の無さと描写力不足を痛感したことです。
添削レベルまで行けなかったことは
素直に悔しいですが、次はもっと良いものを作ってきます。
もし次回があれば、再チャレンジさせて貰いたいです。
どうもありがとうございました。
いろいろと考えるところがあり大変勉強になりました。
有難うございました。
先生の批評を受け、とても勉強になりました。
主人公の動機や心理的な変化は、私の中ではありましが、それを表現する実力が不足していました。結果、「動機は明示されていないのに明らか」ではなく、「動機は明示されていなくて不明」という状態になってしまいました。
「これなら読者に分かってもらえるだろう」という認識の甘さを実感させられました。
これからも精進させて頂きます。
次に立ち上がるのなら、
今転ぶことは恥ではない。
代表作は次回作。
研究と実践を怠るな。
涙の数だけ強くなれるよ。
どれかを座右の銘にでもしとけ。(笑)
お忙しい中、添削ありがとうございました!
大岡さんのお陰で、いろいろと問題点が見えてきた気がします。
そのうちの一つとして、メアリースーについて気付いたことなんですが…。
僕は漫画を描いてネット上に公開していたりするのですが、
読者から人気を得るキャラクターは、決まって欠点まみれのキャラクターなんですよね。
逆に、しっかりしていたり、頭が良かったりするキャラクターは、あまり人気が無いんですよ。
今回の添削を受けるまで、「こんなに良い子なのに、不人気なのは何でかなあ…」と、
答えが分からずずっと悩んでいたのですよね。
むしろ良い子だからこそ、人気が無かったのに…(笑)
能力や立場など、境遇が良すぎるキャラクターは感情移入出来ませんよね。
添削ありがとうございました!
引き続きがんばってください!
それでは、失礼致します。
ケルベロス
「つまり、メアリースー的な『愛される』が泣けるのではなく『愛する』という行為が泣ける」
これだったんですね、確かに(納得)。
特に女性が陥りやすいメアリースー。
これからの私の主人公はバンバン愛するキャラになってもらいます!
って、”おまえー、やっぱわかってへんなー”という声が又々聞こえますが、、、、
お許しください。精進しますから。
これからも深いご指導をよろしくお願いします。