2016年04月10日

脚本添削SP2016-13第二部:ストーリーの構造

何度か出ている話、ストーリーの構造です。


外的問題、
すなわち離婚危機、
立てこもり犯逮捕と妻子救出、
ロッジへのショートカット、
および内的問題、
すなわち、ラリーの事故の克服。

これらを結合するのは、
「自分勝手にやったこと」という主人公の欠点。

それらを反省することが、
全てを解決するような構造になっています。


トラウマの克服、と大上段に構えてみたものの、
「事故ったコースを走る」という要素を削ったので、
似たような状況になることで、
過去の自分の反省をはじめる、
というドラマに読み替えています。
(雪原を越えるときの運転席での会話。
実は車の中は、密室劇と同じなんですよね。
アメリカ映画は、巧みに部屋の代わりに、
動く密室=車の中を利用して人間ドラマを作ります)

ということで、内的問題の解決はわりとあっさりしてます。
反省して、ごめんと謝りゃ済むからです。

実際にラリーカーに乗ればトラウマがフラッシュバックするかもだけど、
軽トラに乗りっぱなしなのでその試練もないようにしてます。

そもそも元原稿で、事故ったコースをもう一度行かなきゃいけないことと、
妻が立てこもり犯に捕まることが同時に起こるのは、
ご都合主義というものです。
ということで、一個要素を抜いて、
「近道をする」という障害ごえに、自然にしてみました。
(にしても、無理矢理展開ではあるけどね。
まあこれぐらいの無茶は、ドラマチックの範囲内かなあ…)


どこが難しかったかと言うと、
クライマックスを「夫婦の会話」にしなきゃいけないことです。
離婚危機が最大の問題なのだから、
話し合って解決しなきゃならない。
(少なくとも、謝る→許すという段取りが必要)

で、ただその会話を立ち話でしても面白くないので、
「主人公が芋を差し入れするという体で人質に取られる」
ことで、妻との会話になるようにしてます。

ついでに、石が割れるという豆知識を利用して、
作戦を練ってみました。
潜入捜査作戦だったというわけです。


夫婦問題も、本来なら協力することで乗り越えたかったのですが、
謝ることと、危険を省みず人質に取られたことで、
妻的には許した感じになってます。
鮮やかな解決(三人確定→突入!)があるから成立してるようなものです。

で、解決したことは、
家族の協力を絵で示しています。
ラストの石焼き芋コールのユニゾンで。
ここが決まったので、
なんとか書ける確信を得た次第。


これらの解決を決めた上で、
逆算で一幕を書いています。

事故シーンには既に「自分勝手に計画変更」を仕込んであります。
既に焼き芋屋になっていることからスタートして、
元ラリー屋であることを示したら、
即、離婚話へ繋いでいます。ここまで3分。
ドラマが動き出すには丁度いいタイミングでしょう。

この一幕を上手くセットアップさえ出来れば、
あとは上手くいくからです。

「実家へ帰った妻子が立てこもり犯の人質になっている」
というやや無理がある(元原稿からなのですが)
事件を、ラジオ、テレビと二回見せることで信憑性をあげています。
ちょっとしたテクニックかな。

おやっさんとのバディにすることで、
説明がスムーズになっていることに注意しておきましょう。
説明シーンを上手くやるコツは、
「知らない人に説明する」ことです。

これは二幕の、長い運転席での会話でも生かされています。


これだけ濃い話でも、
実に14分と2行におさめてるのが我ながら凄いかなと。

実際は雪原越えや、ロッジへの特殊部隊突入などのアクションがあるだろうから、
15分かかりますかね。
これを撮影稿にするんなら、
中盤を何か1エピソード足すかもです。
(雪原では見えない所に穴があって、
それは地図からでは分からないとか、
雪原ラリードライバーならではの話とかかな。
石焼き芋屋としての話は十分あるので)



バラバラだった元原稿のエッセンスを、
最初からそうであったかのように、
最初からこれを書くためだったかのように、
思わせるのは、
全てのパーツに存在意義があるようになっていて、
全てが納得いく理屈で繋がっていて、
(一見)ご都合主義の部分がなく、
しかもテーマにちゃんと落ちているからです。

こうなるように、構造から作り変えたんですね。


実家へ帰る、スノボ行く、事故ったコース、立てこもり、
という4つの事象が重なってるのを、
実家と立てこもりだけにしたこと。
キャタピラーに交換して雪原を先導するように、
国道の大雪渋滞を作ったこと
(まあご都合なんですけどね)。
そもそも焼き芋屋であることから話をスタートさせたこと。
事故った原因こそが、妻との関係の原因でもあること。
立てこもり犯の逮捕のキーマンに主人公がなること。
ラストも軽トラ一台で帰り道を行くようにしたこと。

そしてそれらは全てが、「一人で勝手にやることを反省する」
という因果の糸で繋がるような構造になっています。


なかなか、こう改造することは難しい。
難易度の高いリライトだったと思います。
テーマに落ちるように構造から作り直しだったからです。

全然構造が変わってるのに、
それが元原稿から対して変わってないように「見える」のが、
実は一番凄いとこなんだよねえ。
風魔の実写化でもそこが凄いんだけど、
脚本家意外は気づかないのかもね。



さて次回は、
元原稿をもう一度見直し、
どこを落としたのかチェックしてみます。
posted by おおおかとしひこ at 01:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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