前記事で香盤の話が出てきたので、
ためしにプロが作る香盤をのっけてみる。
脚本添削スペシャル2016の脚本を例に、香盤をつくってみた。
香盤表.pdf
まずはリライト版の「ラリー・ザ・石焼き芋」から。
横軸に登場人物表、縦軸にシーンの柱を抜き書きする。
このときにシーンナンバーがつけられる。
(よく見る3-4などの表記は、第3シーン4カット目、などの略号だ)
ある意味主役の石焼き芋トラックの出番もつけておいたので、
美術部の車両担当はこれを見ながらスタンバイする筈だ。
右端には、特記事項を書く。
必要な小道具(大型車両)、用意するエキストラなどだ。
芋は沢山食べるだろうね。
脚本になかったが撮影しなければいけないのは、TVニュースだ。
スタジオを借り、キャスターをキャスティングしなければならない。
比較のために、
元原稿「石焼き芋ラリークロス」の香盤表もつくってみた(2ページ目)。
シーンが多く、たった二日に集約出来る話を、
何日にも渡って書かれている事が分かる。
特に夕方が二回あるのは、コストに直接跳ね返るだろうね。
ナイトシーンが多いのも、照明のコストを跳ね上げるだろう。
夜+吹雪のシーンは、スタッフの体力を削り、コストを跳ね上げる。
シーンの数が多い事は、シチュエーションが多くなり、
撮影日程が長くなり、スタンバイする事が多くなる。
つまりそれだけコストに反映するということでもある。
見た目をゴージャスにすることとコストは、トレードオフの関係だ。
短く出来るならそれにこした事はない。
そもそもビジュアルに左右されないドラマを作れば問題ない。
そしてそのドラマとは、脚本で作るものである。
さて本題。
香盤を見ながら、出会いと別れのストーリーラインを見ていこう。
香盤とストーリーライン.pdf
ドライバーとサトル:ここだけしか出ないので、単なるコンビ設定。
サトルとノリさん:最初からコンビ設定。
妻とサトル:初出で別れる。最後に元鞘。
つまりこれは、「別れてから再びくっつくまでの話」である。
あとは比較的シンプルな出会いと別れのラインである。
特筆すべきは、最後にラリーという再集結を絵として表現していることだろう。
またついでに、
第一第二ターニングポイントと、
センタークエスチョンについても書いてみた。
どちらにおいてもセンタークエスチョンが問われている、
しっかりした三幕構成である。
(尺バランスも、5:5:4とバランスがいい)
元原稿と比較してみよう。
元原稿では、サトルとノリさんは「出会う」ところから始まっている。
この出会いを僕はカットしたわけだ。
何故なら、この出会いはセンタークエスチョンに寄与しないからだ。
あってもなくてもどうでもいいからだ。
あとは好みだけど、短くするため、つまりは他をじっくり描く為に、
僕はカットを選んだ。
妻とのことが、行って来いになっている。
別れからはじまり、何故かそれは許され、
スノボに出かけ、救出して再会する。
そこにドラマが存在しない。
元原稿の大事にしている部分は、
どうやら「トラウマの克服」のようなのだが、
それは彼の中だけで決着がついたらしく、
我々観客はおいてけぼりである。
(内的葛藤はカメラで撮影出来ない。
撮影出来るのは、二人以上の喧嘩である。これをコンフリクトという)
一応グループハグで元鞘を表現したつもりなのだろうが、
気持ちが乗らない。
それは全て、妻のドラマがないからである。
センタークエスチョンが曖昧だ。
離婚取り消しか?
仕事を得る事か?
妻の救出か?
トラウマ克服か?
そのどれもが等価になってしまったため、
構成がぐだぐだで、リズムが悪かったように思う。
こういう欠点を、全体を俯瞰してセルフチェックする用に、
香盤表をつくってみるのは、
脚本家にとっては有用かも知れない。
2016年04月19日
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