2016年04月26日

過去にすがる話は現在が弱い

ファイアパンチ第二話。


腕パンマン(アンパンマンリアル版)の、
過去を詰めてきたのはよしとしよう。
ディテールはなかなかであった。

しかし本題に入れるのはいつのことやら。


過去に秘密やトラウマがある話は、
現在が弱くなる。

今が「過去の克服」になるから、
過去の方が今より大事になってしまう。


たとえば北斗の拳では、
過去にラオウとトキの因縁があったが、
素晴らしかったのは、「激流を制するは静水」であった。

今現在進んでいることのほうが、
何よりもだいじだ。
震災で失われたものより、
これからどう復興するかがだいじなのと同じくらいに。


バックストーリーに身が入りすぎると、
スターウォーズのEp1-3みたいな誤りを犯すことになる。
この商売的成功によって、
ゼロ系エピソードが量産され、
脚本の進歩が十年停滞したような気がする。
(結局ゼロ系は、価値あるテーマが存在しない。
出落ち落ちで、過去に議論した)

もっと間違えた例は、糞実写ガッチャマンである。
これは、バックストーリーに飲み込まれ現在を忘れた、
反面教師として教科書レベルのつまらなさだ。
(しかも過去話もつまらないという二重ダメ構造!)



さて、この物語は、
現在を過去より面白く出来るのか?

大過去の凄惨さよりも、中過去の凄惨さが凄まじいため、
一見過去を現在が越えたような傑作に、
「ベルセルク」がある。
ガッツの幼少時代の虐待の大過去を、
鷹の団と蝕の、中過去の凄まじさが越えた。
ゾッドやドクロの騎士、狂戦士の甲冑など、
部分で素晴らしいものはあるが、
現在がその過去よりイマイチ面白くないという欠点が、
そろそろ露呈しはじめている。
(あの海賊船のエピソード、必要だったかなあ?
ガニシュカ戦は面白かったが)


まだ、ファイアパンチは、現在の事件の面白さはひとつも出ていない。
さあ、面白い現在を持ってきてみろ。

それが過去話より面白くない場合、
現在よりもフラッシュバックが多くなる、
過去と現在の同時進行漫画になる恐れがあるね。

あるいは、ここまで過去に関係性を埋め込むのなら、
妹再生イベントが最終回付近でありそうだ。
(あるいはそれが最終目標というセンタークエスチョンになるかも)


漫画は難しいね。

ベルセルクは、明らかに当初より引き伸ばして、
今悩んでると思う。
キャスカの足手まといを、
ガキやらファルネーゼやら魔女っこで、
かわしてるつもりだろうけど、
そこが旧鷹の団より面白くないんだよなあ。
いまだにピピンを越えてないと思うよ。

つまり、漫画は、全体が見えないまま、
現在を発展させなきゃいけない宿命にある。

たとえばファイアパンチは全十話、
と決まっていたら、
この1、2話はよく練られた冒頭だと思うけど、
100話だとしたら、
もっと現在の事件と焦点を立ち上げたほうがいいと感じた。

ベルセルクぐらい息の長い話にでもなれば、
杞憂に終わるかも知れないが。


そういえば、
「進撃の巨人」は、
世界の謎を最初から大きく取って、
徐々にベールを剥がしていく方式だね。
RPGっぽさが面白かったんだが、
長期化することで、
過去の方が現在よりも重要になってしまい、
現在の人間関係があまり面白くなくなってしまった。

ハガレンやうしとらは、
過去よりも現在が面白かったので、
ガンガン前に進んだ感じがする。

ワンピースもはじめの10巻ぐらいまでしか読んでないが、
過去がシャンクスだけだったので、
ガンガン前に進む感じが面白かった。
(その後トーンダウンして脱落)


お話に重要なのは、前にガンガン進む感じ。

過去の鎖に引っ張られて、それを断ち切る話は、
前にガンガン進む話より弱いと思う。


過去の鎖に引っ張られてそれを断ち切る形式なのに、
物凄く前向きに見える話に、
傑作「バタフライエフェクト」がある。
(2以降は無視すること)

改編できない過去を改編するとしたら、
と、過去への行動を許した作品だ。


結局、物語というのは、
とある状況に対して、
「自分から操作できること」を楽しむものなのである。
過去は操作できないから、物語ではないのだ。
どんなに苛烈でもね。


過去にすがる話は、現在が弱い。
それは、人生と同じかも知れない。
過去は現在の基盤ではあるのだが。
posted by おおおかとしひこ at 11:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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