「演技 本気でするのか 本気のように見せるのか」
というキーワード検索で来た人がいた。
根本的な問いで面白いので、議論しよう。
僕は、演技は本気でやるものだと思っている。
殆どは嘘でもいいが、
一番大事なところは本気であるべきだと。
嘘をつくコツは、少しだけ真実を混ぜることだ。
この真実味によって、他も真実に見えてくるからである。
だから、演技は本気を含むべきである。
で、どこを本気でやり、
どこを本気でやらなくてもなんとかなるかを判断するのが、
役者の「解釈」というやつである。
本気の順番や主従をつけるのは、
監督や役者の、物語の解釈次第である。
さて。
だからといって、リアルにある本気をそのままやったとしても、
映画の演技として正しい訳ではない。
分かりやすく、泣く演技を例にとろう。
本気で泣いて、鼻水が出た。
これは本気だからOKか?
それはそうとは限らない。
鼻水を出して引いてしまう場面ならばNGであり、
鼻水を出すほどの乱れっぷりがストーリーに的確ならばOKだ。
「雷桜」という映画で、蒼井優が鼻水出して泣くシーンがある。
本気が伝わってきていいのだが、
あの場面では鼻水はいらなかったと思う。
僕ならテイク2を要求したと思う。
その人が本気だとしても、
見るがわに分かりにくい本気や、
見るがわが誤解する本気や、
見るがわが別のことを考えてしまう本気は、
演技ではない。
分かりやすく、誤解させず、出来れば想像が膨らむようなのが、
いい演技だ。
つまり、そのようにコントロールされなければならない。
コントロールされているが、だからといって嘘ではない。
コントロールされた本気でなければ、
分かりやすく、誤解がなく、なおかつ人を引き付ける演技は出来ないと思う。
この、コントロールされた本気が出来るかどうかが、
演技が出来るかどうかの境目になると僕は考えている。
例えば撮影には、フレームの端があり、見切れがある。
光のいいところと悪いところがある。
フォーカスのいいところと悪いところがある。
マイクの範囲だってある。
相手とのタイミングも合わせなきゃならない。
本気で言うときに、説明台詞を噛まずに言うことも難しい。
それらを理解しながら、コントロールしながら、
本気を出していくのが、カメラの前の演技というものだ。
ということで、
「演技 本気でするのか 本気のように見せるのか」
という問いに関しては、
本気に見えるように、かつ本気で、
というのが答えになると思う。
2016年04月30日
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