2016年05月03日

スーパー初心者講座6:手書きの重要性

さらに追記。
僕は常に手書きで書くことを推奨している。
デジタル時代でも、基本は手で作ること。

特に脚本づくりの基礎なんて、アナログ時代に完成している。


手書きで書くと何が強いのか。
手と頭を連動させることができる。

タイピングでも出来ないことはないが、
手書きのほうが速い。

タイピング一級より、僕は手書きのほうが速い。
一級以上のプロタイピストでない限り、
手書きのほうが速い。
(僕は漢字変換で候補を選ばなければならないのが、
思考のノイズになると考える。
実際、プロタイピストが使う漢字変換ソフトは、
候補の順番が常に決まっていて、三回スペース押せばこれ、
みたいに決まっているらしい。
つまり、頭を介さず手で覚えることに変わりがないのだ)


また、手書きのいいところは、
いかようにでもレイアウト出来ることだ。

僕は中性のボールペン書きを愛用している。
挿入や削除は汚いながらオールフリーで、
削除のアンドゥも可能だからだ。
(削除は大きく×をつけるだけにしておいて、
やっぱ復活とか書いとけばいい)
矢印で結んだり、丸書いたり下線引いたり、
とにかく思考を発散させられるのは、手書きならである。

これでぐちゃぐちゃになってしまう?
上等だ。実はここからが手書きの凄いところだ。
手書きは、「清書を何度かする」ことが前提なのである。

ぐちゃぐちゃになるまで思考したら、
一晩寝よう。
次の日、「前の原稿を見ずに」、
いきなり白紙に書き出してみよう。
驚くほど物事が整理されているはずだ。

恐らくだが、寝てる間にディテールが整理され、
本質的な構造だけが残るように、
記憶が圧縮されているのである。

これは原理的にはタイピングでも同じか?
手書きの、フリーレイアウトの感じが、
記憶の整理に役立っていると感じる。
これは僕の経験則だ。
左下には何があったとか、真ん中上にあったこととか、
右に書いたこととか、場所と内容の記憶が連動しやすい。
で、窮屈だったことが、なんとなく整理されて出てくるものである。

これは前の原稿を「一切見ない」のがコツである。
書き終えたあとに前の原稿を見て、忘れてたことを補完してもいいのだが、
忘れてたことは大抵本質的に重要でないことが多い。
逆に、それらを忘れる為に、清書を白紙にしてみるのである。

消ゴムを使わないのは、
前のものをとっておいて時折見返し、
失うには勿体ないのをサルベージするかどうか、
判断するためだ。


この方法論は、僕以外あまり聞いたことがないので、
どうやら僕独自のやり方かも知れないが、
会社入社当時、1997年ぐらいには、
わりと普通のやり方だったような気もする。
万年筆を使うプランナーとか、沢山見た。
(僕はデジタル打ちがシナリオを詰まらなくさせていると
訝っている。たとえばタイピングだと、
プロっぽく仕上がったような錯覚に陥りやすい。
シナリオは内容だ。体裁ではない。
血の滲むような結晶を作らなければならないのに、
タイピングの美しい文字で出来た気になってしまうか、
綺麗だからこれでいいじゃんと逃げを打ちたくなるのだ。
シナリオは体裁ではない。内容だ)



以下、オススメの文房具。

A4の白紙、大量。(コピー紙でよい)
それを入れるクリアファイル、大量。

これを大量に、書いては新たに別紙に書くうちに、
いつの間にか洗練が進むのである。
クリアファイルは順番入れ換えに都合がいい。
(ルーズリーフだと、一枚取り出して考えるのが億劫になる)

僕はメモレベルで5、6回清書し、
プロットレベルで数回清書してから、
本編執筆に挑む。
本編は一度手書き、あとはタイピング。
印刷して「メモを取らずに」一気読み、
そのあと手書きで直していく。
必要とあらば、手書きのメモ段階から作り直したりする。

一発目から、洗練された素晴らしい原稿など書けるわけがない。
その前提で、何度も何度も作り直すことが基本だ。
(直したところと直してないところが分かるのもいい)

その感じに、手書きはとても相性がいい。


タイピングをする人は、字が汚いという欠点を持つ人が多い。
それでも手書きを続ける方がいい。
そのうち自分なりの崩し字とかしはじめて、スピード自体は速くなる。
書道を習うのも長期的に見ていいかもね。
日本語の成り立ちから勉強できるし。
今さら僕は暇があれば書道をやりたいと思っていたりする。

ちなみに、
僕は、手書き>短時間ならフリック+予測変換>タイピング>長時間フリック
のようである。
(ちなみにこのブログは、ほとんどスマホのフリックで書いている)

ただ、シナリオフォーマットに整形するとなると、
フリックよりタイピングがまさる。記号が弱いからである。
10分で書ける文字数を、何かの原稿で計っておくのも結構オススメだ。
(ポメラを買うかどうか凄く迷ったのだが、
結局大量の文章を打つならパソコン、
最初に大量に書くなら手書き、という住み分けになった)

初心者には、原稿用紙をオススメしている。
言うまでもなく、
脚本1分は原稿用紙1枚に相当するフォーマットで書くからである。

これを体で覚えるのは、手書きが一番速い。
僕はもはや白紙に書くのだが、
15分程度なら体が覚えていて、
大体これぐらいかな、というのが目分量で分かるようになっている。
(脚本添削スペシャルの、どのリライト版も、
白紙で書いたらほぼ15分に来ている)

こういう目分量が育たないのも、タイピングの欠点のような気がする。
体で覚えるというのはそういうことだ。
さらに慣れると、そろそろ○○タイムだな、
と腹時計で分かるようになる。
(第一ターニングポイントとか、脚本的に重要なポイント)
タイピングだとこうはいかないと思う。



さて、ここまで長文で主張しても、
まだ手書きで原稿用紙を使わない諸君。
これは強制だと思ってくれ。
5分の三題話、全部手書きで原稿用紙で書いてくれ。
100本ノックも同じくだ。
そんぐらいやれば、二十年、使える手が出来るから。

タイピングって、キーボードやOSの寿命考えると、
5年から8年のスパンだと思うんだ。
posted by おおおかとしひこ at 10:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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