2016年05月05日

正しいタイトルの機能

まとめてみる。


1. キャッチーであること。
2. オリジナリティーがあること。
3. どんな感じか想像がつくが、完全にバレバレではないこと。
4. 1-3の要件を満たしているのに、実は本質への伏線

ということになる。
これは難しくて当然だ。

だから全ての要件を満たさない、
いわば中途半端なタイトルがつけられがちなのだ。

邦題「ゼログラビティ」は、1、3程度を満たす。
本質を欠いている。
原題「グラビティ」は、2、4を満たす。
オリジナリティーはあるがキャッチーさに欠ける。
(だから原題と邦題が真逆の機能を持っている、
という印象になる。互いを補完する役割なのである)

酷評した「オデッセイ」は1△(ホンダのオデッセイと被る)、
4×(一人の漂泊だけでなく、チームワークも含むため)
という、不合格タイトルなのだ。


また、「(修飾語つきの)主人公名」タイトルは、
1、2、4を満たすときにヒットする。
「ロッキー」(岩のような意思の男)、
「風の谷のナウシカ」(なんか素敵な舞台と、異国情緒溢れる王女の名)
など。
逆に、「ボーン・アイデンティティー(邦題)」
「ジェイソン・ボーン(原題)」は、不合格なタイトルだ。
邦題のほうが本質を示そうとしてるだけ、
頑張ってる、といえる程度だね。

主人公の名前が本質を表さないと、
つまりは意味がないということだ。
ジェイソンもボーンも、「ありふれた名前」を意味するのなら、
本質的に意味があった。
日本語だと「鈴木一郎」とか「名無しさん」?

だから、たとえば「ゾディアック」なんてのは情報量がゼロで、
タイトルとしては最低なのである。
(黄道十二宮を指す言葉。これを知ってる人は少ないだろう。
連続殺人鬼が自称したため、ゾディアック事件と呼ばれる。
これを題材にした映画だ。
ちなみにネタバレするけど、未解決事件だ)

意外と「ランボー」はいい。
乱暴な男、というのを英語風にかっこよく言っているからだ。
(実際、原題first bloodよりもこっちが知られて、
2以降の原題に逆輸入されたのは有名だ。
ちなみにdraw first bloodというボクシングスラングで、
先に仕掛ける(最初に流血させる)という意味だそうだ。
ベトナム戦争はどちらが仕掛けたのか、
という4の本質的なタイトルだったのね)

スーパーヒーローものは、バットマンなど、
本質を示す名を使うので、4の機能を備えやすい。
ダークナイトも、極めてそれをわかってつけたタイトルだ。


「死刑台のエレベーター」「郵便配達は二度ベルを鳴らす」
「欲望という名の電車」「ゴドーを待ちながら」なんてのは、
4が欠けているため、
見る前の期待のほうが高く、ガッカリすることうけあいだ。


最悪タイトルの一本「情婦」は、
1○(エロ映画っぽくていいぞ)
2×(ありそうなタイトル)
3×(きっと許されぬ恋が…って法廷劇やんけ!)
4×(全く本質とずれている)
と、売りたいだけのタイトル、ということになる。

「アパートの鍵、貸します」は、
1○(秘密っぽい感じ、軽妙な感じ)
2○(オリジナリティー溢れる設定。自室を上司の浮気用に貸す話)
3○(鍵や秘密の話は、その暴露との戦いだ)
4○(その鍵は、最終的に誰のものになるかを考えれば、本質を示している)
という、理想のタイトルだと思う。

これは、そもそも面白くてオリジナリティー溢れる物語と、
不可分に噛み合っている。
こういうものを目指したいものだ。



「てんぐ探偵」は、まあまあのタイトルではないでしょうか。
「火の剣の少年シンイチ」とかじゃ、キャッチーさが足りないし、
「天狗面の少年」じゃ本質をとらえきれてない。
本質を示すなら「天狗カウンセラー」なのかもだが、それじゃあねえ。
サブタイなら、「静かな朝」「結婚の提案」「二十四人の俺」
「サッカーのにいちゃん」「夏祭りの記憶」「涙目は、炭酸のせいにした」
あたりが好きかな。


タイトルをつけることは、
「この物語をどう本質的にとらえ、
それをどのように受け入れてもらうか」
ということである。
100本ノック(プロットとか、三題話とか、5分シナリオとか)
をやって、タイトルを沢山つける経験をしよう。
posted by おおおかとしひこ at 09:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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