2016年05月10日

物語をはじめることの難しさ(ファイアパンチ1-4話批評)

静観していたファイアパンチ4話までで、
批評の楔を打っておく。
案の定、失速か。

物語を上手く滑らせはじめることの難しさを、痛感する。
何故上手くいかなかったのだろう。
僕は失敗は第一話にあると考える。


何故か?

第一話は、バックストーリーに当たるからである。

ファイアパンチのメインストーリーは、
「復讐の旅」であるはずだ。

その旅が転がり始めるまでに、
2-4話(と恐らくもう少しかかる)かけている。

仮に、アグニとサンの出会いから話を始めるとしよう。
とすると、北斗の拳のように、
コンビの出会いを第一話とし、
早くも2か3話で、最初の倒すべき敵が出てきたはずなのだ。
そうすれば、スムーズに「現在の」話が滑り出したはずである。

現在の話が、今のところない。
ぴょんぴょん銃の隊長はキャラが立っていないから雑魚モブだ。
たとえば北斗で言えば、スペードやハートに当たる中ボス?
が出てきていない。
しかも、サンと「出会った」とはまだ言えない。
「二人が心を交わしていない」からである。
アグニとサンが心を交わしてはじめてオープニング終わり、
二人の旅として、スペード的な敵を倒すのが、
物語の滑り出しというものだ。


異常なまでに、バックストーリーが多いことに気づかれただろうか。
1話はまるまる誕生譚のバックストーリー。
2話も半分回想。
3話はようやく「現在の話」がはじまった。
と思いきや、
4話でもサンの事情はバックストーリーとして回想で語られた。
この事情はアグニは現時点で知らないことに注意されたい。
普通ならサンが涙ながらに語り、
アグニが村人は優しいんだなと解釈し、
二人の心が触れあう瞬間があるはずである。

つまり、実質4話もかかって、
現在の話は1.5話ぶんしか進んでいないのである。
それは、
「サンとアグニが出会って砂糖の話をし、
寝てる隙にレイプされかかり、撃たれたが、平気で、
サンが電撃を出し、(何故か)雪崩になり、
アグニの炎で助かった」というストーリーである。
これ、面白いか?

面白ポイントは砂糖二回とぴょんぴょん?

第一話は「凄い」とか「面白い」とかになっている。
(僕は並だと思った。既視感に満ちていたからだ)
その第一話のインパクトと、
「現在の話」を比べたら、
現在が全然負けているではないか!



バックストーリーがいくら面白くても、
現在の話が面白くない限り、
ストーリーは決して面白くならない。

そして、
ストーリーの冒頭というのは、
バックストーリーではなく、
現在の話を始めなければならないのである。


つまり、ファイアパンチの第一話は、
サンとアグニの出会いと、
鉄の能力者とのバトルから始めるべきだったのだ。

しかしそれではモロ北斗になってしまうので、
ファイアパンチの現在の話の構造は、
本来見直されるべきだったのだ。



現在の話より、バックストーリーが面白くてはならない。
それでは、いつまで経っても面白くならないであろう。

ということで、ここで予言しておく。
ハート様のようなキャラの立った中ボスが出るまで、
この話は面白くならない。

次回、雪崩の中から隊長がなんらかの能力で立ち上がれば、
少しは盛り上がるかも知れない。


(が、4話を見る限り、
この作者はアクションシーンが致命的に書けないのではないか?

第1話の、炎で村を焼き払うところ、ファイアパンチで鉄の能力者を貫くところ、
今回の雪崩のシーンなどは、
書き込んでしかるべきアクションシーンなのに、
全部すっ飛ばしているのがとても気になる。
あえての省略ではなく、かけないんじゃね?
今回の、殴るシーンの下手くそなこと!
パンチが鍵になるんだから、ボクシング雑誌でも模写しろや!)



回想禁止は、ひとつの縛りプレイだ。
現在の話を面白くするための。

諸君は他山の石として、回想に頼るのをやめよう。


現段階では、バックストーリーのほうが力があるから、
それ絡みなら話が面白くなるだろう。
たとえば「妹を甦らせる方法の鍵をサンが握っている」とか、
「クシャナ殿下が再登場し、一戦交えるがけちょんけちょんに、
北の城にいつでも来いと言われ、修行の旅になる」などである。
そうなってはじめて、
「次どうなるんだ?」と、
読者の焦点は、過去ではなく、「この先」になるはずだ。
posted by おおおかとしひこ at 01:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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