時々見る「ストーリーの書き方bot」というツイッターに、
こういうのが引用されていた。
多くの人は、自分が客の立場であれば買わないものを、
作り手・売り手の立場に立ったときには「売れそう」と思ってしまう。
(山納洋)
出典: カフェという場のつくり方: 自分らしい起業のススメ
つまり、
受け手としての感性を生かせていないから、
という原因があるかもだ。
僕は雑誌「日経エンターテイメント」が大嫌いである。
とても表面的な「ヒットの分析」をしているからだ。
このヒットの分析が、
受け手として妥当かを考えればすぐわかる。
表面的なことで私たちは映画をいいと思ったりしない。
配役がいいとか、
旬な役者を使ってるとか、
流行りの題材を使っているとかではなく、
与えてくれる「独自の面白さ」とか、
与えてくれる満足を予想して、
我々は見るべき映画を選んでいるはずだ。
実写化なんて私たちは求めていない。
与えてくれる深い満足、
それはつまり面白いストーリーから導かれる、
テーマの素晴らしさに感銘を受けること、
を求めているのである。
それが第一であり、
世界観やキャラクター性やデザインなどの、
ガワの要素は、第二であるはずだ。
なのに。
送り手になった瞬間、
急に日和ってしまうのである。
本質的な面白さをないがしろにして、
ガワの要素で「受ける」「売れる」ことを優先してしまう。
それは、作り手としての未熟ではないかと思う。
要するに、受けないこと、売れないことが怖いのである。
だから、目の前にある保険に頼ってしまうのではないだろうか?
そういえば、日経エンターテイメントが発刊された時期は、
映画が製作委員会方式に傾いた時期と一致していると思う。
製作委員会方式とは、
映画会社が100%自社の資金で作るのではなく、
製作費を銀行やら他の会社から資金を投資という形で預かり、
回収させる仕組みのことだ。
映画会社が映画会社に投資するならばまだいいが、
グッズ制作会社(たとえばバンダイ)、
音楽会社(たとえば主題歌担当)、
メディアを持っているところ(テレビ、新聞)、
出演者の事務所(オスカーなど100%出資したケースもあった)、
銀行や大手会社の投資部門、
などが出てきてはたまったものではない。
彼らは熟練した「受け手」ではないからである。
だから日和る。
自分が受け手としては買わなそうなものを、
「受けそうだ」「売れそうだ」という理由だけで、
作ってしまう。
どれだけホンが良くても、
すぐに納得出来るガワの要素がないと、信用できない。
納得出来るガワの要素があれば、
ホンの出来は問わない。
これでは、
オリジナルな作品を作る優秀な脚本家は育たず、
駆逐され、
ガワの要素をうまく処理できる表面的な野郎が、
仕事を発注されるのは明らかだ。
製作委員会方式でない、映画の作り方はあるのだろうか。
制作費1億程度、PA(宣伝費)も同程度、
2億でつくって2.5億回収(1800円×14万人動員)、
なんてビジネスモデルは何故死んだのだろう?
単館系で公開される、そういうのを見てた人が、
映画館へ行かずに、単価の安いネットやレンタルへ、
行ってしまったからだろうか。
良質な作品を作る場がなければ、
良質な脚本は生まれない。
製作委員会方式では、
脚本を読める人たちが決定しないから、
原作でそこを担保する。
こうして原作つきしか映画化されなくなり、
そうでない作品を作る機会はなかなか訪れない。
単館系映画の象徴、渋谷シネマライズは潰れた。
映画の制作費は、どうやったって1億はかかる。
機材費より人件費である。
ちゃんとしたカメラでちゃんとした絵にしたければ、
2億は見たい。
それを、1800円×10から20万人ペイする仕組み、
定期的に回転する仕組みを作らない限り、
新たなオリジナル脚本映画の火は灯せないかもしれない。
東宝やらがアホみたいに地方にシネコンを作ってしまったが、
1スクリーンはそういう枠を作らないと、
映画館自体がダメになっていく可能性が高いと思う。
だって今シネコンに見たいものがかかってる?
見てみたら面白かった、て満足度が、
開館当初より減ってないかね?
ネットの世界では、1000人から1万人集めるのは簡単だが、
10万人規模以上はなかなか難しい。
リアル世界ベースの知名度のコピペ分布を極端に増幅するだけである。
さて、新たな興業主はどこにいるのだろう。
脚本を読める、興業主がいい。
詰まらない脚本は却下できて、素晴らしい脚本は絶賛できて、
中途半端な脚本を直すアドバイスが出来る人がいい。
脚本家なら色んな所で腐っている。
昔のATGのような、監督や脚本家の集合体で、
興業主を兼ねられるのがベストなのだがね。
監督や脚本家は、ビジネスマンが出来ないからそっちに行ったんだがねえ。
せめて、今の製作委員会方式でも、
名作映画100本の脚本を読ませた上で、
新作の脚本で議論できるような、
教育を施す人が生まれてもいいんじゃないかなあ。
どんなビジネスも、本気でそれがいいと思って作ってないものは、
売れないよね。
今の脚本軽視の映画は、売れると思って作ってるだけで、
本気で面白いと思ってないよな。
個人的には、
ここ数年、本気で面白いと思って作ってるCMもないです。
仕事だからやってるだけで、作らなくていいなら作らない。
それが苦しくて、小説を書いたりしている。
経済原理が文学を駆逐したから、
とまとめてみる。
文学は儲からない。中抜きしたショウが儲かる。
2016年05月15日
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