現実ではとても難しい。
何をどれだけ期待されるか把握することは、
勘みたいなものがいる。
失敗した記者会見は、期待を読みきれなかったことによるものだと考えると、
いかに期待を読みきることは難しいか分かるというものだ。
ところが、物語においては簡単だ。
焦点への誘導こそが、
物語のほとんど表面上やる全てのことだからだ。
ファイアパンチが何故ここまで詰まらないかというと、
焦点を誘導しきれていない下手さがあるからである。
焦点を設定するには簡単だ。
疑問や謎を出せばよい。
それが衝撃的で、強い謎であればあるほど、
誘導はうまくいく。
その謎を知りたい、という願望を生み出せるのである。
ファイアパンチの6話までは、
強烈な謎を沢山提供した。
しかしながら、うまく解決した謎はひとつもない。
「謎を出して、解決させてスッキリさせる。
ところが、解決したことで余計謎が増える」
が理想の連鎖である。
たとえばサンがレイプされかかった、
を焦点としておきながら、
アグニが助けるでもなく雪崩でうやむやになってしまった。
妹にソックリな女が出てきながら、
その正体はスルーでうやむやだ。
解決しない謎だらけで、もういいや、と飽きてしまうのである。
普通は、
サンはアグニに守られるのか?→見事守った!
妹に似た女が?→実は生きていた!/ソックリなだけだった!
などのように、
焦点(謎)をふったらそれを解決すべきである。
それがひとつもスッキリしないから、
ただ振り回されているような感覚になるのだ。
それは、いずれついていけなくなり、
作者の独りよがりにしか見えなくなる。
ついていけないというのは、その先に興味を失うということである。
謎の解決は、それなりにカタルシスのある山場、見せ場が訪れるものだ。
従って前記事の内容を、いま、裏から議論していることになる。
前ふったことは解消しよう。
それは、期待に答えることだ。
期待に答える人を、人は応援するもの。
期待に答えたくせに、なお新しい謎をふり、
次にもっと引き付けていくのが、
ストーリーを紡ぐという行為である。
ファイアパンチの作者は、それが出来ていない。
謎を出しては肩透かししすぎ、
いつまでたってもストーリーの歯車が始動しない。
目の前で何かが起こっているのに、
解決しないことだらけの展開で、
イライラするだけで、
どんどんこの作者への信頼が下がって行くのみだ。
つまりは、それは詰まらないと言われることなのである。
(穿った見方をすれば、作者は期待をわざと外すことを、
中二病的にカッコイイと思ってやってるかも知れない。
それは、期待にうまく答える実力がないことを隠す手段の可能性がある)
期待させることと、期待に答えることはペアである。
これを繰り返して、ストーリーは面白くなって行く。
あなたは、それを使えるようになってほしい。
2016年05月24日
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解決せず伏線として残しておく謎の数は、
大体いくつくらいまでが人間の興味を損なわないのでしょうか?
自分的には大岡監督の
人は「ひとつ、ふたつ、いっぱい」
までしか覚えられない持論が腑に落ちたので
だいたい2〜3くらいまでに留めておくのが
いいのかな…と感じております。
あるいは、謎の数よりも
「謎が見る人に提供されてから解決されるまでの時間」
のほうに目を向けるべきでしょうか?
うまい焦点の誘導方法のやり方について
大岡監督のご意見を聞かせて頂けると幸いです。
自分の無意識に聞くのが適当です。
(ずれて間違った感覚を持たないために、沢山見るのです)
すごい興味を持てれば一個でも持つ
(たとえばジュラシックパークは、
「恐竜から逃げる」の一点押しでした。
恐竜というものがはじめて映像で可能になったから。
CGがポピュラーになった続編以降は、
この一点押しではキツかった)。
まあまあなら2、3個かも。
どうでもいいなら何個あろうがどうでもいい。
強弱、火急度合いは色々あったほうがいいでしょうね。
「スパイ事件の解決」というセンタークエスチョンに対して、
「崖から落とされそうになる」(果たして助かるのか?)
なんて展開はいくらでもあるものです。
「しかしその瞬間、崖の隣で小便しているガキがいて、風にのって小便がやって来る」が増えるかも知れません。
面白く、緊張や興味が保てれば、連鎖を組む(風が吹けば桶屋が儲かる的な)ことも全然可能です。
自作ですが、ドラマ風魔12話のストーリーラインの複雑さは、
かなり多いですが滅茶苦茶楽しんで見れますよね。
面白ければ、人は必死で理解してついてくるものです。
時々、今何が問題なのか、整理する場面があると更にお得。
複雑なミステリー、
たとえば「ドラゴンタトゥーの女」は退屈なのに、その元映画「ミレニアム」は全然面白い。
その違いを研究すると、何かわかるかも。
(元映画は焦点を謎解きと恋愛のみに絞っていて、リメイクはどぎつさに焦点がぶれてると予測。
ラストのキュートさも、焦点の絞り方で違うかと)
数とか解決にかかる時間とかよりも
謎そのものの面白さという
本質的なことを見落としておりました。
また強弱、火急度合や問題理場面についても
あまり今まで意識が回ってなかったので
そのあたりを強く意識しながら
映画を見てみようと思います。
質問に答えて頂き、
どうもありがとうございました。