2016年05月30日

目的のなさ(ファイアパンチのストーリーが何故詰まらないか)

7話でまたエグいことをしてきた今週のファイアパンチ。
しかし、衝撃の度合いを上げたとしても、
我々は最早ストーリーの行方には興味を失っている。

早く終わってもいいよ、エログロのネタが切れたらね。
つまり、ストーリーへの興味はなく、
そのエログロしか最早期待すべきものはない。

何故ファイアパンチのストーリーは、
2話以降詰まらないのか?
目的がないからや。


アグニの目的がないのだ。

いや、大枠の目的はある。「ドマへの復讐」だ。
これは1話にてセットアップされた、センタークエスチョンである。

だが、2話以降の具体的ストーリーにおいて、
具体的目的がないのが、
この話を詰まらなくさせている原因だ。

たとえば、
「ドマは○○の街にいる、という情報を得ていて、
その為にはこの橋を渡らなければならない」とか、
「その為には橋の上にいるチンピラを倒さなければならない」とか、
「チンピラを倒すためには、人質を解放しなければならない」とか、
「人質を解放するには、鍵を手に入れなければならない」などの、
小目標の連鎖が必要だ。
これを焦点という。

今、何がストーリーの一番表面で問題か、
のことである。
これが解決するかどうか、という焦点で、
人はストーリーを楽しむ。

「はじめてのおつかい」と同じだ。
最終目的Aを達するには、Bをしなければならず、
その為にはCをしなければならない。
ところが、Cをしようとしたら、Dのアクシデントが起きた。
Dをクリアしながら、CBAを順にクリアする為の、
準備をしなければならない、
そして実はDがAの伏線だったのだ…!
などのようにして、
お話というものは進むものだ。


勿論、その小目標は、主人公だけが持つのではない。
メインキャラ全員が持つ。
その目標が矛盾するからこそ、人は争うのである。

つまり、ファイアパンチでは、
アグニ、ユダ、サン、ドマ(まだ未登場なので現状なくてよいが)
のメインキャラに、小目標がなければならないのである。

ちなみに、他のキャラの小目標は、
今のところ全員「性欲」だ。
これがエログロ漫画、という印象の原因である。

アグニは大目標「ドマを殺すため」に、
小目標の何をしているのか?不明。

サンの目標は?
(小目標は、アグニ様にもう一度会うこと?
子供だから大目標はなくてもよいかも)

ユダの小目標は?
(何故アグニを捕獲したのか、その意図は、
まだ明かされず我々は不満を募らせている)


ちなみに、
何故その小目標の連鎖に、
我々は興味を持ち続けられるのか?
感情移入によってである。

「はじめてのおつかい」では、
我々が子供の頃の、周りが全部怖く見えたことを、
上手く思い出させるようにしている。
だから子供頑張れと思うし、
泣いたら「分かるよ」と思うし、
涙を拭いて頑張る様に「そうだ!」と思う。
そうなるように、私たちは感情移入をコントロールされている。

しかるに、アグニへの感情移入は、
1話でしたものが、
2や3話で薄まっている。

小目標という焦点も見えないし、
新たな「現在の」エピソードが足されていないからである。

サンとの出会いで、その新しい感情移入挿話を書かなければならなかったが、
よくわからない雪崩スルーで、
私たちは「今以上アグニの内面を知ること」のチャンスを失った。


誰も小目標を持たず、
性欲魔神から逃げているだけの話。

それが現状のファイアパンチのストーリーである。


普通なら、
小目標の実現を前におき、
性欲魔神から逃げることを後ろにおく。

後ろから迫られるけど、前には何もない。
この不透明さが、
ファイアパンチのストーリーがぼんやりして見えないことなのだ。


これまでの流れからすると、
ストーリーテリングの基本が、
この作者は出来ていないと断定出来る。
鍛えて、別の漫画を見せてくれたまえ。



ファイアパンチ批評は終えたつもりだったが、
今日1-6話批評のアクセスが急にはねあがったので、
更に敵に塩を贈ってみた。

こんな詰まんない漫画見てる暇があったら、
ズートピアみろ!

世界観とキャラと設定だけで、人はついてこない。
人がその先を楽しみにするのは、ストーリーが面白いからだ。
彼我の差を、とくと味わうがよい!
posted by おおおかとしひこ at 13:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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