実験精神は、とても創作に歓迎されるべきことである。
「こういうことをしたら、面白くなるかも」
「こういうことをしたら、どうなるだろう(面白いかも)」
しかしあなたは、
「たしかに面白かった」という結果を出さなければならず、
「やってみたけどダメでした」という訳にはいかない。
正確にいうと、
結果を出さなければならないときに、
結果が出せないとダメだ。
ところで、
今、映画の興行は実験ではなく回収だ。
結果を出さなければならない。
だからみんな縮こまって、
実験精神を忘れてしまっている。
フロンティアスピリットとは、
実験精神のことである。
失敗すれば死ぬが、
成功したら新しいものを生むかも知れない性質のものだ。
あなたがまだアマチュアならば、
死ぬほど実験をしなさい。
思いつく限りの実験をしなさい。
いつでも24時間、実験をしなさい。
いろんなことを試して、試したことがないぐらいに、
実験をしなさい。
アマチュアのうちは、失敗が許される。
1%の成功と99%の失敗なんて、実験をしたことのない奴のコピーライティングだ。
1万回失敗して1回当たりを引けるかどうかじゃね?
実験精神の豊富な人は、
実験をしたことで、
「それがどういう原理で動いているか」を、
考える機会をもつ。
うわー失敗したー!
次これやってみよー!
また失敗ー!
ではなく、
うわー失敗したー!
なんでだ?
こういうことか。
じゃこうならうまくいくのでは?
失敗だ!
いや、ある部分は成功していて、この部分が失敗なのだ。
従って、こうすればよいのではないか?
あー半分失敗、半分成功。
じゃこうならうまくいくはずだ。
うむ、ほぼ成功。
しかし完成度をもっとあげるためには?
こうすれば行けるはず
…(以下ループ)
前者は、ただの愚か者である。
後者こそが、本当の実験精神である。
実験は、研究者のものであり、
あてもんギャンブラーのものではない。
実験とは、仮説に基づく検証であり、
再仮説を立て再検証する過程において、
モデルの理解を完全にしていくことをいう。
仮説の検証、反証、
モデルの修正や理解がない限り、
それは実験とは言わない。
アマチュアのうちに、
たくさん実験をしなさい。
失敗した経験があれば、
プロになっても、あてもんギャンブラーのバカな発言を止められる。
いや、こういう理由でそれは失敗しますと。
勿論、やってみないと分からないこともあるけど、
やる前に分かることもある。
どこまでが未知数でどこまでが既知であり、
予測される失敗は何回出来るかを見積り、
最悪の失敗でも損を見積り、
今そのギャンブルをやるべきかどうか判断するのが、
プロのギャンブラーである。
プロのギャンブラーになるのは、
ただ運を磨くのではない。
豊富な失敗の経験値から、判断できることを磨くのである。
実験精神を尊ぶ。
それは、それだけ成功に知性で近づくための方法論である。
ところで、
ラーメンズのコントは、
実験精神はあるのだが、
結果を回収してない気がする。
つまり、失敗した実験が多いと思った。
失敗した実験を反省して、
次の実験アイデアに生かしてないという気がした。
だから単発実験の集合体でしかなく、
そこに実験の意味など見いだせない。
いわば、ファッション実験である。
これが学生のコントならフロンティアスピリット最高ってなるけど、
プロの作品だと考えるなら、
失敗した実験ばかりの記録集に過ぎない。
出始めのラーメンズは新人だったから、
このような実験精神が尊ばれた。
なかなか再結成しないのは、
プロとして見られ、成功した実験しか求められていないからである。
(今度やるらしいね)
小林賢太郎戯曲集1-4を通し読みして見えてきた全体像は、
ラーメンズはファッション実験でしかなかった、
という悲しい事実であった。
笑いの実験なら、
松本人志やバカリズムのほうがまだやっている。
あなたは?
ストーリーに関する、全ての実験をしているかい?
新しいものは、その中からしか生まれないよ。
既知の組み合わせは、既知の組み合わせにしか見えないよ。
未熟な人の実験は、「何が起こるか分からない」だらけだが、
慣れた人の実験は、「ここまでは読めるがここからは未知数で、
こういう原理が予測される」という実験だ。
2016年06月02日
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