ストーリーには様々な要素があり、
それらは複雑に入り組んだものとして完成されている。
だから初心者は最初からそれを作れないし、
だから何本も習作を繰り返したほうがいい。
ところで、何本もやると分かるのだが、
シナリオには、
あとで足せるものと、
あとから足せないものがある。
(前者をガワ、後者を中身、という言い方で時々言う)
あとで足せるもの。
ちょっとした冗談。
イチャイチャすること。
本筋に関係ないインサート。
真面目なものを冗談風にする、
冗談風なものをシリアスにする、
などのテイストのある程度の変更。
ビジュアル要素の追加。
音楽要素の追加。
伏線の追加、削除。
ターニングポイント。
(A→Bと話が進んでいるところに、
A→C→BになるようにCを足せばよい。
だが、寄り道に見えて、無駄な時間稼ぎに見える危険は大きい)
あとで足せないもの。
ストーリーの根幹に関わる事実、台詞。
(やるなら構造ごとやらなければならない)
ストーリーの根幹に関わる登場人物。
動機。(小目的は足せる)
感情移入。
(小エピソードでどうにかなるのではなく、
根幹のストーリーラインからやり直す必要あり)
テーマ。
(一体これは何だったのか、という意味。
そもそもないものに付け焼き刃で足しても、
焼け石に水である)
どんでん返し。
(ミスリード段階からやり直せば出来るかも)
厄介なのは、
あとで足せないものを、
執筆途中に足すべきだと判明したときだ。
いつも困る。
経験則で言うなら、
これまで積み上げてきた全てのものに、
接ぎ木するやり方だと上手くいかない。
上手く接ぎ木しても、接ぎ木する前がおかしくなる。
ということで、
これまで書いてきたものを一端捨てて、
一から組み直したほうが、
良いものが出来る可能性が高い。
何度も言っているが、
色々と勘案したあとは、一端寝て全部忘れ、
白紙に向かって一から書き出すとよい。
(勇気がとてもいる)
邦画の脚本打ち合わせは、
プロフェッショナルばかりが同席することが滅多にない。
(特に製作委員会や、上司の意見などがそうだ)
なので、
一端出来上がってから、
あとで足せないものを足すことになったり、
あとで引けないものを引くことになったりして、
根本からやり直す時間が既になくて、
下手くそな接ぎ木状態の、グロテスクな構造になっているものが多い。
じゃあ作る前にそれらの根本要素だけで議論し、
コンセンサスを取れればいいのだが、
「出来上がってみないと判断できない」とのたまう糞素人のために、
一端叩き台を執筆しなければならなくなる。
で、叩き台だと思われて、
足せないものを足せという指示が出て、
以下繰り返しで、
脚本はダメになってゆくのである。
システムの問題と、
足せるものと足せないものを知らないという、
無知の問題があると思う。
ということで、どうにかして上手に解説できないか、
と僕は思っている。
自分のなかですら、
あとで足せるものと足せないものを判断するのは難しい。
しかし、沢山経験して、
知っておくことが望ましい。
初心者マークのプロの脚本家は、
ダメな直し指示を消化出来なくて、潰れていくような気がする。
(月9、酷いらしいね。
吃音の子が歌を歌う、という当初の話が、
途中で難病ものになったのだそうだ。なんでや。
だったら冒頭から、難病で吃音の子が、
から始めなければいかんよな?)
そうやって潰しておいて、「優秀な脚本家が現れない」
なんて言ってるPはバカだと思う。
2016年06月10日
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