ここのブログでは、映画脚本を想定して脚本論を展開している。
だから、完結した話を書くためにはどうすればいいか、
ということが中心のような気がする。
これに必要な才能と、
連載を続ける才能は、また別だと思う。
完結した話を作るのに必要なのは、
全体としてまとめる力である。
ふにゃふにゃの構造ではなく、しっかりした構造を作る力だ。
冒頭が結の係り結びになっていたり、
全体にとって不要な部分は排除されていたり、
重心を置くべきところはじっくりしっかり書き込んでいたり、
そうでないところは適度に省略したり、
などの、
全体として均整の取れたものを作る力だ。
三幕構成論も、それを実現するのに効率のいい方法である。
前提、展開、結論の三段構造で、
この作品が存在する意味、すなわちテーマを言うのである。
これは連載する能力とはまた異なると思う。
何故なら、連載は全体など見えないからである。
部分のチラ見せをして、
全体を想像させたり、
一旦想像させた全体を裏切ったりする、
キャバ嬢のような幻惑が重要な気がする。
勿論アドリブ力もだ。
後付け設定で前段をひっくり返す大胆不敵さや、
その場が面白ければよしという潔さも大事だろう。
コミックス1巻程度の構造的首尾一貫性さえ保てれば、
あとはどんどん変容していくのが、連載の面白さと言ってもよい。
だから、原理的に、連載は上手く完結しない。
変容こそが、連載の面白さになりうるからである。
勿論、「寄生獣」のような、計算され尽くしたものを、
部分的に披露していった、いわば切り出し型の連載形式もある。
僕が想定しているのは、車田正美のような、
「なにも考えずその場の勢いで押しきり、
あとで辻褄を合わせていき、
合わなくなったらまた勢いで仕切り直す」
というスタイルのことだ。
多分連載で面白いのはこういうパターンじゃないかなあ。
だから、
「リンかけ1巻の冒頭部、
継父の暴力に耐えかねて家出した貧乏姉弟の話は、
最後の剣崎との試合に関係ない」という批判は、
通用しないのである。
(むしろ、継父を再登場させて、母の死を弔っただけ、
きちんとしてるというものだ)
とはいえ、
「ずっとあったすげえグルーヴが、
尻窄みに終わり、なんだか意味不明な終わり方をした」
ガンツは、許されるものでもないと思う。
連載はどう終わればいいのか。
理想は、映画脚本のように、
最初から全体が出来ていたように、
全てがきちんと秩序に収まることではある。
しかし変容という要素がそれを阻む。
変容を上手く使いながら、
映画脚本のように完結するのが、
真の理想だがそこまではないものである。
北斗の拳ですら、修羅の国以降は蛇足だ。
キン肉マンも、王位争奪編はダメだった。
(新作のキン肉マンは読んでないが、
むしろ全盛期であると言われて、気になっている)
極端に言えば、
連載は最終巻までの稼ぎが大半だから、
連載を続ければ続けるほど儲かる。
つまり、アドリブの変容が持つ限り儲かる。
ネタが切れたりアドリブの切れがなくなったら終わり。
完結した話は、それ一本の完成形で勝負しなければならない。
だから完成度が重要なのである。
これを読んでいる人で、連載漫画家を目指している人は、
実はあまり参考にならないかも知れない。
脚本家という人種は、完結した話を、
生涯何本も何十本もモノにしていく仕事である。
2016年06月13日
この記事へのトラックバック
本当は全記事にコメントしたいのですが、それはそれでうざすぎるので自重します。
なんだか読んで、あああーーと納得してしまいました。
漫画、というとたいていの人は「長期連載もの」を想像するみたいですね。
そして「長期連載もの」こそが素晴らしい、勝ち組だと。
私は物語の中で一番好きなのが結びの部分でそれがなかなか来ない長期連載ものは苦手です。
一本の線となっていって読み終えた時に身も心も震えるような、そんな漫画を幼い頃「読切漫画」で体感しました。
その経験をしてしまったからか、長期連載ありきの商業ベースの漫画が向いていなかったのかあ、と。はたから見れば私はただの負け組なのですが。
大岡さんの話をなぜ面白いと思って読むのかがわかりました。
自分の中にたくさんの物語があって、それを完結させていきたい。
読切漫画家を目指している人にとってはとても有益です。
ただそんな職業はないに等しいのが現状です…残念。
大岡さんの作品拝読させて頂きますね。楽しみです。
前の記事で言っていた「新しく動き始めている…」というのは「てんぐ探偵」の事でしょうか。(すみません、なにぶん大岡さんの事は最近になって知りましたので…そう言った意味ではファイアパンチに感謝です)
果たしてどこの小説サイトだろうか…。
全文コメント返しもしんどいので、自重していただくと助かります。(笑)
漫画でいうと、僕は「ブラックジャック」が大好きなのです。
理想的な一話完結型というか。
長期連載ではなく、そういう商業ベースもあり得ると思いますよ。
月刊ペースならなんとかなりそうな気が。
あるいはワンピースだって、仲間一人集めるのを一本の映画、
みたいに考えて描いてると思うんです。
それを連続したシリーズのような。
僕は昔の刑事ドラマとかの一話完結もののドラマが、
連続ものより好きだったのかも知れないです。
テレビはそういう捨てる前提のものを流してたから面白かったのかもなあ。
今は残る前提で作ってる。
自主制作はいくつか平行して走らせています。
仕事の合間を縫いながらなので、なかなか軌道に乗りませぬ。
今は自分で発表できる時代だし、ちょっと勝手にやってみようと思っています。