リクエストにお応えして、てんぐ探偵のイラストの出来るまでを眺めながら、
幹と枝葉について語りましょう。
まず下書きをします。
その前にコンセプトを考えるわけです。
てんぐ探偵のテーマはなんだろう。
「闇にかざすのは、炎だ。」「心の闇を浄火せよ。」
なんてキャッチコピーを昔書きました。
つまり、闇と炎をモチーフにした、
人の心の暗部と、人の心の明るい部分(最終回で示されたように、
それは人の理性や知恵や勇気を、炎で象徴)の相克です。
闇と炎は、それぞれの象徴なわけです。
炎で闇を切り裂く。
火の剣で妖怪「心の闇」を切り裂く。
てんぐ探偵が、火の剣で、
妖怪「心の闇」たち(それは単体ではなく、複数いること。
人の心の暗部は沢山あり、それぞれが各話の妖怪として、
一話完結であることを示す)を切り裂く。
そういうイメージが湧いてきます。
今回は、作品のテーマが既に確定しているので迷いませんでした。
ここでテーマが明確でないと、絵の芯がぶれます。
ところでてんぐ探偵は、
天狗面を被ってるほうがいいか、シンイチの顔が見えてた方がいいか。
悩んだ末、ちょっと仮面をずらして顔をのぞかせている、
という意味ありげなやつを選択しました。
仮面を被ったヒーローではただの天狗仮面だし、
シンイチ単品では「てんぐ探偵」というキャッチーさが生かせない。
ということで、いいとこどりを狙っています。
正面性ということを考えると、
シンイチが正面を向き、こちらに切るのがいいでしょう。
意味が固まった所で、下書きをしてみることに。
最初に描いたのがこれ。
天狗面に炎のオレンジが反射してる感じは、既にこの頃からあります。
描いてる途中に、ねじる力やつらぬく力、
葉団扇や千里眼、一本高下駄などの、「天狗の力」を入れたほうがいいかも、
と思いはじめ書き込んでみる。
しかし、どうにもごちゃごちゃして、中心が分からなくなったので、
闇、シンイチ、炎、天狗面、心の闇(おまけでネムカケ)と、
モチーフを絞ることにしました。
「闇に浮かぶ炎」というイメージを強調するために、
引いてみることを考える。
で、次に描いたのがこれ。
テーマは象徴的になるけど、感情移入は遠ざかる。
じゃあ思い切って寄ってみようと、シンイチを中心にすることに。
それがこれ。
シンイチが中心になるし、これで行こう、と塩梅を決める。
ところで、
天狗面を持つ手がうまく書けなかったので、
部分的にデッサンをしてみる。ネムカケの他のポーズがありうるかも試してみる。
左下の感じがうまく描けたので、これを元に合成したろ、と思うわけです。
あるいは、「宿主の闇を切る」を強調するとしたら、
妖怪ごしにシンイチ、という構図もあり得る。
で、色々描いてみる。
ヨリが良さそうなんだけど、
妖怪「心の闇」が単なるモンスターに見えては駄目で、
「人に取り憑く」感じがあったほうがいい。
妖怪ごしほど強調するのは「シンイチを中心に据える」という意味とぶつかる。
ということで、
「周囲に悩む人のシルエットに取り憑く妖怪」という点景を足すことに。
シンイチの描き直したものを、Photoshop上で合成します。
天狗面は前の感じが良かったので、なんとなくハーフで透かして、
思いが分かるようにしています。
これをラフ完成としました。
ちなみにラフに使っているのは、いつもの青いボールペンです。
消しゴムがないので、一気に迷わず書けるので、
「消すより書くこと」に意をおけるやり方です。
形を整える(枝葉を整える)のはあとでやることであり、
まずは根幹を作り上げることを優先しています。
部分的デッサンは今回のシンイチのように部分で書き直したり、
どうせこのあと清書する、という前提でのラフだったりします。
細かいバランスよりも、「全体の意味」を決めるのです。
モチーフの取捨選択、構図や配置、それが表す意味、などを決めることが、
ラフの役割です。
脚本で言えば、ログラインやプロットや構成に当たるかも知れない。
で、このラフ状態で、仮に配色をしてみます。
以下、Photoshop上で作業します。
まず背景にラフに闇を描きます。
(白い背景に、群青色っぽいのと、黒っぽいのと、緑っぽいのを3レイヤーで描いて、
透明度調整して一枚にしています。まずは闇の「色の傾向」をつかむ為です。
真っ黒じゃつまらないので、青や緑の闇をイメージしてみた。
炎の赤やオレンジの補色になる想定)
一番上のレイヤーに下書きを白黒反転して乗算でのっけ、
中間のレイヤーにブラシでざっと色を塗ります。
大体の色を決める配色設計なので、塗りはヘボです。
妖怪の色はそれぞれ何色がいいか、
シンイチの服や髪の色はなにがいいか、
色々試した結果、こういうイメージに。
元々心の闇は鮮やかなサイケデリックという設定ですが、
中心より目立ってはいけないと思い、
彩度を押さえ気味にしています。
こうして、元々の設計を、色に反映させる訳です。
オレンジの炎の反射なども既に試し済み。
ちなみに今回ロゴを新しくしようと思って、
ラフを書いてjpegにして、
イラレ上にペーストして、ベジェ曲線でクリンナップ。
作者名、新コピーの配置なども決め、大ラフ完成。
もとの下書きには「心の闇に炎をかざせ。」と書いてみましたが、
「炎をかざす」より、もっと強い言葉が目立つと思い、
「斬れ! 心の闇を。」という倒置で強い言葉を目立たせます。
さて、ラフの下書きを、「主線」としてクリンナップします。
最終仕上げはA5(ラフ原画の大きさ)だと小さいので、
文庫本想定でB5に拡大コピー。
その上に白紙を重ね(ライトボックスがあればいいんですが、
持ってないのでうっすらある線を見ながら)、
B6鉛筆で主線を引きます。
それがこれ。
漫画家志望だったので、この程度は15分もあれば描けるわけですわ。
ちなみに炎は筆塗りだけで行こうと思ってるので、
境界線をわざと描いてないです。
さて、ラフの時の闇のファイルをB5に拡大、
Photoshop上でレイヤーを積んで行きます。
レイヤーの順は、最終的にこんなグループわけです。
1タイトル関係
2フレア
3火の粉
4主線
5炎
6シンイチと天狗面
7ネムカケ
8妖怪たち
9背景の闇
レイヤーグループわけをしてますが、最終的に120レイヤーぐらい重なってます。
心の闇は主線を白に反転、お化けっぽくして、
シンイチ、ネムカケなどは主線を黒に。
闇のレイヤーの上に、乗算、スクリーンで乗っけて、
間に100レイヤー以上挟んで行くことにします。
これがこの絵における幹で、あとは枝葉なのです。
ラフ完成、闇と主線、最終上がりを並べておきます。
つづく。
2016年06月17日
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