2016年06月17日

幹と枝葉3(枝葉編)

幹が出来た、というのは、
脚本でいえば、プロット、三幕構成、テーマ、
メインプロットとサブプロットの関係などが確定したこと。

ここから、キャラクターや台詞やシーンや伏線という、
ディテールに入って行くわけです。

さて、絵のつづき。

あ、ちなみに僕ペンタブが苦手なので、マウスで描いてます。
主線は鉛筆ですけど。


闇のラフに、線画が乗った状態から。
5背景に線画.jpg


ちなみに僕のやり方ですが、
一番上のレイヤーに、主線を乗算かスクリーンで置き、
その下に色レイヤーを置いて行き、順次グループ分けをしています。

塗りは、透明度30%程度のブラシで重ね塗りをしていき(デフォの丸筆がメイン)、
30%程度の消しゴムで消して、形を整える(デフォの丸筆メイン、たまにボカシ筆)
スタイル。
油絵に近いですね。
指先ツールはあんまり使わない。

塗りも消しも、
太筆で塗って行き、中、細、面相と、
筆の太さを徐々に細かくしていきます。


まずは天狗面、シンイチのラフ塗り。
6シンイチラフ塗り.jpg

シャドウを別レイヤーに乗せます。
7シンイチディテール.jpg

髪の毛、目、周囲が闇に溶け込んで行く感じは、
全部別レイヤー。
髪の毛だけで10レイヤーぐらいを重ねています。
筆の細さ違いのレイヤー、明るい部分のレイヤー、暗い部分のレイヤー、
などに大きく分かれてます。

各妖怪の色部分と、
取り憑かれた人をシルエット(ていうかグラデ)で。
8周囲のベース.jpg




さあ、メインの炎。


まずはオレンジでなんとなく描いてみます。
9炎オレンジ.jpg

オレンジの下のレイヤーに、赤色でグローしてる感じを作ります。
10炎赤.jpg

赤単独レイヤーだとこんな感じ。
11炎赤2.jpg

赤、オレンジの上に、黄色でハイライト部分をつくります。
12炎黄.jpg

黄色単独レイヤーだとこんな感じ。
13炎黄2.jpg

意外と適当なディテールですが、三枚の重ね塗りなので、
うまいこと見えてるわけですわ。

で、炎の上に、小鴉の、黒い刃と朱の柄を足して、
14小鴉.jpg

その上のレイヤーにも炎を足して、
炎の中の剣のようにします。
15小鴉の上にも炎.jpg



ここからPhotoshopならではのテク。
オレンジのオーバーレイ重ねで、オレンジのグローを作ります。
16オレンジの反射光.jpg

ちなみにその単体レイヤーを通常重ねで見るとこんな感じ。
17オレンジ反射通常重ね.jpg

オレンジの反射、炎のグロー感が出ます。
さらにもう1レイヤー足して、別のオレンジ色のオーバーレイをつくり、
オレンジグローを重ね塗り。
18オレンジ反射2.jpg


つまり炎は、
赤、オレンジ、黄、(小鴉の手前の炎)、
オレンジオーバーレイ1、2、という5(正確には計6)レイヤーで作ってます。
さらに火の粉やフレアが足されるので、
炎だけで15レイヤーは重ねてるかな。

透明度のあるブラシで重ね塗りするのは、こういうレイヤー重ねをする前提で、
やってるわけです。

シンイチまわりがなんとなく出来たので、周りの妖怪の顔を描きます。
書き込み具合はシンイチよりラフにすることで、
中央に目がいきやすくなります。
19妖怪に顔.jpg

で、背景の闇をもう少し強調することで、
炎を浮き立たせることを考えます。
こう。
20闇のディテール.jpg


上から線画、炎、シンイチ、妖怪、闇となってる感じの、
妖怪と闇の間に、以下のようなレイヤーを入れて、
透明度で調整しています。

より深い闇(左の妖怪の後ろの部分だけ透けを表現するため闇少なめ)、
21闇パーツ1.jpg

逆に闇がふわっと明るくなってる部分、
22闇パーツ2.jpg

周辺落としです。
23闇パーツ3.jpg


闇だけで比較してみると、
ビフォー、アフター。
24闇もと.jpg

25闇new.jpg


ネムカケと、タイトルを乗せてみます。
ネムカケだけで10レイヤーぐらいいます。
ベース色、暗いレイヤー、明るいレイヤー、などなど。
一番上にはヒゲや体毛のハイライトなどの面相筆レイヤーがいます。
26ネムカケとタイトル.jpg


再び周辺落としのこういうのを作って、
30周囲マスク.jpg

透明度で重ね、中央のシンイチを強調します。

強調とは、強調するだけでなく、周囲を引き算することでも出来るのです。
特にRGBは減法混色なので、引いて行くことは大事です。

上下も落とします。下の暗部は、タイトルを見やすくするのに役立ちます。
31上下マスク.jpg

シンイチ、天狗面、炎に目が最初に行くようになってきました。
28周囲落とし.jpg

妖怪「心の闇」はサイケデリックな派手な色という設定のため、
妖怪の色のハデさを減らすことは出来ません。
でも色気違いになると、見るべきポイントが分からなくなる。
ということで、周囲を引き算することで、
メインを立たせる訳です。

強調の為のハイライトを。

天狗面を明るく、濃く、赤くし、
(カラーバランスや彩度調整、トーンカーブなどで)
白(完全白ではなく、地色をスポイトで拾って、その80%ホワイトみたいな色)で、
天狗面の白ツヤを足します。
ついでに、小鴉の刃部分のハイライトも。
シンイチの瞳のハイライトが一番明るくなるように、
それぞれ白色を引き算しています。
32ハイライト.jpg


派手に火の粉を足しています。
33火の粉.jpg

まあ、いっこいっこ描くしかないです。
テクニック的には、グループごとに分けてつくり、
手前にある想定のレイヤーを、丸ボケにしてみました。
レンズぼかしを使うより、
物体が単純なので「明るさの最小値」フィルタが機能しました。
通常重ねをしてるレイヤーもあれば、
オーバーレイやハードライト合成をしてるレイヤーもあります。

さらに、火の一番光る部分にフレア
(撮影時レンズ内の反射で、フワッと光が走るやつ。
特にこれはJJエイブラムスが好きな、アナモレンズに走りやすい、
横長のフレアを意識しています)を足します。
これはブラシで手で描いて、
オーバーレイ、ハードライト合成レイヤーを10近く重ねてます。

で、いったん完成、と思ってこの時点でブログにあげたのですが、
表紙中.jpg

炎の形が気に食わないので直しました。
36完成.jpg

根元はいいんだけど、
炎の先部分が、もっと炎の舌っぽくなって欲しかったので、
炎レイヤーグループを複製して、
オレンジ、赤、黄色、グローなどに消しゴムをかけ、書き直して行きます。

オレンジのみがこんな感じ、
37炎オレンジのみ.jpg

オレンジ+赤、
37炎プラス赤.jpg

黄色単色、みたいな。
38炎黄色.jpg

炎三色だけだとこんな。
39炎三色のみ.jpg


で、あらためて完成形を。
36完成.jpg


幹と枝葉の話をしましょう。

枝葉では、
まず一番明るい所と、一番暗い所を決めることです。

シンイチの瞳>天狗面と小鴉のハイライト、フレア>火の粉=タイトル>炎
の順に明るいです。
暗さでは、
シンイチの近くの闇>下の方の闇>周囲の闇>髪の毛や眉毛、黒い刃>
シルエットの苦しむ人
の順に暗いです。

これは、意味に順列をつけることと、
最も明るい所と最も暗い所の振り幅を決めることに他なりません。

脚本にたとえるなら、
対照的な一番のコントラストは、何と何が対比されるかを決めること
(たとえば、アツい奴とクールな奴の両極を決める、
大勝利の場面と一番辛い場面の両極を決める、爆笑と涙のマックスを決めるなど)
に当たるでしょう。
すべての要素は、それらの間に、大小関係として配置されるはずです。

その整い方がばらばらなものが、
「整ってないストーリー」という印象を与えるでしょう。
この絵でたとえれば、シンイチより心の闇が目立ったり、
それよりネムカケが目立ったりするようなバランスでは、整った絵とはいえません。

タイトル文字の配置にも気を使っています。
てんぐ探偵のメインタイトルは最も大きいのは当然として、
その輝度よりもフレアの方が目立つようにしてあります。
とにかくそこにまず目が行くようにです。
タイトルが先に目立つより、絵に感情移入すべきだからです。
キャッチコピーを黄色にすることで、
炎と同じ意味であることを暗示しています。
(ナナメにしたほうが動きが出て、アクションっぽいことを暗示出来る)

また、闇、妖怪たちは、天狗の赤やオレンジの補色、
つまり水色系、グリーン系を多めに使っていることに注意。
輝度のコントラストだけでなく、色でも対比を作り、
テーマの幹(天狗+炎と、闇を対比)を助けている訳だったりします。


枝葉は、枝葉だけで存在するのではありません。
幹についてはじめて意味をなします。
僕が炎を書き直したのは、
前の炎では、「魔を焼き払う炎の恐さ」が出てないと思ったからです。
それはテーマ(幹)の表現だからです。

実際この炎の形に落ち着くまで、4回ぐらい炎を直してるかなあ。
途中状態は捨てたので残ってないけど。



今回の絵は、描きながらテーマを考える、なんて面倒なことをしなかったので、
比較的早く出来たと思います。
線に二日、塗りに二日で出来ています。



まあざっとこんなものでしょうか。
絵描き専門ではないのですが、ご質問あれば受けます。
posted by おおおかとしひこ at 15:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック