幹が出来た、というのは、
脚本でいえば、プロット、三幕構成、テーマ、
メインプロットとサブプロットの関係などが確定したこと。
ここから、キャラクターや台詞やシーンや伏線という、
ディテールに入って行くわけです。
さて、絵のつづき。
あ、ちなみに僕ペンタブが苦手なので、マウスで描いてます。
主線は鉛筆ですけど。
闇のラフに、線画が乗った状態から。
ちなみに僕のやり方ですが、
一番上のレイヤーに、主線を乗算かスクリーンで置き、
その下に色レイヤーを置いて行き、順次グループ分けをしています。
塗りは、透明度30%程度のブラシで重ね塗りをしていき(デフォの丸筆がメイン)、
30%程度の消しゴムで消して、形を整える(デフォの丸筆メイン、たまにボカシ筆)
スタイル。
油絵に近いですね。
指先ツールはあんまり使わない。
塗りも消しも、
太筆で塗って行き、中、細、面相と、
筆の太さを徐々に細かくしていきます。
まずは天狗面、シンイチのラフ塗り。
シャドウを別レイヤーに乗せます。
髪の毛、目、周囲が闇に溶け込んで行く感じは、
全部別レイヤー。
髪の毛だけで10レイヤーぐらいを重ねています。
筆の細さ違いのレイヤー、明るい部分のレイヤー、暗い部分のレイヤー、
などに大きく分かれてます。
各妖怪の色部分と、
取り憑かれた人をシルエット(ていうかグラデ)で。
さあ、メインの炎。
まずはオレンジでなんとなく描いてみます。
オレンジの下のレイヤーに、赤色でグローしてる感じを作ります。
赤単独レイヤーだとこんな感じ。
赤、オレンジの上に、黄色でハイライト部分をつくります。
黄色単独レイヤーだとこんな感じ。
意外と適当なディテールですが、三枚の重ね塗りなので、
うまいこと見えてるわけですわ。
で、炎の上に、小鴉の、黒い刃と朱の柄を足して、
その上のレイヤーにも炎を足して、
炎の中の剣のようにします。
ここからPhotoshopならではのテク。
オレンジのオーバーレイ重ねで、オレンジのグローを作ります。
ちなみにその単体レイヤーを通常重ねで見るとこんな感じ。
オレンジの反射、炎のグロー感が出ます。
さらにもう1レイヤー足して、別のオレンジ色のオーバーレイをつくり、
オレンジグローを重ね塗り。
つまり炎は、
赤、オレンジ、黄、(小鴉の手前の炎)、
オレンジオーバーレイ1、2、という5(正確には計6)レイヤーで作ってます。
さらに火の粉やフレアが足されるので、
炎だけで15レイヤーは重ねてるかな。
透明度のあるブラシで重ね塗りするのは、こういうレイヤー重ねをする前提で、
やってるわけです。
シンイチまわりがなんとなく出来たので、周りの妖怪の顔を描きます。
書き込み具合はシンイチよりラフにすることで、
中央に目がいきやすくなります。
で、背景の闇をもう少し強調することで、
炎を浮き立たせることを考えます。
こう。
上から線画、炎、シンイチ、妖怪、闇となってる感じの、
妖怪と闇の間に、以下のようなレイヤーを入れて、
透明度で調整しています。
より深い闇(左の妖怪の後ろの部分だけ透けを表現するため闇少なめ)、
逆に闇がふわっと明るくなってる部分、
周辺落としです。
闇だけで比較してみると、
ビフォー、アフター。
ネムカケと、タイトルを乗せてみます。
ネムカケだけで10レイヤーぐらいいます。
ベース色、暗いレイヤー、明るいレイヤー、などなど。
一番上にはヒゲや体毛のハイライトなどの面相筆レイヤーがいます。
再び周辺落としのこういうのを作って、
透明度で重ね、中央のシンイチを強調します。
強調とは、強調するだけでなく、周囲を引き算することでも出来るのです。
特にRGBは減法混色なので、引いて行くことは大事です。
上下も落とします。下の暗部は、タイトルを見やすくするのに役立ちます。
シンイチ、天狗面、炎に目が最初に行くようになってきました。
妖怪「心の闇」はサイケデリックな派手な色という設定のため、
妖怪の色のハデさを減らすことは出来ません。
でも色気違いになると、見るべきポイントが分からなくなる。
ということで、周囲を引き算することで、
メインを立たせる訳です。
強調の為のハイライトを。
天狗面を明るく、濃く、赤くし、
(カラーバランスや彩度調整、トーンカーブなどで)
白(完全白ではなく、地色をスポイトで拾って、その80%ホワイトみたいな色)で、
天狗面の白ツヤを足します。
ついでに、小鴉の刃部分のハイライトも。
シンイチの瞳のハイライトが一番明るくなるように、
それぞれ白色を引き算しています。
派手に火の粉を足しています。
まあ、いっこいっこ描くしかないです。
テクニック的には、グループごとに分けてつくり、
手前にある想定のレイヤーを、丸ボケにしてみました。
レンズぼかしを使うより、
物体が単純なので「明るさの最小値」フィルタが機能しました。
通常重ねをしてるレイヤーもあれば、
オーバーレイやハードライト合成をしてるレイヤーもあります。
さらに、火の一番光る部分にフレア
(撮影時レンズ内の反射で、フワッと光が走るやつ。
特にこれはJJエイブラムスが好きな、アナモレンズに走りやすい、
横長のフレアを意識しています)を足します。
これはブラシで手で描いて、
オーバーレイ、ハードライト合成レイヤーを10近く重ねてます。
で、いったん完成、と思ってこの時点でブログにあげたのですが、
炎の形が気に食わないので直しました。
根元はいいんだけど、
炎の先部分が、もっと炎の舌っぽくなって欲しかったので、
炎レイヤーグループを複製して、
オレンジ、赤、黄色、グローなどに消しゴムをかけ、書き直して行きます。
オレンジのみがこんな感じ、
オレンジ+赤、
黄色単色、みたいな。
炎三色だけだとこんな。
で、あらためて完成形を。
幹と枝葉の話をしましょう。
枝葉では、
まず一番明るい所と、一番暗い所を決めることです。
シンイチの瞳>天狗面と小鴉のハイライト、フレア>火の粉=タイトル>炎
の順に明るいです。
暗さでは、
シンイチの近くの闇>下の方の闇>周囲の闇>髪の毛や眉毛、黒い刃>
シルエットの苦しむ人
の順に暗いです。
これは、意味に順列をつけることと、
最も明るい所と最も暗い所の振り幅を決めることに他なりません。
脚本にたとえるなら、
対照的な一番のコントラストは、何と何が対比されるかを決めること
(たとえば、アツい奴とクールな奴の両極を決める、
大勝利の場面と一番辛い場面の両極を決める、爆笑と涙のマックスを決めるなど)
に当たるでしょう。
すべての要素は、それらの間に、大小関係として配置されるはずです。
その整い方がばらばらなものが、
「整ってないストーリー」という印象を与えるでしょう。
この絵でたとえれば、シンイチより心の闇が目立ったり、
それよりネムカケが目立ったりするようなバランスでは、整った絵とはいえません。
タイトル文字の配置にも気を使っています。
てんぐ探偵のメインタイトルは最も大きいのは当然として、
その輝度よりもフレアの方が目立つようにしてあります。
とにかくそこにまず目が行くようにです。
タイトルが先に目立つより、絵に感情移入すべきだからです。
キャッチコピーを黄色にすることで、
炎と同じ意味であることを暗示しています。
(ナナメにしたほうが動きが出て、アクションっぽいことを暗示出来る)
また、闇、妖怪たちは、天狗の赤やオレンジの補色、
つまり水色系、グリーン系を多めに使っていることに注意。
輝度のコントラストだけでなく、色でも対比を作り、
テーマの幹(天狗+炎と、闇を対比)を助けている訳だったりします。
枝葉は、枝葉だけで存在するのではありません。
幹についてはじめて意味をなします。
僕が炎を書き直したのは、
前の炎では、「魔を焼き払う炎の恐さ」が出てないと思ったからです。
それはテーマ(幹)の表現だからです。
実際この炎の形に落ち着くまで、4回ぐらい炎を直してるかなあ。
途中状態は捨てたので残ってないけど。
今回の絵は、描きながらテーマを考える、なんて面倒なことをしなかったので、
比較的早く出来たと思います。
線に二日、塗りに二日で出来ています。
まあざっとこんなものでしょうか。
絵描き専門ではないのですが、ご質問あれば受けます。
2016年06月17日
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