2016年06月26日

ヒキから始めるか、ヨリから始めるか

必ず二種類あることを、知っておこう。
どのシーンもだ。


ヒキで始める場合は、
状況や背景を分かってから、
徐々に問題の核心に迫る場合である。

ここはどこか、何が起こっているのか、
時代はいつか、どういう時代の文脈にあるのか、
などが提示されることが多い。
(スターウォーズEp4は、状況を示すヒキを撮る予算がなかったので、
字幕で誤魔化してチェイスのヨリから始めた例だ)


ヒキから始まる理由には、
最初に説明しておかないと話がすぐに始まってしまい、
あとから落ち着いて説明する暇がないから、
などや、
ペースを徐々に上げていく狙いの時、
などや、
雰囲気に呑まれるようにしたいとき
(異常な場面に移ったとき)、
などなどがあるだろう。

オーソドックスなやり方であるが、
オーソドックス故に変化球が欲しくなるときもある。

ヨリから始める方法がそれだ。


ヨリから始めると、
問題の核心から始めることが出来、
いきなり話に巻き込むことが出来る。
緊張の高い状態から始めるのがよい。

たとえば怒鳴る男のアップ、
逃げる男のアップ、
などの人のアップから、
暗闇を切り裂くライトのアップ、
雨が降る地面のアップ、
ひっくり返る車のアップ、
などの、ブツのヨリから始めることもできる。


ヨリから始める長所は、
話をすぐに始めることが出来ることだが、
状況や背景が分からないまま進むのが欠点だ。
だから一端落ち着いたら状況説明に場面を移す必要がある。
そこで下手な人は、ヨリから始めたテンションを失いがちだということだ。

(「てんぐ探偵」で言うとヨリから始めることを意識していて、
節の頭をたいてい台詞から始める工夫をしている。
それは僕がヒキから始めるテンションを作るのが下手だと、
自覚しているからだったりする)



どちらにせよ、
状況説明が下手な人は、
ヒキから始めようがヨリから始めようが、
うまく伝わらずギクシャクしてしまうので、
ヒキから始めるオーソドックスをマスターするのが早いかも知れない。


また、シーンのトップで、
以後のことを全て象徴する、というやり方もある。
前ふりなわけだ。
喧嘩する二人から始めれば、
シーンのあとには仲直りか決定的決裂があるはずだ。
それに相応しいのはヨリかヒキかを考えて、意図的に選択することもよくやる手だ。
(バレるから隠す、という逆の選択肢もある)

大抵シーンの頭は、なりで書いてしまい、
熟考しなかったりする。
感覚的な要素もあるけど、
これらのような理屈の要素があることも知っておいた方がよい。
posted by おおおかとしひこ at 14:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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