たとえば「この漫画が凄い!」なんてリストが、
漫画業界で流行ってきた。
これがどれだけ売上を変えてきたかについては、
よく知らないのでとりあえず置いておく。
(ステマ説もあるよね。
芥川賞、直木賞、土用のうなぎ。
これらは売れないものを売る、元祖ステマみたいなものではある)
さて、ストーリーに「凄い」は必要だろうか?
僕は、面白いか面白くないかが、
第一に大事だと思っている。
「面白い」とはどういうことをいうか、
というのはなかなかに難しいが、
笑える、間抜け、爆笑、知的ユーモア、ブラックユーモア、シュール、
などの笑いのベクトルもあれば、
感動、号泣、じんとする、悲しい、あったかい、
などの感動ベクトルもあれば、
スリル、恐い、人間の恐ろしさ、自然の恐ろしさ、スペクタクル、
などの恐いベクトルもある。
語れない感情の名前とか、複雑な感情もある。
オシャレやデザインが良いとかの、ガワの良さもある。
これらは点の感情を示すものであり、
写真でも短いものでも可能だ。
ストーリーというのは、これに加えて、
構成の面白さ(伏線やどんでん返しも含む)、
引き込む力、練られた展開、
矛盾のない首尾一貫性、カタルシス、
感情移入、主人公の変化に影響を受けること、
などが含まれると思う。
これらの要素は、主な面白さを並べただけだが、
全てが必要なわけではないが、
足りないと物足りなくなるので、
濃く、練られているほうが面白いと思う。
ところで、「凄い」である。
何が凄いのだろう。
何かが突出して甚だしいのだろうね。
笑いが凄い、
スケール感やスペクタクルが凄い、
熱い感情が凄い、
ストーリー展開が超展開で凄い、
どんでん返しが凄い、
などなどだろう。
つまりそれは、一点突破のウリがあり、目立ち、
キャラが立っているというわけだ。
キャラが立っているものは、売りやすい。
だから、「この漫画が凄い!」は、
売りやすいベスト10みたいなものだ。
これはつまり、売り手がバカだということを示している。
キャラが立っているものを売りやすいのは当たり前だ。
食べ物でいえば、辛いものや甘いものを売ることに似ている。
派手に目立ち、他と違う分かりやすい特徴が、
短時間で売れるのは当然だろう。
そこまで目立たないが、本当に面白いもの、
本当に良作、ためになるもの、知的レベルが上がるもの、
意外と良かったもの、買い手のレベルを上げるものなどを、
届けるべき人に届けるのが、僕は真の商売だと思う。
つまり、売り手が短絡に即売れするものにしか対応してなくて、
売るべきものは何かを考えていない感じがするんだな。
食べ物でいえば、
素材をちゃんと生かした地味な和食、
伝統的なおやつ、
ソウルフードみたいな常食、
何度食べても飽きない献立、
などをどう売るかを、売り手が考えるべきだと思う。
それは、結果が出るまで時間がかかるかも知れない。
だけど、一度分かれば癖になる。
癖になるどころか、
それがないと人生に張りがないところまで、いくポテンシャルがあるのに。
凄いと思われることだけを目的にすると、
ただ凄いことだけをして、
スパイスだけ入れまくって旨味のない、
刺激だけのものになるだろう。
旨味を人は求めていて、それに刺激を適度にまぶすべきなのに。
(ファイアパンチ、実写進撃などは、
そのようなスパイスだけを入れようとした結果だと思う)
凄いものを書こうとするな。
面白いものを書こうとせよ。
凄いものしか売れない、バカな売り手を信用するな。
面白いものを書いた上で、
売り手が売りやすいようにいいスパイスをまぶして、
キャラを立たせよう。
ぼくらは七味職人ではない。
うどん職人である。七味は添えるだけ。
2016年07月18日
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