ワクワクするとはどういうことだろう。
物語はワクワクするべきだ。
僕は、「これから何が起こるか分からない」という、
不安と表裏一体ではないかと思う。
単なる不安もある。
「目が覚めたら縛られて密室にいた」
ならば、(マゾの人以外は)不安しかない。
分からないことは、不安である。
逆に不安にさせたければ、
謎を投げればいいのだ。
意図が不明、状況が不明、原理原則が不明。
何も分からないことは、不安である。
ところが、ここにある種の方向性をつけると、
ワクワクになるのだ。
ある程度分かっていることがあり、
ある程度予測できるのだが、
それが100%ではない、という感じ。
100ではなく、30から70の間ぐらいの感じ。
あの子が俺のことをどう考えているか、
全く分からないのなら、
好きになっても不安しかない。
ところが、もしかしたら向こうも好きかも、
好きでなくても友達になれそうかも、
となると、明日会うのにワクワクする、
そんな感じだ。
不安のときは、周りにあるもの全てが斜めに見え、
暗く自分を責めるようにしか見えないのに、
ワクワクがあると、周りのものは急に輝き出す。
同じものなのに(モンタージュ効果:文脈によって同じものの見え方が変わる)。
ただの期待ならどうだろう。
イチローが10000本ヒットを達成するかどうかは、
ワクワクするか?
期待は出来る。何故なら出来そうだからだ。
無理なんじゃないか、という不安はない。
だからワクワクはしない。
ワクワクは、不安と表裏一体だからである。
もし、イチローがピッチャーとして登板する、
なんて場面があればワクワクするだろう。
(詳しい人ならイチローは甲子園でピッチャーだったことも、
知ってるだろう)
それに備えて練習してきたという情報があり、
なおかつメジャーで登板するなんて不安と、
ない交ぜになったときの、第一球。
不安と期待(予想)が混じったとき、
ワクワクが発生する。
「どうなるか分からないぞ」と。
その時、私たちは頭の中で、
与えられた材料(状況)を並べて、
「主人公ならどうするか」を考えているのだと思う。
完全には不明という不安と、
ここまでは予想しているという期待と、
両者の混合が、ワクワクを生むのではないか。
ただどうなるか分からないだけだと、
不安だし下手したら退屈になる。
予想通りにしかならないのなら、
それも退屈である。
期待と不安を両天秤にかけながら、
アンバランスに危なっかしく走って行くのが、
一番ワクワクするだろう。
半分は掴ませ、半分は掴ませない。
ミステリアスな女のように。
つまりミステリアスな女は、
相手が何を掴み、何を掴んでいないかを分かっている。
常にそうありたいものである。
2016年07月19日
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「天空の城ラピュタ」一本で十分かな。
実写なら「スタンドバイミー」をあげておきましょう。
どんな映画にもワクワクはありますよ。
「人を殺しに行く」という場面すら、ワクワク感は作れます。
最近だと「ズートピア」の上京の場面。
"Try everything"がかかる一連がとても良かった。
列車の窓に当たる雨がとても好き。
そういう意味でいうと、音楽は、
AメロBメロサビよりも前奏が一番ワクワクしますよね。
これから何がはじまるか分からない不安が、スパイスになっている気がします。