興行論とかそういうことかも知れないけど、
日本の習慣では、劇場(小屋)主が興行の世界では一番強い。
>制作サイドが映画館に営業保証金を払うというのはどういうことでしょうか?
映画館で作った映画を上映してもらう為に支払う
いわば「ショバ代」みたいなものということでしょうか?
映画館は映画が売れたら
利益の何割かをもらうというシステムではなく、
映画の動員数(利益)とは関係なく常に一定の保証金を受け取っているということでしょうか?
そういうことです。
すべての劇場がそうではなく、大手チェーンの劇場は違うかと。
地方や独立系の劇場に多いと思います。
そこでは、劇場主が興行主で、かけるものを選ぶのです。
配給はいわば営業。おたくの小屋でかけさせてください、という立場です。
日本は古くから、土地を持ってる人が一番えらいのです。
(これを崩したのが、シネコンというチェーン店、
さらにはネットという土地を媒介しない仕組みですが、また別の機会に)
志ある劇場支配人なら、
「よし、映画をみせてみい、面白いならわしの責任でかけてやる」
と、上映する/しないを自己責任で選び、
その儲けも自分でリスクを取るでしょう。
新宿武蔵野館は、そういう昔ながらの個人経営劇場の匂いがします。
渋谷シネマライズも単館系の走りでしたが、潰れてしまいました。
小さな小屋は、お客が来なければ即倒産なわけですな。
さて、劇場主がそのようなリスクを取らない場合、
営業保障金を取る仕組みがあります。
客が来ても来なくても、一定は保障されるというわけ。
だから潰れずに済むわけです。
どれくらい返ってくるのか、どれくらいの割合がそうなのか、
どれくらいの額かについては、不勉強なのでわかりませぬ。
知ってる範囲だと、渋谷の某単館は10年くらい前、
レイトショー一晩で20万円と聞きました。
完成披露試写会のワンナイトイベントなら1800円が112人以上でお釣りがきますが、
たとえば2週間限定興行だとしても、112人が14日間入らないとペイしないわけですね。
しかも業界の通例で、
お客さんの払ったチケット代は興行主と配給主で折半です。
ちなみに、
映画は、純粋制作費が1に対して、宣伝費(P&A)が2と言われています。
制作費の回収は、純粋制作費の6倍稼いでそこからやっと儲け、というわけです。
よく10億制作費で、興収目標50億、なんて話を聞きますが、
そういう算盤がはじかれてるわけです。
(対外的な制作費は純粋制作費とPAを足した場合が多い。
また劇場収入だけでなく、DVD収入、地上波放映料などがあるので、60億は稼がなくていい)
宣伝費を抑えれば儲けはありそうですが、
知られていない映画に来る人は少ないので、パイ自体が減ってしまう、
というジレンマに、興行というものは立たされているわけです。
大手チェーンなら大量投下、大量回収、年間興行で均せるので、
リスクがヘッジできますが、
単館や、地方や、小さな小屋はそうもいかない。
しかも大手チェーンにかからない「発掘」は、90年代以降単館系から生まれました。
すなわち、新人が出にくく、ブロック経済みたいになってるわけですな。
これ以上は経営学部に登場してもらうとして、
こういう仕組みで映画の興行は動いている、
という現実は、知らないよりは知っておいたほうが良いかと。
(日本の興行の仕組みを系統的に分析してる本とかあるのかなあ。
僕はそこまでは不勉強です)
その仕組みを今ネットが崩そうとしていますが、はてどうなることやら。
ちなみに「シンゴジラ」の制作費は未発表だそうです。
「キャシャーン」が6億だったので、15から20ぐらいかなあ。
キャストは室内が多かったし、ドラマ(会議室?)パートは安かった。
「ゴジラ FINAL WARS」の制作費が20億、興行収入が16億の惨敗だったそうで、
東宝サイドがうかつに言わない模様。
ただ、目標50億を30億に下方修正した情報は入ってきています。
2016年08月02日
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それはさておき、シンゴジラの制作費。
13億という風に聞きました。(岡田斗司夫の番組で)
ファイナルウォーズより特撮もロケも限られてたから妥当かと。そもそもCGと出演費くらいしか金かかってなさそうですし。
河野太郎のTwitterで、自衛隊だかの作戦本部はホンモノ使ってるたか言ってましたし。
元々、庵野は自衛隊のプロパガンダビデオ(兵器紹介ビデオ)の監修してたりしたから、そちらとは友好関係みたいですし。
そういうところは日本のマイケルベイなのかも。
ただ、これまでのゴジラシリーズ、ガメラシリーズ同様に陸上自衛隊ばかり全面に出てました。
これは航空自衛隊は墜落シーンNGだそうで、怪獣に落とされるシーンを描くなら防衛軍とか架空の軍隊にせざるを得なかったみたいです。
余談が長くなってすいません
13億とは、ずいぶんCG部を叩いたなあ。
「ゴジラならいくらでもやります」っていう志を利用してる気がする。
それも込みで汚いと僕は思う。
自衛隊の協力があったので、ヘリや戦車のモデリングや挙動のアニメーションなども正確に出来たんでしょうね。
そのための資料映像も蓄えてる気がする。
マイケル庵野おそるべし。
あと、シアターNも閉めたのか。渋谷から映画館が次々消えてくなあ。
これは一見収入が安定するシステムかなとは思いましたが、
金だけもらってつまらないものばかり
流していたらその映画館にお客自体が来なくなるわけで・・・
そうなったら制作側もそんな映画館では
映画を流さなくてもいいじゃんということになり
収入が無くなる・・ことになってはしまわないか?と
読んでいて思いました。
作る側はもちろん、
流す側も脚本の良し悪しを判断できる必要がある
と大岡監督は過去記事でおっしゃられていたと記憶しておりますが、こういうことに繋がるのですね。
業界についての理解が深まりました。
ご丁寧に解説して頂きありがとうございました。