2016年08月04日

人工知能は脚本家の夢を見るか?

脚本の(ある程度の)専門家であり、
工学的応用人工知能の専門家である
(京大大学院応用人工知能論卒)僕に、
面白げな問いだと思う。

人工知能は脚本を書けるか?
僕は、今脚光を浴びつつあるディープラーニングでは無理だと思う。
次のパラダイムシフトまでは多分大丈夫。


ディープラーニングの仕組みについては、
類書を参考にしてくれたまえ。
ざっくりだが、てんぐ探偵「胡蝶の夢」(第20話予定、旧サイトにも掲載)
にも解説はしてある。

人工知能は脚本を書けるか。
トイプロブレムで考えてみよう。

京都人「お茶漬けでも食べていきなはれ」
(はよ帰れ、を意味する言葉)

を解釈出来るかどうかだ。


「はい、いただきます」
とうっかり答えない為には、
「言葉には、言葉通りの意味と、
言外の意味がある」ことを学習しなければならない。

それは、表面にある言葉を、
いくらチョムスキー分解(ワープロの漢字変換の基礎理論、
格構造を文章から作ること)しても得られない。

表面にある言葉の裏に、
「意図」というものがある、
という二重構造の学習が必要だ。

しかも応用するためには、
今意図通りの言葉を言っているのか、
意図を隠して別の言葉を言っているのか(「ただちに影響はない」)、
そのどちらかは曖昧にしたいのか、
その解釈出来るかどうかは符丁になっているのか、
などを、文脈から判断できなければならない。

つまりそれは、
表面の深層に、別の構造があることを意味する。

人は、言葉通りの意味を使わない。
別の言葉で別の意図を表現することがあるし、
しないこともある。

その性質を、
表れた言葉だけをビッグデータとして受けとる、
ディープラーニングが構造的に学習できるとは限らない。

脚本によく出てくるパターンなら、
意味もわからずフレーズとして使う可能性はあるけれど。


ディープラーニングの特徴でもあり欠点は、
一般的な特徴抽出に特化したことだ。

そのビッグデータの平均像を抽出するのは得意だが、
脚本とは、そのパターンを利用したり逆用したりする芸術である。

だから少なくとも、ディープラーニングではまだ足りない。


ディープラーニングが出来るのは、
あるある脚本を書くことだろう。

あれー?それって製作委員会が安心する脚本ー?
posted by おおおかとしひこ at 21:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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