2016年08月08日

修学旅行でパンツ忘れる奴は、必ず出る

僕が人の集団について考えるとき、
この法則を出すことにしている。

人は、絶対に同じになることはない。


あれだけ名前を書けと注意しても、
あれだけパンツを忘れるなと言っても、
人は完全には同じになることはない。

それは、指導者からすればイライラするかも知れないが、
人の集団として均一でないことは、
むしろ自然なのだ。

均一でないことは、すなわち多様性があることである。
もし均一だったら、間違った方向へ行けば全滅する。
均一でないことは、間違いの発見、
第三の方向の発見をもたらすことがある。
均一でないことは効率が悪いのではない。
短期的に見れば効率が悪いが、長期的に見れば非効率だ。

だから均一に揃っている集団のダンスなどは、
見世物として金になる。
人は均一でないから、均一な集団を見ると、美を感じる。
しかしそれは、ただの娯楽であることを忘れてはならない。

日本の建築物は、昔からひとつだけ違うむきの瓦を乗せる、
など、わざと完璧にしない建築を好んだという。
完成したらあとは崩れるだけだから、完成一歩前が美しい、
などとよく説明される。
均一でないことこそ、真実なのである、と建築家は思っていたのかも知れない。

僕はトヨタ自動車がとても嫌いだ。
中日思想なる自分中心主義も嫌いなのだが、
彼らの理想は「全ての道にトヨタ車が走っていること」らしい。
(15年くらい前に聞いた話なので、今は違うかも知れない)
他社のクルマの存在も許さない、
自転車やバイクも許さない、
そんな均一化社会は不自然だ。
おれがそのなかに入ってパンツを忘れてやる。


これらの観察は、人の集団をどう描くか、
ということに直結する。
それぞれが違う事情を持ちながら、
同じ目的に突き進む姿は尊いが、
それは、異なる人々だから尊いのであり、
同じ人々が同じ目的に進むのは、
トヨタ自動車みたいである。

どこかでパンツを忘れる奴が必ず出てくることを、
忘れてはならない。
(それを、トリックスターと物語論では呼んだりする)


昨日立ち読みした本で、
「渡り鳥がV字に編隊を組む理由」が説明されていて面白かった。
飛行機は翼の先に、返しのようなものがついている。
これは翼端の空気の渦流を低減させるためにあるそうだ。
水平翼は、翼の上と下で空気の速度が違う(浮力の原因)。
翼端でもそうだが、翼のない部分とある部分の間で乱流になり、
渦流が発生し、これが空気抵抗になる。
あの返しのようなもの(名前失念)は、それを低減させるそうだ。
燃料費を3-5%ほど節約出来るんだって。へえ。
で、渡り鳥がV字になる理由。
鳥の翼の両端に、この渦流が残っていて、
後ろの鳥はそれを利用して楽をするらしい。
スリップストリームの渦流版だそうな。
自動的に、V字が一番楽なんだと。へえ。へえ。
(先頭は疲れるので、時々交代するらしい)

均一化には、このような合理的理由(大抵は内部の理由ではなく、
外圧、この場合空気の乱流)があるものである。
それは楽を無意識に選ぶことでもある。


そして、均一化自体は物語ではない。
ある平衡状態から、別の平衡状態への移行が、物語である。
それは外圧がきっかけとしても、
一人のトリックスターによって均一化が解除され、
別の平衡状態へ導かれることになるだろう。

つまり社会を変えるのは、パンツを忘れる奴だ。

僕がズートピアを絶賛するのは、
そのような社会的多様性がテーマであるからだ。

ナンバー1からオンリー1へ、オンリー1から多様性へ、
価値の流れは変わっている気がするが、
孤立の不安から、群れから違うものを叩いて安心するという、
不寛容の嵐が広がっている気がする。
集団に属する気持ち良さと引き換えだから、なかなか客観的になれないのかも知れない。

てんぐ探偵2では、妖怪「不寛容」を描きたいと思っている。
倒し方は、まだ分からない。
知性が鍵のような気がしている。
posted by おおおかとしひこ at 12:46| Comment(1) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
罵倒してしまった、申し訳ない、あやまります、

私ならこのように描くとか、自分の好みはこのような演出だという、たぐいの批評なら頷いて読んでいたと思うのだが、

大岡様のものさしでもって、不足がありまだまだだとの批判を見て、ぶちきれてしまった、

クリエイターとして期待しています、汚い言葉は無視して下さい、すいませんでした。
Posted by ぴんた at 2016年08月08日 15:28
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