2016年08月15日

【ぎゅーさんへの回答箱】サブプロットとは何か

> ブレイクスナイダーの「サブプロット」シークエンスがいまいちよく分からないです。スナイダーは「息抜きタイム」「ブースターロケットの役割を果たす」と説明していますがイマイチしっくり来ないんですよね・・・。なので大岡さんの解釈を教えていただきたいです!


メインプロットとは、
「主人公がセンタークエスチョンを果たせるか」であり、
その他の脇筋の話は全てサブプロットです。

極端な例でドラマ風魔を出すと、
「小次郎が姫子のために白凰学院を救う」以外の話は全てサブプロットです。
蘭子さんのラブストーリーも、
霧風の個人的思いも、
武蔵と絵里奈の話も、
陽炎の裏切りも、夜叉姫の孤独のなれの果ても、
全てサブプロットです。
主筋と脇筋とでも訳せましょうか。


さて、サブプロットは、
「○○のサブプロット」と、登場人物ごとに整理することが出来ます。
このドラマの面白さのひとつは、
ほとんどの人物にサブプロットが用意してあることです。
群像劇でもなかなかここまで揃うことはないでしょうね。
壬生と陽炎のサブプロットは、後半戦大きな盛り上がりを見せた、
メインプロットに絡む大きなサブプロットでした。

一人一本しかプロットがないかというとそうでもなく、
主人公小次郎には、
風魔としての任務(メインプロット)、
姫子とのラブストーリー、
絵里奈との心の交流、
風林火山をものにすること、
の、4つの話が同時進行しています。
3つがサブプロットというわけです。
(蘭子との友情とか、麗羅との話とか、小さなエピソードもたくさんある)


さて、サブプロットは、
「ただ同時進行している別の話」ではありません。
メインプロットに関わる、重要な別の話題です。
姫子とのラブストーリーは、小次郎の重要な動機であり、
しかも主君と忍びの役割を理解するという、
メインプロットの和音のような役割をします。
絵里奈とのサブプロットは、メインプロットのクライマックス、
武蔵との対決に深みを与えました。
風林火山は、聖剣のサブプロット、
竜魔の戦線離脱、麗羅のサブプロットと関係しつつ、
メインプロットの決戦兵器です。

このように、メインプロットをただやるだけでは単調になるものを、
複雑に、絡み合いながら、結局は和音のように響かせることが、
サブプロットの役割です。
(クリストファーノーランは、よく同時進行する複数の話をやりますが、
それらが単に同時進行するだけで、
全く関係ないことが多いので、僕はよく詰まらんと非難します)


さて、必ずサブプロットは必要か?

3分ぐらいの短編を書いてごらんなさい。
おそらくサブプロットを入れる余裕はないでしょう。

じゃあ15分は?
脚本添削スペシャルの「ねじまき侍」を思い出しましょう。
主人公が一攫千金をするメインプロットの他に、
河童との友情のサブプロット、
居場所を見いだすサブプロット、
敵の大将のサブプロット、
野党に落ちた元侍のサブプロットがありました。

両者の差は何でしょう。複雑さです。


短編であればあるほど、
メインプロットが剥き出しになります。
早目に解決しないと尺が短いからです。
同時に、短時間で解決まで語れる問題の規模が必要です。

長くなればなるほど、
サブプロットは増えます。なぜか?

解決に複数の人間が絡んでくる、複雑な問題になるからです。
解決に長い時間がかかるというのは、
CMのように一瞬で解決するものではなく、
幾多の段階を経るものです。

そのぶん、複雑な面白さが増えるのです。

サブプロットは、ただ増やせば面白くなるわけではありません。
メインプロットと関係ない話が同時進行しても面白くありません。

すなわちサブプロットとは、
「メインプロットを複雑にし、かつ面白くする」ためにあるのです。


何も考えないサブプロットは、
ただの尺稼ぎです。
それが面白くなるためには、
「メインプロットとどう絡んでくるか、
メインプロットに対してどのような意味があるか」
で決まると、僕は考えます。


ブレイクシュナイダーのサブプロットの定義は、
彼の得意なコメディをベースに考えられていると思います。
「息抜きになる」「ラブストーリーだ」「ブースター」というのは、
経験的なことを言っているように思われます。


サブプロットの典型的なわかりやすいものは、
ビリー・ワイルダーの「サンセット大通り」に見ることが出来ます。
名作なのでご覧ください。

元女優との話がAストーリー(メインプロット)、
若い女との話がBストーリー(サブプロットその1)です。

映画では、通常サブプロットは2、3本と言われます。
サンセット大通りは、この二本以外にたいしたサブプロットがないので、
研究するのに最適です。

逆にサブプロットがとても多い名作に、
「トッツィー」をあげておきましょう。
とてもコンパクトに、全ての登場人物にサブプロットを用意する、
脚本技術的に素晴らしい傑作です。
落ちも最高。
posted by おおおかとしひこ at 01:14| Comment(1) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
サブプロットは複数あるものなのですね・・・!
てっきりサブプロットというシークエンスが
第一ターニングポイントの後に1つだけあるものと思ってました。
シュナイダーのビートシートはそういう書き方だったので・・・
Posted by ぎゅー at 2016年08月18日 19:17
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