2016年08月17日

13の誤解9: 展開の誤解

展開の誤解: not 新キャラを出す but ストーリーラインを絡めて深くする


展開をうまく捉えることは難しい。
「さあ展開するぞ」と思った時点で、
展開に関しては負けだ、というのが僕の経験則だ。

とてもよくある挫折の仕方に、
問題のセットアップをし、
主人公に感情移入し、
さあ本格的に乗り出すぞ、の第一ターニングポイントを終え、
つまり第一幕をうまく書き終えても、
そこからどうしていいか分からなくなる、
すなわち、
「展開をどうしていいか分からない」がある。

なんとなく勘ですすめて、うまく続きを書けることもあるけれど、
大抵は最初の頃の勢いがなくなってきて、
なんだか詰まらなくなってきてやめてしまう。
それは、一幕の役割「設定」と、二幕の役割「展開」が違うフェイズのものであり、
気持ちや技術が、その要求に答えきれないことから起こると思う。

だから、さあ展開をしなければ、とふと思う時点で、
9割方負けだと僕は思うのだ。

展開をうまく書くには、展開をすでに用意していなければならない。
当然のことなんだけど、それがなかなか出来ない。
書きながら考えればいいや、とか、
とりあえず書きたい衝動に負けて書きはじめてエネルギー切れとか、
色んな原因があるとは思う。

書き始める前に展開を用意しておこう。
二幕(展開部)は一般的に一幕(設定部)の、
倍の長さなので、
倍の準備をするべきだ。(体感的には四倍いるかも)


それを怠ると、展開部に至ったときに、
展開をアドリブでつくらなければならないはめになる。
そしてその時最もやりやすい誤りが、
「新キャラを出す」なのである。

ようやく本題。



展開に困って新キャラを出すのは、よくあることだ。
ブレイクシュナイダービートシートでも、
25分の第一ターニングポイント後は、
「Bストーリー(サブプロット)の開始」とあるから、
新キャラを出し、展開部のスタートとするのは、
とてもポピュラーなことである。

さて、これが陥りがちな誤りは、
「新キャラが主人公になってしまう」ことである。



そもそも主人公の展開に困っていると、
新キャラを出したら新キャラに乗り換えてしまいがちだ。
新キャラの登場シーンを凝ったりして、
そっちを書いてる方が楽しくなってしまう。
しかし、そのうち同じ問題に突き当たる。
新キャラの展開をしようとしたら、出来ないことに。
でまた新キャラを出し…のループに陥りやすい。
つまりその話は出落ちばかりになり、ちっとも話が始まらない、
という問題である。

この代表例がデビッドリンチの「マルホランドドライブ」だ。
各謎の登場シーンはとても魅力的なのだが、
それがちっとも明かされず、ついに出落ちだけで全てが終わる。
それはそういう「芸術」なのである、
ということを言われれば見も蓋もないが、
それを「謎を明かすストーリー」だと思ってみていると、
物凄い肩透かしを食らう映画である。

新キャラの絡むストーリーを、
元々はじめたメインプロットに対して、サブプロットと呼ぶ。
新キャラに魅力がありすぎると、
主人公を乗っ取って主役に交代してしまうこともよくあることだ。
だったら、彼(彼女)を主人公に、メインプロットにして、
最初から書き直せば良い。
(僕は昔夫婦ものを書いていて、夫主役のものを、
嫁主役に全面的に書き換えたことがある)

何がメインで、何がサブかは、話が決めることであり、
主軸がぶれては面白くない。
メインはメインのように、サブはサブのように、書くべきである。
あなたが混乱してもだめだし、観客を混乱させる意味もない。

ドラマ風魔では壬生のサブプロットがとても面白いが、
小次郎が主人公であり、メインプロットであり続けるように注意している。
それゆえに、皆は誰が主人公であるか、確信したまま、
話を安心して見ることが出来るのだ。


さて、では、サブプロットは何のためにあるのだろう。
作者の逃避先でないことは確かだ。
僕は、サブプロットはメインプロットに対して、
和音のような役割を果たすべきだ、とよく言う。
メインプロットに対して裏のテーマを扱っていたり、
対になることで面白くなるようにあるべきだ、
という意味だ。
サブプロットが複数同時進行する話もあるけれど、
それはそのややこしさが、メインプロットを面白くするように機能させることが必要だ。

たとえばサブプロットで起こったことが、
メインプロットのターニングポイントになり、
メインプロットの(停滞していた)展開が進むようになれば、
そのサブプロットはメインプロットを助けたことになる。
逆にメインプロットで起こったことがサブプロットに影響し、
そのことで逆にメインプロットが影響され…などのように、
メインプロットとサブプロット同士は、互いに関係していくことが、
複雑な同時進行を面白くしていくコツである。

サブプロットの多さで有名な「トッツィー」は、
役者である主人公が演じるスキルの高さを証明するために、
「女優と偽ってオーディションに合格、
たちまち人気女優に」というコメディである。
つまり「仮面の嘘」型のコメディだ。
好きなヒロインには女友達として相談され、
現場の役者に言い寄られ、
ヒロインの父親にすら言い寄られ…と、
次々に事態は複雑怪奇になってゆく面白さを描いたものである。
それらのサブプロットの絡みをさんざん楽しんだら、
それがいかにメインプロット「役者としての技量が証明できるか」を、
面白おかしくしているかに注目して分析してみるといいだろう。

メインプロットが主で、サブプロットは従だ。
サブプロットをメインに混同せず、
メインプロットに対して面白くなるように、サブプロットを使おう。
メインプロットにメインコンフリクトがあるのと同様、
サブプロットにもサブコンフリクトがあることが多い。
もめ事がもめ事を呼ぶのだね。

展開とは、新キャラを出してそれに逃げることではない。
新キャラのサブプロットが、メインプロットを面白くするのである。

メインプロットやサブプロットのことを、
それぞれのストーリーラインと呼んだりする。
ストーリーラインが絡み、メインストーリーラインが深みをまし、
面白さを増していくことが、展開だ。


(展開に新キャラ登場が必須ではない。
新キャラは一幕内で登場することもある。
二幕の冒頭部での新キャラが、新展開感がある、という話なだけだ)
posted by おおおかとしひこ at 14:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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