2016年08月25日

感情のシンクロ

感情移入について深く掘ってみよう。

感情移入は面白げなシチュエーションを描くだけで起こるか?
否だ。
プラス、その人の感情を描くことが必要だと思う。


「そこからどう脱出するか、見てみたい」
と「興味」を持つのが感情移入の初手であった。

しかし、その興味はさして持続しない。
「自分ならどうするか」を想像し始めるからだ。
その時主体は観客自身になってしまい、
主人公でなくなってしまう。

そのシチュエーションで、
主人公がどう感じるか、
ちゃんと反応や思考や感情を書こう。

それがリアリティーがあり、
誰もがそう思うだろうことを思えば、
つまりその瞬間、
主人公と観客の感情がシンクロしたと言うことだ。
(リアリティーがなかったり、真に迫っていなかったり、
陳腐だったり、浅かったりすると、
嘘臭く、感情はシンクロしないだろう)


モテ講座でよく出てくる、感情のシンクロ効果である。
同じ瞬間同じ感情になれば、
親しみが湧くのである。

一旦親しみが湧けば、
仮に「自分ならこうする」があったとしても、
主人公なりの行動を見れば、
成る程と思ったり、
自分じゃ出来ないけどこの人なら出来るかも、
と思ったりして納得できるはずだ。
(「主人公なり」がそれまでのセットアップになければ、
なんか無理があると思うだろう)

感情豊かなキャラクターのほうが感情は描きやすいが、
必ずしもそうである必要はない。
寡黙な人がふと見せる感情のほうが重みがあったりする。
その伝達方法は個々に任せるとして、
大事なことは、
その感情が、私たちとシンクロすることである。


ある意味、こういうとき普通の人はどう感じるか、
が把握できていないと、
そのシンクロは難しく、
一方的な情報提示すなわち押し付けになるだろう。

主人公の感情が、観客の感情と、
表面的な部分ではなく、深いところで一致すること。
これが感情移入の第二条件かも知れない。

それは深いところで一致すればよく、
表情や行動に派手に出さなくても、
「こいつムカつく」ことが一致すれば、たとえばOKだ。
(勿論派手な表情や行動に出してもいい)

具体的にどうやるかは、
なかなか言葉で説明しにくい。
個々のケースで、としか言いようがない。



最初は、観客が先に思うことを主人公が思うことで、
感情のシンクロが起こる。
そのうち、主人公が先回りした感情を、
あとで観客が思ったりする。
最後のほうは、同時に感情が動くだろう。
それが感情移入だ。

感情を出したり、思考を表現することは、
心理描写、と言われることもある。
映画は一人称ではなく三人称だから、
独白や地の文は存在しない。

他の人への働きかけや、リアクション(行動)でしか、
感情を表現できないことに注意されたい。


初心者は、ただ笑う顔や悲しむ顔で、
感情を表現しようとする。
言動の中に感情を込められれば、表現のレベルが上がったことになる。
さらに上は、感情を抑えたことで感情を表現することだろう。
posted by おおおかとしひこ at 00:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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