ストーリーがわーっと盛り上がって、
何かが決定したり一段落したあと、
急に勢いが失速することがある。
それが回復しないままずるずると行くと、
詰まらない話になってしまう。
(極端な例は、北斗の拳のラオウ以後)
失速を回復するには、どうすればいいのか。
それには、失速のメカニズムから考えるべきだ。
そもそも失速は、それ以前が盛り上がるから起こる。
盛り上がりすぎなければ、
その熱をうまく保ったままラストまで持ち越せたかも知れないのに、
早漏してしまったのである。
最高の盛り上がりは、ラスト、クライマックスであるべきだ。
(北斗の拳は、ラオウで終わってれば完璧だった。
センタークエスチョン、ユリアをめぐる話が完結したからだ。
しかしジャンプに引き伸ばされ、倍以上描かされ、作家生命ごと壊された。
花の慶次を得るまで、サイバーブルーという黒歴史が辛い。
あなたが原哲夫だったら、北斗のあとサイバーブルーを描いてしまい、
そのあと花の慶次までカムバックする勇気があるか?
それほど失速の影響は、作品を越えて影響するかも知れない)
失速は、つまり、
本来のクライマックス前に、
クライマックスになってしまうことで起こるのだ。
対策は大きくふたつ。
1. クライマックスを決めておき、決してそれ以上をやらない。
(はじめの一歩は宮田戦待ちのまま、10年失速を続けているが)
2. そのクライマックス以上のクライマックスを考える。
(昔のジャンプは、作家の成長と共にこれをやる傾向があった。
リンかけ、キン肉マン、北斗のラオウまでは、
そういう「拡大の勢い」こそ真骨頂だった)
我慢するか、爆発以上に爆発するかしかないのである。
幸いシナリオというものは、連載と違い、
全体を書き直して再設計することができる。
失速はどこか。
その失速を防ぐには、
盛り上がりすぎないこと、
つまり、
全ての決着をつけてしまったり、
テーマが決定したり、
センタークエスチョンに答えが出てしまったりせずに、
まだ課題を残したり、
別の何かが出てきたり、
スッキリしない結末になったり、
全貌が見えたわけではないようにしたり、
すると良いだろう。
このポイントが、新たな因縁になるようにつくり、
次に繋げていけばいいのである。
あるいは、そこで決着がついても、
新たなセンタークエスチョンを設定したり、
全く新しい、更に面白いことを考えたりして、
メインストーリーラインを、刷新すればよいのである。
ただし多くの作家は、ここで前を越えられないので、
であるならば、前の失速点をリライトしたほうがいいと、
僕は考えている。
続きが書けなくて挫折する人は、
おそらくこういう失速の仕方をしてるのではないだろうか。
あなたの目指す、最高のクライマックスはなんだろう。
全てはそこに向けて、ぐーっと盛り上がっていくはずだ。
標高が400メートルならば、前段は300ぐらいまでしか盛り上がれない。
標高が3000メートルならば、前段は2500まで盛り上がれるぜ。
だからクライマックスを決めておくのは、
経験者にしか出来ないことかもね。
自分はどこまでの標高を書けるか、知らないものね。
短編をたくさんかけ、
という僕の経験則は、
クライマックスと全体の関係を皮膚感覚にするのにも役立つ。
しかし長編をはじめて書くとすると、
その辺のバランスを取ることはまず無理だろう。
だからリライトが大事だなあ、と僕はいつも思うのだ。
今、新作長編(てんぐ以外)を書こうと準備中なんだけど、
クライマックスをどれだけ高みに出来るか、
必死で考えている。
やっぱ「その後、それは奇跡と呼ばれた」みたいなクライマックスを書きたいじゃない?
そこが高みに行ければ、逆算で前段も無茶できるしね。
何回でも何回でも、クライマックスは書き直してよいかも知れない。
高みに行ければ行けるほど、
逆に失速を防ぐことに役立つのである。
2016年09月03日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック