2016年09月05日

どうしてゴーストバスターズに乗れなかったのだろう

帰り道、ずっと考えていた。
ふと頭のなかに回り始めたテーマソングを歌いはじめて、
ようやく気づいた。

女版ゴーストバスターズ。
内容と、80年代の音楽が齟齬を来していたからだ。


大ヒット曲の例のテーマを、
使わないわけにはいかないのは、わかるといえばわかる。
しかし、
今回の内容は、件のテーマ曲と合っていないと思った。

80年代の音楽は、
トップガンだろうが愛と青春の旅立ちだろうが、
グーニーズだろうがフラッシュダンスだろうがETだろうが、
とても明るい。
底抜けに明るい。
悲劇的テーマのはずの「ラストクリスマス」だって明るい。

そこには無前提の希望がある。
今日失敗しても明日やり直せばいいやと言えるアメリカンがいる。
肉体的に強く、旨いものを食い、国的にも文化的にも最強の、
アメリカンがいる。
911で自信を失わなかったアメリカがいる。

現在は80年代ではない。
湾岸戦争、911を経て、資本主義がぐらついている。
移民の問題(あらたな奴隷調達問題。資本主義は奴隷の存在が枠組みに組み込まれている)
は解決しそうにない。

そんなときに、底抜けに明るくいられる筈がない。

だから、おバカなイケメンの範囲内でしか、
明るい希望はないのだ。
半径3メートルぐらいの希望しか、明るくないのだ。
80年代の頃の、世界がまだまだ広かったころの、
フロンティアのような明るさは、
アメリカにはなくなったのである。

だから、80年代の音楽が、上滑りしていたと僕は思う。


女たちのコメディとしては、並の出来だ。
予告編でかかった「ブリジットジョーンズ(まだやるのか)」
を見て、ああ、そのクラスタの映画なのだと割りきれば、
もっと楽しめたかも知れない。
アバやマドンナでもかけとけば、八方まるく収まったのではないだろうか?

あと、ホルツマン様結婚してください。


以下脚本論的なこと。


主人公二人に、感情移入ができない。
ゴーストガールと呼ばれた主人公に対して、
その親友にキャラがないので、
二人の友情に感情移入出来ないのだ。
だからクライマックスのフックをつけて助けに行くところも、
ちっとも熱くならないし、
ラストのゴーストガールと呼ばれることに誇りを持つことの、
帰結も、今一つグッと来ない。

ブレイクシュナイダーの原則に、
様々な感情を体験させよ、というものがある。

コメディだから笑いに注力し、
泣きやハラハラはそこそこでいい、ということではない。
コメディだからこそ、
笑いも、泣きも、ハラハラも、一流でなければならない、
と考える原則だ。

笑いは水準に来ていたけれど、
主人公二人の友情や泣きが、物足りなかった。
コメディだから甘くとらない。
コメディだからこそ、ここを厳しくとりたい。


だから何だかテレビドラマのような感じがした。
シチュエーションコメディっぽかった。
これは映画だ。
テレビドラマと映画の差はなんだろう。
一発勝負の変化の大きさ(不可逆の)ではないかと思う。
二人の友情に変化はあったか。
同じようなものが続いただけではないだろうか。

何故二人はあの本を出したのか。
過去に何があったのか。
たとえば決定的亀裂から始まって、
喧嘩しながらも友情を復活させるドラマにしたほうが、
もっと楽しめたのではなかろうか。

ホルツマンとイケメンのキャラが立ちすぎて、
主人公二人のキャラが負けていたのが、なんともであった。
(黒人の地下鉄は、まああのあたりか。
全盛期のウーピーゴールドバーグだったらなあ)


この曖昧な感じは、「センタークエスチョンは何か?」
と問うことでわかる。
「NYのゴースト事件を解決すること」だけなんだよね。
オリジナルは「それによって、バカにされたことを見返してやること」
という個人的な理由も重なっていたので、
そこが感情移入と関係したと思う。
今回、主人公はゴースト退治したとしても、大学に戻れるわけではないし、
単純に首になったあたりをはしょって、
別のことをセットアップするべきだったのでは。


あと、ゴーストバスターズはどうしてもマシュマロマンを越えなきゃいけないけれど、
その呪縛からも外れた方が良かったんじゃないかなあ。
巨大ゴーストを忘れてもいいのに。
あのオタクのマンガみたいな書き込みを見て、
あのオタクが巨大化するのをワクワクして待っていたのに、
あれじゃあなあ。

女が一番恐れるものは何?と問われて頭に最初に思ったものが具現化するとか、
そういうことでも良かったと思うよ。


あの女4人は、幸せになれたのかなあ。
そこが今一つ分からないから、
エンドクレジットに沢山コネタを入れてきたような気がする。
posted by おおおかとしひこ at 01:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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